企業別レビュー
有価証券報告書・5年間レビュー
対象期間:2022年6月期〜2026年6月期
事業の内容
メディカル事業とデバイス事業の2事業体制
朝日インテックグループは、5年間を通じて「メディカル事業」と「デバイス事業」の2事業を展開しています。メディカル事業はグループの主体事業で、主に血管内治療に用いるガイドワイヤーやカテーテルなどの低侵襲治療製品を開発・製造・販売しています。国内では主に直接販売、海外では販売代理店を通じた販売を基本としながら、米国、フランス、ドイツ、イタリアでは主に直接販売を行う体制です。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
デバイス事業では、医療機器や産業機器に用いられるワイヤーなどの部材を開発・製造し、国内外のメーカーへ販売しています。両事業の基盤には、伸線技術、ワイヤーフォーミング技術、コーティング技術、トルク技術があり、素材から完成品まで一貫して開発・製造できる体制が5年間を通じて維持されています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
事業の基本構成を維持しながらグループ体制を拡張
2022年6月期のグループは、朝日インテックと連結子会社18社で構成されていました。同年度には、腹腔鏡手術支援ロボットを開発する朝日サージカルロボティクス、イタリアの販売代理店KARDIA、薄膜電気導通体技術を開発するPathways Medical Corporation、医療機器の設計開発受託を行うRev.1 Engineeringなどが連結子会社として事業体制に組み込まれていました。メディカル事業では、製造・販売だけでなく、複数の国内外拠点を通じた開発機能も配置されています。 (有報 2022年6月期)
その後も2事業の区分自体は変わっていませんが、グループ会社の構成には変化が見られます。2023年7月にはデバイス事業を担っていたトヨフレックスを朝日インテックが吸収合併し、2024年6月期の連結子会社数は17社となりました。一方、非連結子会社・関連会社では、消化器分野に関わるレイクR&D、GSRセンサを使用したガイドワイヤーなどを手掛けるマグネア、ケニアでカテーテル検査・治療の専門病院を運営するELDORET HOSPITAL-ASAHI INTECC HEART CENTREなどが加わっています。 (有報 2023年6月期〜2024年6月期)
中国のメディカル拠点とデバイス事業の製造体制を追加
2025年6月期には、中国に朝日英達医療器械(南寧)有限公司を設立し、連結子会社は18社となりました。同社はメディカル事業の製造・開発拠点として位置付けられていますが、2025年6月期時点では工場建設中で、2030年12月の生産開始が予定されています。また、金型製作・射出成型を手掛けるニッタモールドと、そのタイ子会社NITTA M&T(THAILAND)を子会社化しました。2025年6月期には両社は非連結子会社として記載されていました。 (有報 2025年6月期)
2026年6月期にはニッタモールドとNITTA M&T(THAILAND)が連結子会社となり、連結子会社数は20社に増加しました。両社はデバイス事業の製造・販売会社として事業体制に組み込まれています。一方、中国の朝日英達医療器械(南寧)は引き続きメディカル事業の製造・開発拠点として位置付けられています。 (有報 2026年6月期)
この5年間では、メディカル事業とデバイス事業という基本的な事業区分は維持されました。その一方で、メディカル事業では開発・販売・海外製造の拠点が加わり、デバイス事業でもグループ会社の統合や新たな製造会社の連結が行われるなど、既存の2事業を軸としてグループ内の機能と拠点が変化しています。
事業の状況
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
朝日インテックは、研究開発型企業として独自技術と製品を世界に展開し、低侵襲治療を中心に事業領域を広げる基本的な方向性を5年間を通じて維持しています。一方、中長期の成長目標と、その実現に向けた経営計画は期間後半に大きく更新されました。
2022年6月期には、2026年6月期までの中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」のもと、①グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大、②グローバルニッチ市場における新規事業の創出、③グローバル展開に最適な研究開発・生産体制の構築、④持続的成長に向けた経営基盤の確立を基本的な成長戦略としていました。営業利益率20%、EBITDA率30%を目安とし、資本効率についてもROEに加えてROICを重視する考え方が示されています。 (有報 2022年6月期〜2024年6月期)
この期間には、主力の循環器領域で製品競争力を高めながら、末梢・腹部・脳血管系などの非循環器領域、消化器、ロボティクスなどへ対象領域を広げる方針が継続されました。販売面では日本、米国、欧州、中国、新興国での市場開拓を進め、生産面ではタイ、ベトナム、フィリピンを中心とする海外生産体制の分散と代替生産体制の整備が進められています。 (有報 2022年6月期〜2024年6月期)
2025年6月期には、2026年6月期から2030年6月期までを対象とする新たな中期経営計画「Building the Future 2030」が示されました。「2035年のありたい姿」として、健康寿命の延伸への貢献と、低侵襲治療における臨床課題を総合的に解決できるグローバルニッチトップ企業を掲げ、2035年6月期の目標を連結売上高3,000億円、営業利益率30%としました。その準備期間となる2030年6月期には、連結売上高1,800億円、営業利益率28%を目標としていました。 (有報 2025年6月期)
新計画では、循環器領域の競争力維持に加え、非循環器領域の製品ポートフォリオ強化、新規事業・高付加価値治療デバイスへの参入を進める一方、新規事業の本格的な売上貢献は2031年度以降を想定し、計画期間中は既存事業の収益力強化によって成長を支える方針が示されました。 (有報 2025年6月期)
2026年6月期には、初年度の業績進捗や今後の成長見通しを踏まえて目標値が見直され、2030年6月期の目標は連結売上高2,125億円、営業利益率32.0%へ、2035年6月期の長期目標は連結売上高3,300億円、営業利益率33%へ引き上げられました。資本効率についても、2030年6月期の目標としてROE20.0%以上、ROIC19.0%以上が設定されています。 (有報 2026年6月期)
5年間を通じて、グローバル市場の開拓、治療領域の拡大、研究開発・生産体制の強化という方向性は維持されています。その上で、期間後半には「売上高1,000億円超」を目指す段階から、2035年を見据えた事業ポートフォリオと収益力の拡大へと、中長期目標が具体化し、目標値も引き上げられています。
サステナビリティに関する考え方及び取組
サステナビリティについては、2022年6月期から持続的成長に向けた経営基盤の確立の一環として取り組みが示されていました。重要課題として、イノベーション、環境負荷低減、サプライチェーンマネジメント、安全・安心な製品の供給、グローバル人財基盤、リスクマネジメント、コーポレート・ガバナンスの7項目を設定しています。 (有報 2022年6月期)
2023年6月期以降は「サステナビリティに関する考え方及び取組」が独立項目となり、ガバナンス、リスク管理、気候変動、人的資本などの開示が具体化しました。気候変動についてはTCFDの枠組みに沿って、規制強化や炭素コストなどの移行リスク、洪水・台風などによる生産拠点やサプライチェーンへの物理的リスクを分析しています。 (有報 2023年6月期〜2025年6月期)
2026年6月期では、「Building the Future 2030」の経営基盤強化策の一つとしてESGを位置付け、サステナビリティ上の重要事項を取締役会で監督する体制が示されています。気候変動については複数シナリオによる影響額の分析も行われ、製造拠点の浸水やサプライチェーン寸断などのリスクと対応策がより具体的に開示されています。 (有報 2026年6月期)
7つの重要課題という基本構造は維持されており、5年間ではサステナビリティへの取り組みそのものが新たに始まったというより、経営戦略との結び付きやリスク・機会の分析、取締役会による監督などの開示が具体化しています。
事業等のリスク
朝日インテックの主要なリスクは、医療機器事業の性質と、海外販売・海外生産の比重が大きい事業構造の双方に関係しています。医療機器分野では、日本、米国、欧州、中国など各国・地域の法規制や承認制度、医療制度改革、品質管理、主力製品への依存、技術革新への対応、研究開発・新規事業の不確実性などが継続して挙げられています。また、知的財産権、特定仕入先への依存、為替変動、海外事業・海外生産、自然災害なども継続的なリスクとなっています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
2022年6月期には、新型コロナウイルス感染症によるカテーテル治療の症例数減少や、生産工場への影響が個別のリスクとして記載されていました。当時は症例数が回復基調にあり、生産工場の稼働や製品供給にも大きな問題は生じていないとされていましたが、感染拡大による症例数減少や工場稼働縮小の可能性は引き続き認識されていました。 (有報 2022年6月期)
その後、海外事業の拡大に伴ってリスクの記載も広がっています。2026年6月期には、海外売上高が連結売上高の85.7%を占め、中国向けメディカル事業売上高も連結売上高の25.7%となっています。中国市場については、国産優遇策や集中購買、米中関係など政策・規制面の不確実性が記載されています。また、主力のPCIガイドワイヤーは連結売上高の48.4%を占め、特定製品への依存も引き続きリスクとして認識されています。 (有報 2026年6月期)
さらに、戦争・テロなどの地政学的事象、国際物流の混乱、関税・輸出入規制・経済制裁などの通商政策、原材料価格や供給制約についての記載が具体化しています。感染症についても、新型コロナウイルスに限定した記載から、疫病・感染症全般による治療症例、生産、サプライチェーンへの影響を対象とする記載に変わっています。 (有報 2022年6月期、2026年6月期)
リスク管理については、取締役会を中心とした全社的な管理体制を整備し、各部門での日常的なリスク管理と、管理部門による検証・確認を組み合わせています。気候変動を含む経営上重要なリスクについては、取締役会で評価や対応策、予防措置を検討する体制が示されています。 (有報 2023年6月期〜2026年6月期)
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
5年間の経営成績について、会社は国内外での症例数、市場シェア、新製品の販売状況、為替などを主な変動要因として説明しています。
期間前半は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた地域で症例数が回復するなか、主力のPCIガイドワイヤーやカテーテル製品に加え、末梢・腹部・脳血管系など非循環器領域の販売拡大が進みました。その後も海外市場を中心とした販売拡大が続き、為替相場も円換算売上高の増加要因としてたびたび挙げられています。 (有報 2022年6月期〜2025年6月期)
2026年6月期について会社は、メディカル事業では循環器・非循環器の双方で海外販売が増加し、デバイス事業では医療部材・産業部材の増加に加えて、ニッタモールドの連結子会社化も売上高増加の要因になったと説明しています。また、生産性改善が想定を上回って進んだことも、中期経営計画の目標値を見直す際の背景として示されています。 (有報 2026年6月期)
こうした会社側の説明からは、5年間の売上拡大が一つの製品や地域だけによるものではなく、既存の循環器領域に加えて非循環器領域、海外市場、デバイス事業など複数の領域に広がっていることが確認できます。
重要な契約等
5年間の有価証券報告書では、事業構造を大きく変更する「重要な契約等」として継続的に取り上げる事項は特に見られません。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
研究開発活動
朝日インテックは、研究開発活動を経営上の重要項目の一つとして位置付け、4つのコアテクノロジーである伸線技術、ワイヤーフォーミング技術、コーティング技術、トルク技術を基盤として研究開発を続けています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
研究開発費は、2022年6月期の88億69百万円から、2023年6月期97億23百万円、2024年6月期116億62百万円、2025年6月期122億48百万円、2026年6月期133億72百万円へと5期連続で増加しました。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
研究開発の中心はメディカル事業で、主力の循環器領域におけるガイドワイヤー・カテーテルの改良に加え、末梢血管系、脳血管系、消化器など非循環器領域への製品展開が進められています。また、東京R&Dセンターではソフトウェアやセンサ技術の研究も行われ、研究開発対象は従来のワイヤー・カテーテル製品から周辺技術にも広がっています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
研究開発拠点についても、国内の瀬戸、静岡、東京などのR&D機能に加え、米国では医師のニーズを直接反映して試作まで行う体制、タイでは既存製品の改良を担う研究開発体制が整備されています。研究開発費の増加と並行して、対象となる治療領域と研究開発拠点の双方が拡張しています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
経理の状況
財政状態
総資産は、2022年6月期の1,551億27百万円から2026年6月期には2,182億85百万円へ増加しました。純資産も同期間に1,211億30百万円から1,743億58百万円へ増加しています。 (有報 2022年6月期、2026年6月期)
2022年6月期には、朝日サージカルロボティクス、KARDIA、Pathways Medical Corporation、Rev.1 Engineeringなどを連結範囲に加えました。同年度末ののれんは前期末の25億49百万円から82億円、その他の無形固定資産は37億14百万円から111億57百万円へ増加し、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得には69億34百万円を支出しています。 (有報 2022年6月期)
その後、のれんは償却によって減少していましたが、2025年6月期には朝日サージカルロボティクス、Pathways Medical Corporation、Rev.1 Engineering、ASAHI Medical Technologiesの4社について、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなったとして減損損失を計上しました。この結果、のれんは2024年6月期末の69億10百万円から2025年6月期末には1億10百万円へ減少し、その他の無形固定資産も100億48百万円から54億85百万円へ減少しています。 (有報 2025年6月期)
現金及び預金は2022年6月期末の323億21百万円から2026年6月期末には642億64百万円へ増加しました。 (有報 2022年6月期、2026年6月期)
損益の推移
売上高は2022年6月期の777億48百万円から2026年6月期の1,454億19百万円へ、営業利益は152億39百万円から452億18百万円へ増加し、いずれも5期連続で増加しました。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、2022年6月期108億57百万円から2024年6月期158億8百万円まで増加した後、2025年6月期には127億37百万円へ減少しました。同年度は営業利益が増加していた一方、特別損失として減損損失92億44百万円、投資有価証券評価損10億68百万円などを計上しており、特別損失の合計は110億31百万円となっています。 (有報 2022年6月期〜2025年6月期)
2026年6月期には、投資有価証券売却益15億27百万円を計上した一方、前年度とは対象の異なる減損損失10億61百万円などを計上しました。営業利益452億18百万円に対し、親会社株主に帰属する当期純利益は320億75百万円となり、前期から増加しています。 (有報 2026年6月期)
このため5年間の損益では、売上高と営業利益が継続して増加する一方、2025年6月期の最終利益には過去の投資に関する減損が大きく表れたことが特徴的です。
キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは5期すべてでプラスとなり、2022年6月期の173億2百万円から2025年6月期には405億43百万円まで増加し、2026年6月期も400億95百万円となりました。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
投資活動によるキャッシュ・フローは5期すべてで支出超過でした。主な支出として有形固定資産の取得が各期を通じて続いており、2022年6月期にはこれに加えて、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得69億34百万円がありました。5年間で支出超過額が最も大きかった2024年6月期は、有形固定資産の取得98億77百万円に加え、投資有価証券の取得83億34百万円があり、投資活動によるキャッシュ・フローは212億22百万円の支出となりました。 (有報 2022年6月期、2024年6月期)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2022年6月期には新株予約権の行使による株式発行123億83百万円などにより113億68百万円の収入超過でしたが、2023年6月期以降は支出超過となりました。特に2026年6月期は、自己株式取得105億53百万円、配当金65億34百万円、長期借入金返済23億81百万円などにより199億71百万円の支出となっています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
営業活動で得た資金を設備投資や投資有価証券などに振り向ける構造が続く一方、期間後半では配当と自己株式取得による資金支出も拡大しています。現金及び現金同等物の期末残高は、2022年6月期の323億21百万円から2026年6月期には642億64百万円へ増加しました。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
財務諸表注記で確認できる大きな変化
5年間で特に大きい注記事項は、2025年6月期の減損損失です。朝日サージカルロボティクスで19億92百万円、Pathways Medical Corporationで36億36百万円、Rev.1 Engineeringで16億23百万円、ASAHI Medical Technologiesで19億91百万円の減損損失を計上し、合計は92億44百万円となりました。 (有報 2025年6月期)
会社は、これら4社について、経営環境と今後の事業計画を踏まえ、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなったことから、のれんやその他の無形固定資産等を減損したとしています。減損対象4社のうち、朝日サージカルロボティクス、Pathways Medical Corporation、Rev.1 Engineeringの3社は2022年6月期に連結範囲へ加わった会社です。 (有報 2022年6月期、2025年6月期)
2026年6月期には、マグネデザインとの製品共同開発について販売・開発計画を見直したことに伴い、その他の投資その他の資産について10億61百万円の減損損失を計上しました。前年度とは対象が異なりますが、研究開発や新規領域への投資の一部について、事業計画の見直しが財務数値に反映されています。 (有報 2026年6月期)
配当政策
連結配当性向の目安を30%から35%へ引き上げ
朝日インテックは、事業活動から得られる成果の一部を株主へ還元することを重要課題の一つと位置付け、長期的な視野で連結業績などを考慮しながら、配当を安定的に継続することを基本方針としています。配当は期末配当の年1回を基本とし、内部留保については研究開発や設備投資など将来の成長に必要な資金に充当する方針です。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
配当金額については、2022年6月期と2023年6月期には連結配当性向30.0%を目安としていましたが、2024年6月期から35.0%へ引き上げられました。「安定的に継続して配当する」という基本方針や、業績見通し、内部留保の水準などを総合的に勘案する考え方は維持されています。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
1株当たり配当額は増加
1株当たり年間配当額は、2022年6月期11.99円、2023年6月期14.48円、2024年6月期20.37円、2025年6月期24.23円と増加しました。 (有報 2022年6月期〜2025年6月期)
2025年6月期は、減損損失などの特別損失により親会社株主に帰属する当期純利益が減少しましたが、会社は当初予想していた24.23円の配当を維持しました。この結果、連結配当性向は51.6%となり、通常の目安である35.0%を上回っています。 (有報 2025年6月期)
2026年6月期は、普通配当42.21円に設立50周年記念配当6.03円を加え、年間48.24円を配当する予定とされています。普通配当部分は連結配当性向35.0%に相当し、記念配当を含めた連結配当性向は40.0%となります。 (有報 2026年6月期)
| 決算期 | 1株当たり年間配当額 | 連結配当性向 |
|---|---|---|
| 2022年6月期 | 11.99円 | 30.0% |
| 2023年6月期 | 14.48円 | 30.0% |
| 2024年6月期 | 20.37円 | 35.0% |
| 2025年6月期 | 24.23円 | 51.6% |
| 2026年6月期 | 48.24円* | 40.0%* |
* 有価証券報告書提出日時点の予定。1株当たり年間配当額48.24円は、普通配当42.21円と設立50周年記念配当6.03円の合計。連結配当性向40.0%は記念配当を含む予定値。
5年間では、安定配当を基本とする考え方を維持しながら、連結配当性向の目安を30.0%から35.0%へ引き上げ、1株当たり配当額も増加しています。2025年6月期には特別損失による純利益減少時にも当初予想の配当額を維持し、2026年6月期には普通配当に加えて設立50周年記念配当を予定しています。
自己株式の取得
配当に加えて、2025年5月には、取得株式数880万株、取得価額総額150億円を上限とする自己株式取得を取締役会で決議しました。2025年6月期中に195万6,700株を44億46百万円で取得し、2026年6月期には同決議に基づき434万4,600株を105億53百万円で取得しています。 (有報 2025年6月期、2026年6月期)
5年間の前半では配当を中心とした株主還元が記載されていましたが、期間後半には配当額の増加に加えて、大規模な自己株式取得も実施されています。
主要な経営指標等の推移
朝日インテックの主要な連結経営指標の5年間の推移は、次のとおりです。
| 指標 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 777億48百万円 | 901億1百万円 | 1,075億47百万円 | 1,200億25百万円 | 1,454億19百万円 |
| 経常利益 | 163億26百万円 | 176億35百万円 | 219億68百万円 | 295億63百万円 | 451億85百万円 |
| 当期純利益※1 | 108億57百万円 | 131億6百万円 | 158億8百万円 | 127億37百万円 | 320億75百万円 |
| EPS※2 | 40.01円 | 48.25円 | 58.20円 | 46.92円 | 120.59円 |
| 純資産額 | 1,211億30百万円 | 1,343億円 | 1,519億61百万円 | 1,513億54百万円 | 1,743億58百万円 |
| 総資産額 | 1,551億27百万円 | 1,726億44百万円 | 1,916億14百万円 | 1,931億87百万円 | 2,182億85百万円 |
| 自己資本比率 | 77.0% | 76.6% | 78.9% | 77.9% | 79.4% |
| ROE※3 | 10.2% | 10.4% | 11.2% | 8.4% | 19.8% |
| 営業CF※4 | 173億2百万円 | 191億38百万円 | 347億8百万円 | 405億43百万円 | 400億95百万円 |
| 投資CF※4 | △187億3百万円 | △151億35百万円 | △212億22百万円 | △134億34百万円 | △117億39百万円 |
| 財務CF※4 | 113億68百万円 | △23億42百万円 | △138億78百万円 | △81億7百万円 | △199億71百万円 |
| 現金等期末残高※5 | 323億21百万円 | 348億84百万円 | 356億58百万円 | 532億円 | 642億64百万円 |
※1 当期純利益:親会社株主に帰属する当期純利益。
※2 EPS:1株当たり当期純利益。
※3 ROE:自己資本利益率。
※4 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー。
※5 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高。
(有報 2026年6月期)
売上規模と資産規模は拡大
売上高は2022年6月期の777億48百万円から2026年6月期には1,454億19百万円となり、5期連続で増加しました。総資産も1,551億27百万円から2,182億85百万円へ拡大しています。純資産は1,211億30百万円から1,743億58百万円へ増加し、自己資本比率は5年間を通じて76%台から79%台で推移しました。 (有報 2026年6月期)
2025年6月期に最終利益が一時減少
親会社株主に帰属する当期純利益は、
108億57百万円 → 131億6百万円 → 158億8百万円 → 127億37百万円 → 320億75百万円
となりました。 (有報 2026年6月期)
2025年6月期には92億44百万円の減損損失を計上したことから、営業利益が増加する一方で最終利益は減少しました。 (有報 2025年6月期)
2026年6月期には親会社株主に帰属する当期純利益が320億75百万円へ増加し、自己資本利益率(ROE)も19.8%となっています。1株当たり当期純利益も、
40.01円 → 48.25円 → 58.20円 → 46.92円 → 120.59円
と、当期純利益と同様に2025年6月期に低下した後、2026年6月期に上昇しています。 (有報 2026年6月期)
営業CFは5年間を通じてプラス
営業キャッシュ・フローは5期すべてでプラスとなりました。2022年6月期の173億2百万円から増加し、2024年6月期には347億8百万円、2025年6月期には405億43百万円となっています。2026年6月期も400億95百万円となりました。 (有報 2026年6月期)
2025年6月期は最終利益が前期から減少した一方、営業キャッシュ・フローは5年間で最大となっており、利益と営業活動による資金創出の動きが一致していない年度となっています。 (有報 2026年6月期)
投資CFは5年間を通じて支出超過
投資キャッシュ・フローは5期すべてでマイナスとなりました。 (有報 2026年6月期)
主な支出として有形固定資産の取得が各期を通じて続いており、2022年6月期にはこれに加えて、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得69億34百万円がありました。 (有報 2022年6月期〜2026年6月期)
5年間で投資支出が最も大きかったのは2024年6月期の212億22百万円で、有形固定資産の取得98億77百万円に加え、投資有価証券の取得83億34百万円があったことが主な要因です。 (有報 2024年6月期)
その後も設備投資や投資有価証券の取得は続いていますが、投資有価証券の売却などによる資金流入もあり、投資キャッシュ・フローの支出超過額は2025年6月期、2026年6月期と縮小しています。 (有報 2025年6月期、2026年6月期)
一方、現金及び現金同等物の期末残高は、2022年6月期の323億21百万円から2026年6月期には642億64百万円へ増加しました。 (有報 2026年6月期)
5年間を通して
朝日インテックは、5年間を通じてメディカル事業とデバイス事業の2事業体制を維持しながら、海外市場や非循環器領域への展開を進め、開発・製造・販売を担うグループ会社や拠点も変化させてきました。
経営方針では、「ASAHI Going Beyond 1000」から「Building the Future 2030」へ移行しました。グローバル市場の開拓、治療領域の拡大、研究開発・生産体制の強化という方向性は共通していますが、期間後半には2030年、2035年を見据えた売上高、営業利益率、ROE、ROICの目標が具体化し、目標値も引き上げられています。
財務面では、売上高と営業利益が5期連続で増加し、総資産、純資産、現金及び現金同等物も増加しました。一方、2025年6月期には92億44百万円の減損損失により最終利益が一時的に減少しました。営業活動によるキャッシュ・フローは5期すべてでプラス、投資活動によるキャッシュ・フローは5期すべてで支出超過となり、継続的な設備投資や投資有価証券の取得が確認できます。
株主還元では、安定配当を基本とする考え方を維持しながら、連結配当性向の目安を30.0%から35.0%へ引き上げました。期間後半には配当額の増加に加えて自己株式取得も実施され、2026年6月期には普通配当に加えて設立50周年記念配当を予定しています。
この5年間は、既存の2事業体制を維持しながら事業領域と海外展開を広げ、研究開発・設備投資を継続する一方、過去の投資について減損を計上する局面もありました。期間後半には中期経営計画と株主還元方針が更新され、事業規模、収益性、資本効率、株主還元についての数値目標も引き上げられています。
出典:朝日インテック株式会社 有価証券報告書 2022年6月期〜2026年6月期