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キーエンス

KEYENCE CORPORATION

業種
電気機器
所属
プライム
会計基準
日本基準
連結・非連結
連結

企業別レビュー

有価証券報告書・5年間レビュー

対象期間:2022年3月期〜2026年3月期

事業の内容

キーエンスグループは、電子応用機器の開発・製造・販売を主な事業としています。キーエンス本体が商品の開発・製造・販売を担い、キーエンスソフトウェアがソフトウェア開発、キーエンスエンジニアリングが電子応用機器の製造を担当しています。また、北米・中南米、欧州、アジアの海外子会社を通じて商品を販売する体制を構築しており、この基本的な事業構造は5年間を通じて維持されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2022年3月期のグループは、キーエンス本体、連結子会社28社、非連結子会社1社、関連会社1社で構成されていました。電子応用機器の製造・販売のほか、その他の事業としてエスコの不動産業とイプロスの広告・マーケティング業がありました。(有報 2022年3月期)

2024年3月期には、キーエンスが2023年5月21日付でグループ保有不動産の管理を担っていた完全子会社エスコを吸収合併し、その権利義務をすべて承継しました。これに伴い、その他の事業の記載はイプロスの広告・マーケティング業のみとなりました。同年度には子会社1社の新設もあり、連結子会社数は28社で変わりませんでした。2025年3月期も、電子応用機器を中心とする事業構成とイプロスの広告・マーケティング業が継続しています。(有報 2024年3月期〜2025年3月期、キーエンス「合併公告」2023年3月31日)

2026年3月期には、2025年5月20日付でドイツのCADENAS Technologies AGの全株式を取得し、完全子会社化しました。同社は3D CAD分野において、約1,000万人のユーザーと多数の部品サプライヤーをつなぐプラットフォーム事業を展開しています。具体的には、部品メーカー向けにCADデータを活用したマーケティングツールを提供する「eCATALOG事業」と、エンジニアリング・購買部門向けに部品管理によるコスト削減を支援する「戦略的パーツ管理事業」を手掛けています。この株式取得に伴い、子会社11社が新たに連結対象となり、連結子会社数は28社から39社へ増加しました。関連会社は引き続き1社で、ジャストシステムが持分法適用関連会社となっています。なお、電子応用機器の製造・販売を中心とする主な事業内容は継続しています。(有報 2026年3月期、キーエンス「CADENAS Technologies AGの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」2025年5月20日)

この5年間では、電子応用機器の開発・製造・販売を中心とする基本的な事業構造が維持される一方、2026年3月期にはCADENAS Technologies AGの買収によって3D CAD関連のプラットフォーム事業がグループに加わりました。従来の電子応用機器を主軸としながら、新たな事業領域が加わったことが、この期間の事業構成上の主な変化となっています。

事業の状況

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

キーエンスグループは、5年間を通じて「会社を永続させる」「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という考え方を基本方針として掲げています。社会に役立つ付加価値の高い商品を生み出し、持続的な成長と高い収益性を実現することを目指す姿勢に変化はありません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

経営指標についても、世の中への貢献を測る指標として「売上高」「売上総利益」「営業利益」を重視する方針が継続しています。一方、事業がグローバルかつ幅広い業種・業界を対象としており、生産設備投資、研究開発投資、各国の経済動向などの影響を受けることから、合理的な業績予想や目標の算出は困難であると説明しています。経営上の目標の達成状況を判断するための具体的な数値目標は設定せず、これらの指標の最大化を目指す方針を維持しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

優先的に対処すべき課題としては、5年間を通じて人材育成に加え、「企画開発力の強化」と「海外事業の拡大」を挙げています。

企画開発については、付加価値の源泉は商品にあるとの認識から、グローバル直販体制を活用し、開発部門と営業部門が連携して顧客の潜在的な需要を捉える方針を継続しています。ファクトリー・オートメーション向けのセンサ、測定器、画像システム機器、レーザマーカに加え、研究開発向けのマイクロスコープ、物流・小売向けのコードリーダなど、幅広い用途に商品を展開してきたことを説明しています。また、既存事業の拡大だけでなく、新たな付加価値の創出に向けてM&Aを含む可能性を追求する姿勢も、対象期間を通じて示されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

海外事業については、海外市場の規模に対して自社商品の浸透度はまだ小さく、大きな成長余地があるとの認識を維持しています。国内と同様の直販体制の推進を重視し、現地組織の整備、人材の採用・育成、販売力の強化、グローバルな連携体制の構築に取り組む方針が継続しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期には、従来から経営課題として掲げていたM&Aについて、ドイツのCADENAS Technologies AGの株式取得が実施されました。また、同年度の「事業等のリスク」ではM&Aが独立したリスク項目として追加され、事業領域の拡大と成長速度の向上に資する選択肢としての位置付けが明示されています。基本方針や重点課題は維持される一方、M&Aに関する具体的な事業活動とリスク認識の記載が加わったことが、この期間の変化として確認できます。(有報 2026年3月期)

サステナビリティに関する考え方及び取組

キーエンスグループは、サステナビリティを経営理念である「会社を永続させる」上で重要な課題と位置付けています。2024年3月期以降の有価証券報告書では、サステナビリティに関するガバナンス、リスク管理、人的資本に関する方針と指標が独立した項目として説明されています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

ガバナンス面では、サステナビリティを統括する担当役員の管轄下にある経営情報室や各推進部門で検討を行い、経営会議や関連部門の責任者が参加する会議を通じて取り組みを進めています。検討内容は必要に応じて取締役経営情報室長を通じて取締役会へ報告する体制です。リスク管理についても、関連規制や事業への影響に関する情報を収集し、経営会議等で評価・判断して対応策を検討する仕組みが説明されています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

人的資本については、高い付加価値を生み出す基盤を人材と捉え、人間性を尊重した職場環境と人材育成を重視しています。役職や年齢などにかかわらず意見を述べられる職場づくり、公平・公正な企業活動、社員の主体性を尊重する組織運営を方針として掲げています。

人材育成では、仕事を積極的に任せること、OJT、研修を基本とし、一定期間責任者の業務を経験するMDP(Management Development Program)や、他部門の業務を経験するCDP(Career Development Program)などの制度を設けています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

人的資本に関する定量的な指標として、キーエンス単体のエンゲージメントサーベイの肯定的回答率70%以上を目標に設定しています。2024年3月期から2026年3月期まで、いずれの有価証券報告書でも目標を達成していると説明しています。ただし、具体的な肯定的回答率は示されていません。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

この3年間では、サステナビリティの管理体制、人材育成方針、エンゲージメント指標の説明が継続しており、開示された基本方針や数値目標に大きな変更は見られません。

※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。

事業等のリスク

キーエンスグループは、2022年3月期から2025年3月期まで、経済動向、為替変動、情報セキュリティ、海外事業の展開、商品の品質、災害・事故等、会計制度・税制度、地球環境の保全という8項目を主要なリスクとして記載していました。2026年3月期には、これらに加えて「人材の採用・確保」と「M&A(企業買収・資本提携等)」が追加され、主要なリスクは10項目となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

経済動向・海外事業・為替変動

キーエンスは、日本国内に加えて北米・中南米、欧州、アジアで事業を展開しているため、各国の景気動向や製造業の生産設備投資、研究開発投資の変動を主要なリスクと認識しています。特定の商品・顧客・地域に依存しない事業構造を推進し、リスクの分散を図る方針です。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

為替変動については、外貨建取引の価格・コストへの影響に加え、海外子会社の資産・負債、収益・費用を円換算する際の影響を挙げています。為替相場の変動は顧客企業の設備投資や研究開発投資にも影響するため、直接的な換算影響と需要環境を通じた影響の双方を認識しています。

海外事業に固有のリスクとしては、各国の政治・経済・社会情勢、輸出入規制、地政学リスク、環境規制、税制などを挙げています。海外展開に際しては、市場拡大余地や採算性に加え、これらのリスクを総合的に検討する方針を維持しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

情報セキュリティ・品質・災害等

情報セキュリティについては、事業上の重要情報や顧客・取引先の機密情報、個人情報の漏洩、不正流用、サイバー攻撃による情報の破壊・改ざん、システム停止などをリスクとして認識しています。社員・委託先の情報リテラシー向上、ITガバナンス強化、外部からの侵入防止対策を講じる一方、不測のインシデントを完全に回避することは困難であると説明しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

商品の品質については、国内外の製品関連法規制への対応に加え、想定外の使用環境や技術・管理水準を超える事故による大規模リコールの可能性を挙げています。ファブレス体制のもとでも品質管理部門が協力工場と連携して生産に関与することや、品質・環境マネジメントシステムを通じた管理を対策として説明しています。

災害・事故等では、地震・洪水などの自然災害、火災、戦争、テロ、感染症の流行に加え、部品供給業者や納入先を含むサプライチェーンへの影響を想定しています。特定拠点、供給業者、商品、顧客、業種への依存を避けることによるリスク分散を進めています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

会計・税制・環境規制

各国の会計制度・税制度の変更については、規制への対応費用や追徴課税、二重課税などの発生可能性を認識しています。

環境面では、化学物質管理、CO2排出抑制、廃棄物削減、省エネルギー、リサイクル、製品設計における環境負荷低減などに取り組む一方、国内外の環境関連規制の変更によって対応費用が増加する可能性を挙げています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期に追加された人材・M&Aのリスク

2026年3月期には、「人材の採用・確保」が独立したリスク項目として追加されました。

キーエンスは、事業の持続的成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠であると説明しています。国内外の人材獲得競争の激化、人件費上昇、労働市場の構造的変化により、必要な人材を計画どおりに確保・維持できないことや、人材育成が事業の成長速度に追いつかないことをリスクとして挙げています。対応として、新卒・中途採用の継続、教育研修体系の整備、キャリア形成支援、職場環境や処遇制度の充実を示しています。(有報 2026年3月期)

同時に、「M&A(企業買収・資本提携等)」も独立したリスク項目となりました。キーエンスは、M&Aを事業領域の拡大や成長速度の向上に資する選択肢の一つとして位置付け、同社が関与することで付加価値を高められると見通せる案件を検討する方針を示しています。一方、買収後の事業環境の変化や、想定した効果が十分に得られない場合には、業績や財務状況へ影響する可能性があると説明しています。(有報 2026年3月期)

この5年間では、従来からの景気、為替、海外展開、品質、情報セキュリティなどに関するリスク認識を維持しながら、最終年度に人材確保とM&Aのリスクが独立して明示されました。いずれも従前から経営課題として言及されていた事項ですが、2026年3月期にはリスクとしての説明が具体化しています。

経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

キーエンスグループは、5年間を通じて企画開発面の充実と営業体制の強化を継続しています。一方、各年度の有価証券報告書では、世界経済や地域ごとの設備投資動向、為替変動、販売費及び一般管理費の増加などが業績変動の要因として説明されています。

2022年3月期は、新型コロナウイルス感染症の影響から経済活動が正常化に向かい、米国、欧州、アジア、日本で景気や設備投資に回復の動きが見られました。キーエンスは、ハンディターミナルやワンショット3D形状測定機などの新商品開発と海外販売体制の強化を進めました。売上高は7,551億円(前期比40.3%増)、営業利益は4,180億円(同51.1%増)となっています。国内売上高は3,102億円(同30.9%増)、海外売上高は4,449億円(同47.7%増)で、海外の増収率が国内を上回りました。(有報 2022年3月期)

2023年3月期も、世界経済には地域差があったものの、緩やかな持ち直しの動きが続きました。米国では消費や設備投資の拡大、欧州では設備投資の底堅さが見られた一方、アジアでは一部に景気の弱さが見られたと説明しています。三次元画像寸法測定器や小型セーフティドアセンサなどの商品開発と海外販売体制の強化を継続し、売上高は9,224億円(前期比22.1%増)、営業利益は4,989億円(同19.3%増)となりました。国内売上高は3,480億円(同12.2%増)、海外売上高は5,743億円(同29.1%増)で、引き続き海外の増収率が国内を上回っています。(有報 2023年3月期)

2024年3月期には、景気の先行き不透明感を背景に、設備投資に慎重な動きが見られました。欧米では設備投資が底堅く推移したものの、アジアでは景気の弱さが見られ、国内でも設備投資に慎重さがあったと説明しています。こうした環境の中、高精度自動コロニーカウンタやレーダー式レベルセンサなどの新商品開発と海外販売体制の強化を継続しました。売上高は9,672億円(前期比4.9%増)と増収を維持した一方、営業利益は販売費及び一般管理費の増加などにより4,950億円(同0.8%減)となりました。一方、経常利益は為替差益の増加などにより5,192億円(同1.3%増)となっています。国内売上高は3,445億円(同1.0%減)、海外売上高は6,227億円(同8.4%増)となり、国内が減収となる一方で海外の増収が続きました。(有報 2024年3月期)

2025年3月期には、北中南米の設備投資が底堅く推移する一方、欧州では慎重な動きが続き、アジアでは不透明感の中にも設備投資の持ち直しが見られました。国内については全体として持ち直しの動きが継続したと説明しています。キーエンスはAI搭載画像センサや高精度・高速センシングイオナイザなどを開発し、海外では人材育成を中心とする営業体制の強化を進めました。売上高は1兆591億円(前期比9.5%増)と初めて1兆円を超え、営業利益は5,497億円(同11.1%増)となりました。国内売上高は3,727億円(同8.2%増)、海外売上高は6,863億円(同10.2%増)となり、国内外とも増収となっています。(有報 2025年3月期)

2026年3月期は、北中南米とアジアの設備投資が全体として堅調に推移し、欧州では慎重さが残る一方で一部に持ち直しの動きが見られました。国内も一部に慎重さがあるものの、概ね堅調な動きが続いたと説明しています。製造現場向け3Dプリンタやライン型シリンダセンサ&スマートバルブなどの商品開発、海外人材の育成と営業体制の強化を継続しました。売上高は1兆1,692億円(前期比10.4%増)、営業利益は5,957億円(同8.4%増)となり、経常利益は6,357億円(同13.3%増)となりました。国内売上高は3,900億円(同4.6%増)、海外売上高は7,792億円(同13.5%増)で、海外の増収率が再び国内を大きく上回りました。(有報 2026年3月期)

5年間の経営者による説明を通じて、企画開発と営業体制の強化という基本的な取り組みは継続しています。業績面では、2022年3月期と2023年3月期の大幅な増収・増益、2024年3月期の増収・営業減益、2025年3月期以降の再びの増益という経過が見られました。地域別には、2024年3月期の国内減収を含む景気や設備投資動向の違いが表れていますが、海外売上高は5期連続で増加しています。

なお、同社は営業活動や企画開発に必要な資金について、主として営業活動から獲得した資金を充当する方針を継続しています。財政状態やキャッシュ・フローの具体的な変化については、「経理の状況」で扱います。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

重要な契約等

2022年3月期から2025年3月期までの「経営上の重要な契約等」、および2026年3月期の「重要な契約等」は、いずれも「該当事項はありません」と記載されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

一方、2026年3月期にはCADENAS Technologies AGの株式取得が行われています。この買収は「事業の内容」および連結財務諸表注記等で確認できるものの、「重要な契約等」の項目には個別の記載がありません。したがって、当該項目が「該当事項はありません」とされていることと、買収が行われた事実は区別して扱います。(有報 2026年3月期)

研究開発活動

キーエンスグループの研究開発活動は、5年間を通じて主にキーエンス本体が担っています。製造現場の品質向上や課題解決につながる商品開発を中心としながら、測定、検査、画像処理、センシングなどの分野で新商品を投入しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

研究開発費は、2022年3月期の178億円から2023年3月期には216億円、2024年3月期には251億円、2025年3月期には288億円、2026年3月期には328億円となり、5期連続で増加しました。初年度と最終年度の比較では約1.84倍となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2022年3月期には、最速1秒で形状・うねり・粗さを測定できるワンショット3D形状測定機や、業務用デバイスに求められる高速性、堅牢性、柔軟性を備えたフルスクリーンモデルのハンディターミナルなどを開発しました。2023年3月期には、対象物を360度スキャンして形状と色味を3Dデータ化する3Dスキャナ型三次元測定機や、生産性と安全性の両立を図る小型セーフティドアセンサなどを開発しています。(有報 2022年3月期〜2023年3月期)

2024年3月期には、光学技術や画像処理技術を活用し、微生物検査を簡便化する高精度自動コロニーカウンタや、独自の解析アルゴリズムによって液体・粉体の高さを安定して測定するレーダー式レベルセンサを開発しました。(有報 2024年3月期)

2025年3月期には、新開発のAIアルゴリズムによって撮像条件や検査設定を支援するAI搭載画像センサを開発しました。また、独自機構により従来品比10倍の除電精度と除電速度を実現した高精度・高速センシングイオナイザなども開発しています。(有報 2025年3月期)

2026年3月期には、高強度・高耐熱・耐薬品性を備えた機能性樹脂でも簡単に高品質な造形が可能となる製造現場向け3Dプリンタや、装置の立ち上げ・調整工数の削減と安定稼働に貢献するライン型シリンダセンサ&スマートバルブなどを開発しました。(有報 2026年3月期)

この5年間では、研究開発費の増加とともに、従来からの測定・検査技術を活用した商品開発に加え、AIを活用した画像検査、3Dプリンタなどの商品が登場しています。商品開発の対象は、製造現場の測定・検査・品質管理に加え、作業の簡便化や生産設備の安定稼働を支援する領域にも広がっています。

経理の状況

連結貸借対照表

キーエンスグループの連結総資産は、2022年3月期の2兆3,240億円から2026年3月期には3兆6,707億円へ増加しました。同期間の純資産も2兆1,736億円から3兆4,715億円へ増加しており、総資産の拡大とともに自己資本の蓄積が進んでいます。自己資本比率は93.5%〜94.7%の範囲で推移し、5年間を通じて90%を超える水準を維持しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

資産構成では、現金及び預金、有価証券、投資有価証券が大きな割合を占めています。2022年3月期には、現金及び預金が4,643億円、有価証券が5,403億円、投資有価証券が9,397億円で、これらの合計は約1兆9,443億円でした。2026年3月期には、それぞれ5,969億円、8,969億円、1兆5,143億円となり、合計は約3兆81億円に増加しています。こうした金融資産の増加が、総資産拡大の大きな部分を占めています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

営業活動に関連する資産も増加しました。受取手形及び売掛金は2022年3月期の2,479億円から2026年3月期には3,796億円となり、売上規模の拡大とともに増加しています。棚卸資産についても、2022年3月期には621億円を計上しており、その後の各期において事業活動に伴う運転資本の変化が見られます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

負債合計は、2022年3月期の1,505億円から2026年3月期には1,992億円へ増加しました。ただし、純資産の増加規模と比較すると負債の増加は限定的であり、総資産に占める負債の割合は引き続き低い水準にあります。負債の中心は買掛金、未払法人税等、賞与引当金などの事業活動に伴う項目で、連結貸借対照表には多額の有利子負債を抱える構造は見られません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

純資産では、利益剰余金が2022年3月期の2兆1,018億円から2026年3月期には3兆3,566億円へ増加しました。各年度の当期純利益の計上と配当による減少を経ながら、利益剰余金の積み上がりが続いています。一方、その他の包括利益累計額には、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定の変動が反映されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期には、無形固定資産が前期末の63億円から292億円へ増加しました。同年度にはCADENAS Technologies AGの株式取得によって子会社11社が新たに連結対象となっています。ただし、有価証券報告書では無形固定資産の増加額のうち、当該買収に直接対応する金額は区分して示されていません。そのため、無形固定資産の増加と連結範囲の拡大はそれぞれ確認できるものの、増加額の全てを買収によるものとは断定できません。(有報 2026年3月期)

連結損益計算書

連結売上高は、2022年3月期の7,551億円から2026年3月期には1兆1,693億円へ増加し、5期連続で増収となりました。営業利益は2022年3月期の4,180億円から2023年3月期には4,989億円へ増加した後、2024年3月期に4,950億円へ減少しましたが、2025年3月期には5,498億円、2026年3月期には5,958億円と再び増加しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

売上総利益は、2022年3月期の6,212億円から2026年3月期には9,707億円へ増加しました。売上総利益率は2022年3月期の約82.3%から2026年3月期には約83.0%となっており、5年間を通じて80%を超える高い水準を維持しています。一方、販売費及び一般管理費は2022年3月期の2,031億円から2026年3月期には3,750億円へ増加しました。売上高と売上総利益が拡大する中で、営業体制の拡充などに伴う費用も増加しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2024年3月期は、売上高が前期比4.9%増加し、売上総利益も7,547億円から8,025億円へ増加した一方、販売費及び一般管理費が2,558億円から3,075億円へ増加しました。この結果、営業利益は前期の4,989億円から4,950億円へ0.8%減少しました。売上高の増加が営業利益の増加にはつながらなかった年度となっています。(有報 2024年3月期)

一方、2024年3月期の経常利益は、前期の5,128億円から5,193億円へ増加しました。連結損益計算書では為替差益が前期の53億円から128億円へ増加しており、営業利益が減少する一方で営業外収益が経常利益を押し上げる構造が見られました。親会社株主に帰属する当期純利益も、前期の3,630億円から3,696億円へ増加しています。(有報 2024年3月期)

2025年3月期には、売上高が1兆591億円となり、営業利益も5,498億円へ増加しました。売上総利益は8,877億円、販売費及び一般管理費は3,379億円で、売上総利益の増加額が販売費及び一般管理費の増加額を上回りました。営業利益は前期比11.1%増加し、2024年3月期の減益から増益へ転じています。(有報 2025年3月期)

2026年3月期には、売上高が1兆1,693億円、売上総利益が9,707億円、営業利益が5,958億円となりました。販売費及び一般管理費も3,750億円へ増加しましたが、売上総利益の増加によって営業利益は前期比8.4%増加しています。(有報 2026年3月期)

経常利益は2026年3月期に6,358億円となり、前期の5,610億円から13.3%増加しました。同年度の連結損益計算書では為替差益163億円が計上されており、営業利益の増加に加えて営業外損益も経常利益の増加に寄与しています。親会社株主に帰属する当期純利益は4,452億円となり、5年間を通じて増加が続いています。(有報 2026年3月期)

5年間の損益構造では、売上総利益率が高い水準で維持される一方、販売費及び一般管理費の増加によって営業利益の伸びが売上高の伸びを下回る年度も見られました。特に2024年3月期には営業減益と経常増益が併存しており、営業活動から生じる利益と為替差益などを含む経常利益の動きには違いが見られます。

連結キャッシュ・フロー計算書

営業活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期の2,715億円から2023年3月期には3,026億円、2024年3月期には3,879億円、2025年3月期には4,095億円、2026年3月期には4,307億円となり、5期連続で増加しました。税金等調整前当期純利益の増加が営業キャッシュ・フローの基盤となる一方、売上債権や棚卸資産の増減、法人税等の支払いが各年度の資金収支に影響しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2022年3月期には、税金等調整前当期純利益4,312億円を計上する一方、棚卸資産の増加や法人税等の支払いなどがあり、営業キャッシュ・フローは2,715億円となりました。その後も利益規模の拡大に伴い営業キャッシュ・フローは増加しています。2026年3月期には税金等調整前当期純利益6,358億円に対して、法人税等の支払額が1,816億円、売上債権の増加による資金減少が369億円となり、営業キャッシュ・フローは4,307億円でした。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

投資活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期の△111億円から2023年3月期には△2,835億円となり、その後も2024年3月期は△2,428億円、2025年3月期は△2,806億円、2026年3月期は△3,124億円の支出超過となりました。2022年3月期の支出超過額が小さかった背景には、定期預金の増減額が1,326億円の収入となっていたことがあります。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

投資キャッシュ・フローでは、有価証券の増減額が大きな割合を占めています。2022年3月期の有価証券の増減による支出は1,365億円でしたが、2023年3月期には2,300億円、2024年3月期には2,113億円、2025年3月期には2,485億円、2026年3月期には2,431億円となりました。これらは有価証券の取得・償還等による資金移動を含むものであり、その全額を事業用設備への投資として扱うことはできません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

有形固定資産の取得による支出は、2022年3月期の62億円から2023年3月期には393億円へ増加しました。2024年3月期には125億円、2025年3月期には143億円となった後、2026年3月期には284億円へ増加しています。設備投資に伴う資金支出は年度によって変動しており、有価証券等の運用による資金移動とは別に確認できます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期には、投資活動によるキャッシュ・フローの「その他」が△321億円となり、前期の△30億円から支出額が大きく増加しました。同年度にはCADENAS Technologies AGの株式取得が行われていますが、連結キャッシュ・フロー計算書では当該買収に係る支出額が独立した項目として示されていません。そのため、「その他」の増加額をそのまま買収支出額とみなすことはできません。(有報 2026年3月期)

財務活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期の△498億円から2026年3月期には△1,137億円へ支出超過額が拡大しました。主な支出は配当金の支払いであり、その金額は2022年3月期の485億円から2023年3月期には606億円、2024年3月期には728億円、2025年3月期には788億円、2026年3月期には1,091億円となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

一方、自己株式の取得による資金支出は各年度とも小規模であり、財務キャッシュ・フローにおける主要な資金流出は配当金の支払いです。借入金の増加によって事業資金を調達するような大きな動きは、連結キャッシュ・フロー計算書には見られません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

現金及び現金同等物の期末残高は、2022年3月期の3,962億円から2023年3月期には3,440億円へ減少しました。その後、2024年3月期には4,061億円、2025年3月期には4,517億円へ増加し、2026年3月期は4,513億円とほぼ横ばいとなっています。営業キャッシュ・フローは増加を続けたものの、投資活動や配当金支払いなどに伴う資金流出により、現金及び現金同等物の残高は各年度で異なる動きを示しました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間を通じて、営業活動による資金獲得額が増加する一方、投資活動では有価証券等の運用に伴う多額の資金移動が続きました。また、財務活動では配当金支払いによる流出が増加しています。営業活動から継続的に資金を獲得しながら、金融資産の運用と株主還元に資金を配分する構造が見られます。

連結財務諸表注記

会計基準と比較条件

キーエンスグループは、対象期間を通じて日本の会計基準に基づく連結財務諸表を作成しています。

2023年3月期からは「収益認識に関する会計基準」等を適用しています。2023年3月期以降の主要な経営指標等は当該会計基準等の適用後の数値であり、2022年3月期との比較では収益認識に関する会計処理の条件が異なります。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)

収益認識の基本方針として、電子応用機器の販売では、出荷時または納品時に商品の支配が顧客へ移転したと判断して収益を認識しています。一部の保守契約等については、契約期間にわたり収益を認識する方針が示されています。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)

セグメント情報

キーエンスグループは、電子応用機器の製造・販売を中心とする単一セグメントとして事業活動を展開しており、5年間を通じて複数の報告セグメントに区分した業績開示は行っていません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期にはCADENAS Technologies AGの株式取得によって連結範囲が拡大しましたが、同年度も単一セグメントとして開示されています。このため、CADENASの事業に対応する売上高・営業利益などを独立した報告セグメントの数値として比較することはできません。(有報 2026年3月期)

連結範囲の変更と無形固定資産

2024年3月期には、子会社1社の吸収合併と子会社1社の新設が行われましたが、連結子会社数は28社で変わりませんでした。2026年3月期には、CADENAS Technologies AGの株式取得に伴って11社を新たに連結範囲へ含め、連結子会社数は39社となっています。(有報 2024年3月期、2026年3月期)

2026年3月期の連結貸借対照表では無形固定資産が229億円増加しています。ただし、企業結合に伴う取得対価、識別可能な無形資産、のれんなどの内訳について、今回の有価証券報告書からは当該買収と直接対応する金額を特定できません。このため、買収による財務上の影響を、無形固定資産の増加額や投資キャッシュ・フローの特定項目だけから算定することはできません。(有報 2026年3月期)

その他の注記

2026年3月期の有価証券報告書では、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクのある会計上の見積りは識別されなかったため、重要な会計上の見積りの記載を省略したと説明しています。(有報 2026年3月期)

また、同年度の未適用の会計基準等では、新たなリース会計基準を2029年3月期の期首から適用する予定としています。連結財務諸表への影響額については、2026年3月期時点で評価中とされています。(有報 2026年3月期)

配当政策

キーエンスは、効率的な事業運営による資本利益率の向上と高付加価値の拡大を経営目標とし、株主への配当の充実を図りながら、将来の事業展開と経営体質の強化に必要な内部留保を確保し、安定した配当を継続することを基本方針としています。この方針は2022年3月期から2026年3月期まで変更されていません。また、配当性向やDOE(株主資本配当率)について、具体的な数値目標は設定されていません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

配当は中間配当と期末配当の年2回を基本とし、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会で決定しています。内部留保資金については、経営環境の変化に対応するため、企画開発力の強化、海外事業の充実、事業領域の拡大などに有効投資する方針を継続しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

配当実績と配当性向の変化

配当実績の推移は次のとおりです。

決算期年間配当配当性向
2022年3月期200円16.0%
2023年3月期300円20.0%
2024年3月期300円19.7%
2025年3月期350円21.3%
2026年3月期550円30.0%

※配当性向は連結ベース。有価証券報告書に記載された年間配当額と連結1株当たり当期純利益から算出。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

この基本方針のもと、1株当たり年間配当額は、2023年3月期に200円から300円へ増加しました。2024年3月期は300円を維持し、2025年3月期には350円、2026年3月期には550円へ増加しています。5年間の比較では年間配当額が350円増加し、2026年3月期は2022年3月期の2.75倍となりました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期には、中間配当・期末配当ともに前期の175円から275円へ増額され、年間配当額は前期比200円の増加となりました。同年度の年間配当総額は1,333億88百万円で、2022年3月期の485億4百万円から大きく増加しています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

連結配当性向は、2022年3月期の16.0%から2023年3月期には20.0%へ上昇し、2024年3月期には19.7%となりました。その後、2025年3月期には21.3%、2026年3月期には30.0%となっています。2026年3月期には年間配当額の大幅な増加に伴い、連結配当性向も30%まで上昇しました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期の数値から算出)

自己株式については、各年度の「自己株式の取得等の状況」で単元未満株式の買取りなどが確認できますが、対象期間中に大規模な自己株式取得を通じて株主還元を行う動きは見られません。株主還元の中心は現金配当となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

この5年間では、安定配当と成長投資に向けた内部留保の確保という基本方針を維持しながら、年間配当額を段階的に引き上げています。特に2026年3月期は、年間配当額が350円から550円へ増加し、連結配当性向も30.0%まで上昇しました。一方、配当性向などの数値目標を新たに設定する方針変更は確認されず、株主還元の基本的な考え方は継続しています。

主要な経営指標等の推移

キーエンスグループの2022年3月期から2026年3月期までの主要な連結経営指標は、次のとおりです。数値は2026年3月期の有価証券報告書に掲載された5期比較を基準とし、売上総利益と営業利益は各年度の連結損益計算書から補っています。

業績・財政状態・資本効率

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
売上高7,551億74百万円9,224億22百万円9,672億88百万円1兆591億45百万円1兆1,692億89百万円
売上総利益6,211億90百万円7,547億32百万円8,025億5百万円8,877億円9,707億37百万円
営業利益4,180億45百万円4,989億14百万円4,950億14百万円5,497億75百万円5,957億59百万円
経常利益4,312億40百万円5,128億30百万円5,192億95百万円5,610億10百万円6,357億56百万円
当期純利益※13,033億60百万円3,629億63百万円3,696億42百万円3,986億56百万円4,451億85百万円
総資産2兆3,240億37百万円2兆6,504億29百万円2兆9,647億92百万円3兆2,892億24百万円3兆6,706億55百万円
純資産2兆1,735億83百万円2兆4,916億34百万円2兆8,061億93百万円3兆1,085億52百万円3兆4,714億72百万円
BPS※28,962.26円10,273.68円11,570.71円12,817.43円14,313.86円
EPS※31,250.83円1,496.60円1,524.14円1,643.77円1,835.63円
自己資本比率93.5%94.0%94.7%94.5%94.6%
ROE※414.85%15.56%13.95%13.48%13.53%

※1 当期純利益:親会社株主に帰属する当期純利益
※2 BPS:1株当たり純資産額
※3 EPS:1株当たり当期純利益
※4 ROE:自己資本利益率

キャッシュ・フロー

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
営業CF※52,714億76百万円3,026億28百万円3,879億16百万円4,095億22百万円4,306億80百万円
投資CF※5△111億34百万円△2,834億87百万円△2,427億92百万円△2,806億12百万円△3,123億87百万円
財務CF※5△498億17百万円△636億66百万円△763億6百万円△834億30百万円△1,137億22百万円
現金等期末残高※63,961億65百万円3,440億2百万円4,060億65百万円4,517億15百万円4,512億69百万円

※5 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー
※6 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高

主要指標から確認できる変化

キーエンスが経営上重視する売上高・売上総利益・営業利益の3指標を見ると、売上総利益は5期連続で増加し、売上総利益率も80%を超える水準を維持しています。一方、営業利益は2024年3月期に減少しており、売上総利益の増加が必ずしも営業利益の増加につながっていない年度があります。この違いには、前掲の「経理の状況」で確認した販売費及び一般管理費の増加が関係しています。

親会社株主に帰属する当期純利益とEPSは5期連続で増加しましたが、ROEは2023年3月期の15.56%をピークに低下し、2026年3月期は13.53%となっています。利益の増加とともに純資産も拡大しており、高い自己資本比率を維持する一方、自己資本に対する利益の割合は2023年3月期を下回る水準となっています。

営業CFは5期連続で増加しています。投資CFは全期間で支出超過となっていますが、有価証券や定期預金等の運用による資金移動を含むため、設備投資額と同一には捉えられません。営業活動による資金獲得が拡大する中で、金融資産の運用と配当金支払いが行われていることが、財務諸表全体から確認できます。

※「収益認識に関する会計基準」等を2023年3月期の期首から適用しており、同年度以降の主要な経営指標等は当該基準等の適用後の数値です。

(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間を通して

キーエンスグループの2022年3月期から2026年3月期までの5年間は、電子応用機器の開発・製造・販売を中心とする事業構造と、「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という経営方針を維持しながら、事業規模と利益を拡大した期間でした。顧客の潜在的な需要を捉える商品開発と、グローバルな直販体制の強化を継続し、研究開発費も5期連続で増加しています。2026年3月期にはドイツのCADENAS Technologies AGを買収し、従来の電子応用機器に加えて3D CAD関連のプラットフォーム事業がグループに加わりました。

業績面では、売上高が2022年3月期の7,551億74百万円から2026年3月期には1兆1,692億89百万円へ増加し、5期連続で増収となりました。売上総利益率は80%を超える水準を維持した一方、2024年3月期には販売費及び一般管理費の増加によって営業減益となり、売上高の拡大が必ずしも営業利益の増加につながらない年度もありました。その後、2025年3月期と2026年3月期には営業利益が再び増加しています。また、海外売上高は5期連続で増加しており、海外事業の拡大が売上規模の成長に表れています。

財務面では、営業キャッシュ・フローが5期連続で増加し、利益剰余金と金融資産の蓄積が進みました。自己資本比率は5年間を通じて93%を超える高い水準を維持しています。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は増加を続けたものの、ROEは2023年3月期の15.56%から2026年3月期には13.53%となりました。利益の拡大と自己資本の蓄積が並行して進む中で、資本効率の指標にはこうした変化が見られます。

株主還元については、安定配当と成長投資に必要な内部留保の確保を両立する基本方針が維持されました。年間配当額は2022年3月期の200円から2026年3月期には550円へ増加し、有価証券報告書の数値から算出した連結配当性向も16.0%から30.0%へ上昇しています。大規模な自己株式取得は見られず、現金配当が株主還元の中心となっています。

経営上の課題としては、企画開発力の強化、海外事業の拡大、人材育成を継続して重視しています。景気や設備投資、為替変動、海外事業、品質、情報セキュリティなどを主要リスクとして認識する一方、2026年3月期には「人材の採用・確保」と「M&A」が独立したリスク項目として追加されました。CADENASの買収によって事業領域が広がる中、成長を支える人材の確保と買収後の事業運営に関するリスク認識も明示されています。

この5年間を通じて、キーエンスは高い売上総利益率と自己資本比率を維持しながら、海外売上高、利益、営業キャッシュ・フローを拡大してきました。基本的な経営方針や事業の主軸に大きな変更はなく、2026年3月期にはCADENASの買収という新たな事業領域への展開が加わっています。一方、利益の増加に対してROEは2023年3月期の水準を下回っており、事業規模の拡大と資本効率の変化が併存した5年間と整理できます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

出典:株式会社キーエンス 有価証券報告書 2022年3月期〜2026年3月期

免責事項

本ページに掲載している財務情報・指標は、有価証券報告書等の公開情報をもとに作成していますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。

本ページの情報は投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任で行ってください。