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ディスコ

DISCO CORPORATION

業種
機械
所属
プライム
会計基準
日本基準
連結・非連結
連結

企業別レビュー

有価証券報告書・5年間レビュー

対象期間:2022年3月期〜2026年3月期

事業の内容

事業構成と主要製品

ディスコグループは、半導体製造装置(精密加工装置)と精密加工ツールの製造・販売を中心に、これらに附帯する保守・サービスを行っています。2022年3月期から2026年3月期まで、この基本的な事業構成は維持されており、主要な事業分野の新設・廃止や大規模な事業転換は有価証券報告書の「事業の内容」には記載されていません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

主要な精密加工装置は、ダイシングソー、レーザソー、グラインダ、ポリッシャ、サーフェースプレーナで構成されています。精密加工ツールには、ダイシングブレード、グラインディングホイール、ドライポリッシングホイールなどがあります。2022年3月期には製品区分の一つを「研削切断砥石」と記載していましたが、2023年3月期以降は「砥石応用製品」と記載されています。この表記の変更を除けば、主要製品の構成にも大きな変化は見られません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

国内外の事業体制

製造についてはディスコ本体と国内関係会社が担い、販売・サービスについては国内に加え、米国、シンガポール、欧州、中国、台湾、韓国のグループ会社が主要な拠点として記載されています。

海外の主要会社は、DISCO HI-TEC AMERICA, INC.、DISCO HI-TEC (SINGAPORE) PTE LTD、DISCO HI-TEC EUROPE GmbH、DISCO HI-TEC CHINA CO., LTD.、DISCO HI-TEC TAIWAN CO., LTD.、DISCO HI-TEC KOREA Corporationであり、これらの会社は5年間を通じて主要な販売・サービス会社として継続して記載されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

グループ構成の変化

グループの子会社数は、2022年3月期の21社から2023年3月期に22社、2024年3月期も22社、2025年3月期に24社、2026年3月期には23社となりました。関連会社数は各期とも2社です。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2022年3月期の「事業の内容」では、株式会社ディスコマニュファクチャリングが主要な製造会社として記載されていましたが、2023年3月期以降は同項目の主要製造会社の一覧から外れています。一方、株式会社ダイイチコンポーネンツは引き続き記載されており、海外の主要販売・サービス会社の構成も維持されています。なお、ディスコマニュファクチャリングが主要製造会社の一覧から外れた理由は、この記載だけでは特定できません。(有報 2022年3月期、2023年3月期)

このように、子会社数や主要会社の記載には一部変化があるものの、精密加工装置・精密加工ツールの製造販売と、それに附帯する保守・サービスを中心とする事業の骨格は、5年間を通じて維持されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

事業の状況

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

基本理念と経営指標の継続

ディスコは、1997年に制定した企業理念「DISCO VALUES」において、「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術によって 遠い科学を身近な快適につなぐ」を社会的使命(Mission)としています。「切る・削る・磨く」の3つの技術領域を事業の中心に据え、売上高や市場シェア、企業規模の拡大そのものではなく、Missionの実現性とステークホルダーとの価値交換性の向上を「成長」と定義しています。

この考え方は2022年3月期から2026年3月期まで一貫しており、独自の管理会計制度「Will会計」や、全社的な改善活動「PIM(Performance Innovation Management)」を通じた組織能力の向上も継続しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

中長期の目標としては「DISCO VISION 2030」を掲げ、2030年度末の到達点を、事業・組織・人的資源などの企業構成要素と、顧客・従業員・株主・取引先・地域社会などとの関係性の両面から定義しています。

定量的な経営目標として、次の2指標を5年間を通じて維持しています。

  • 4年累計連結経常利益率:20%以上
  • 4年累計RORA(Return On Risk Assets):20%以上

4年累計連結経常利益率は、半導体業界特有のシリコンサイクルを踏まえ、単年度の業績よりも中期的な収益力を捉えるための指標と位置付けられています。RORAは、棚卸資産や固定資産など換金性の低い資産の効率性を評価する指標です。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

4年累計連結経常利益率は、2022年3月期の30.8%から、2023年3月期34.4%、2024年3月期37.0%、2025年3月期40.0%、2026年3月期41.4%へ上昇しました。2026年3月期には20%以上の目標を10期連続で達成しています。

4年累計RORAも、2022年3月期の37.1%から、2023年3月期41.1%、2024年3月期45.2%、2025年3月期50.8%、2026年3月期51.2%へ上昇しています。いずれも5年間を通じて目標水準を上回っており、設定した経営指標とその評価期間は維持されたまま、実績が改善しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

装置・ツール・アプリケーションを組み合わせた事業展開

2022年3月期の時点で、会社は半導体需要の中長期的な拡大に対応するため、精密加工装置、消耗品である精密加工ツール、そして装置と消耗品を組み合わせて最適な加工条件を導き出すアプリケーション技術の3つを組み合わせ、顧客の加工課題に対するトータルソリューションを提供する方針を示していました。

単に装置を販売するのではなく、加工技術全体を提供する考え方は、その後も経営方針の中心として維持されています。技術開発を継続するための研究開発設備への投資や、財務的・経営的基盤の整備も重視されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

Fab Important戦略の明示

2025年3月期の有価証券報告書では、製造拠点を技術革新、市場対応力、企業競争力の起点と捉える「Fab Important戦略」が経営方針の独立した項目として記載されました。2026年3月期にも同戦略の説明が継続しています。

会社は、製造機能を社内に保有することについて、開発部門と製造現場の密接な連携による技術改良の迅速化、顧客ごとの仕様変更や多品種少量生産への柔軟な対応、製造ノウハウの蓄積と技術の内製化などを挙げています。また、地政学リスクや納期変動などに対するサプライチェーンの強靱性も説明しています。

これは、従来から掲げていた加工技術を中心とする事業方針に加え、自社内に製造機能を持つことの経営上の位置付けが、より明確に説明された変化です。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

経営環境認識の変化

対象期間を通じて、会社は情報通信技術の進展、AI、IoT、自動運転、脱炭素化などによる半導体需要の中長期的な拡大を見込んでいました。一方、実際の市場環境には用途別の違いが生じ、その内容は各年度の経営者による業績説明に反映されています。

2022年3月期には、5G、自動車、ロジックIC、メモリ、パワー半導体など幅広い分野で需要が拡大しました。その後、2023年3月期にはスマートフォンやPC向けの需要が減退する一方、研究開発用途やパワー半導体向けの需要が下支えとなりました。

2024年3月期には、スマートフォン・PC向けの低迷が続く中、パワー半導体需要に加えて生成AI関連需要の拡大が説明されるようになりました。2025年3月期には生成AI関連の高性能半導体など、一部用途で高水準の設備投資が継続しました。

2026年3月期には、生成AIの需要拡大を背景としたデータセンタ投資が続き、先端ロジックやHBM(高帯域幅メモリ)向け需要が高水準となる一方、EV需要の鈍化に伴ってパワー半導体向けには低調な動きが見られたと説明されています。

この5年間では、半導体需要の中長期的拡大という基本認識は維持されながら、業績を支える用途の中心が、幅広い半導体需要やパワー半導体から、生成AI・高性能半導体関連へと変化していく様子が確認できます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

サステナビリティに関する考え方及び取組

企業理念との関係と管理体制

ディスコは、サステナビリティを新たな独立した経営目的ではなく、「DISCO VALUES」に基づくMissionの実現性とステークホルダーとの価値交換性を高める企業活動そのものとして位置付けています。

2022年3月期の有価証券報告書でも、サステナビリティに対する基本的な考え方、従業員満足度の向上、環境目標などが「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載されていました。

2023年3月期以降は、ガバナンス、リスク管理、人的資本、環境への対応などについて、より体系的な説明が行われています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

気候変動への対応

2022年3月期の時点で、会社は次の温室効果ガス削減目標を掲げていました。

  • 2030年度までに自社操業に関連する排出量(Scope1:直接排出、Scope2:購入電力などに伴う間接排出)のカーボンニュートラル実現を目指す
  • 2050年度までにサプライチェーン全体の排出量(Scope1+2+3。Scope3はScope1・2以外のバリューチェーンにおける間接排出)のカーボンニュートラル実現を目指す

これらの目標は2026年3月期まで継続されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2023年3月期以降の開示では、各部門・従業員による省エネルギー活動、カーボンニュートラルに関する教育、PIM活動を通じた改善など、日常業務と結び付けた施策が説明されています。

2024年3月期以降は、2030年のScope1+2、2050年のScope3に関する移行計画がより具体的に記載され、エネルギーの転換やサプライチェーンでの削減に向けた対応が整理されています。基本目標を変更するのではなく、その実現に向けた取組や開示が具体化してきた経過です。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)

人的資本とステークホルダーへの対応

会社は従業員の満足度を重視し、従業員が自律的に行動し、業務改善に取り組むための組織文化を経営基盤の一つとして位置付けています。

従業員満足度調査(ES)に加え、顧客満足度調査(CS)、サプライヤー満足度調査(SS)を活用し、「DISCO VISION 2030」に掲げるステークホルダーとの関係性を確認する取組も継続しています。

2023年3月期以降のサステナビリティ開示では、人的資本に関する方針や施策が独立した項目として説明されるようになりました。経営理念として従来から重視していた従業員との価値交換性が、サステナビリティ開示の中でも整理されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。

事業等のリスク

半導体市場の変動

5年間を通じて最も基本的なリスクの一つとして記載されているのが、半導体市場の需給変動です。

ディスコの製品需要は半導体メーカーや電子部品メーカーの設備投資、生産動向に影響されます。半導体市場のダウンサイクルや予期せぬ需要変化によって、顧客が設備投資を凍結したり、生産を縮小したりした場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があると説明しています。

このリスクに対し、会社はWill会計やPIM活動によるコスト削減、業務改善、人材育成を通じ、需要変動に柔軟に対応できる組織づくりを進めています。この基本認識と対応方針は2022年3月期から2026年3月期まで継続しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

実際の市場環境では、2023年3月期から2024年3月期にかけてスマートフォンやPC向け半導体の需要が弱含んだ一方、研究開発用途、パワー半導体、生成AI関連が需要を下支えしました。2026年3月期には高性能半導体向けの需要が高水準となる一方、パワー半導体向けが低調になるなど、半導体市場内でも用途による変動が見られています。

このため、半導体市場全体の変動リスクだけでなく、需要を支える用途の変化も5年間の特徴となっています。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)

新技術の登場

会社は、精密ダイヤモンド砥石に代わる加工技術が登場した場合に、既存製品の需要や業績に影響する可能性を継続して認識しています。

これに対して、ダイヤモンド砥石では加工が難しい素材向けに、レーザやプラズマを使用した加工技術の開発を進めています。

5年間を通じて、既存の精密加工技術を高度化することと、代替・新規加工技術へ対応することの双方が研究開発の課題として位置付けられています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

災害・感染症と生産拠点

国内の本社・研究開発拠点と、広島県・長野県の生産拠点において、大規模災害や感染症が発生した場合に、本社機能や製品生産へ影響が及ぶ可能性があるとしています。

会社は、事業継続管理(BCM)に関する重要事項を審議するBCMコミッティーと専門部署を設置し、災害や感染症への備えを進めています。従業員の安全確保を基本とし、災害時の対応や感染症への備えを進めるほか、主要拠点には免震構造を採用しています。精密加工装置と精密加工ツールを免震構造棟で生産できる体制も説明されています。

2022年3月期には新型コロナウイルス感染症への対応が重要な経営課題となっていましたが、会社は同感染症が当期業績に重大な影響を及ぼしたとは認識しておらず、経営戦略の変更も行っていないと説明しています。

その後も感染症や自然災害への対応は、継続的な事業運営上のリスクとして位置付けられています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

原材料・部材の調達

原材料や部材の需給逼迫、災害等による供給制約によって、生産に支障が生じる可能性も継続して記載されています。

対策として、重要な原材料・部材の政策的な在庫確保、仕入先との関係強化などを実施しています。これらは2022年3月期から2026年3月期まで維持されている対応です。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

また、2025年3月期以降に明示されたFab Important戦略では、製造技術の内製化やサプライチェーンの強靱性が経営戦略の観点からも説明されています。調達リスクへの個別対策と、自社製造機能を重視する経営方針の双方が開示されています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

為替変動

国内で製造した製品を世界各地へ販売しており、取引によっては米ドルなどの外貨建て決済が行われることから、為替変動による業績への影響も継続してリスクとして認識しています。

会社は為替感応度の分析により業績への影響を把握し、リスクが顕在化した際に迅速に意思決定できる体制を整えていると説明しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

為替の影響は実際の業績説明にも表れており、2023年3月期には為替の影響などによる売上総利益率の大幅な上昇、2024年3月期と2025年3月期にも為替影響を含む売上総利益率の改善が増益要因として説明されています。リスクとして認識する一方、対象期間中には利益率を押し上げる方向に作用した年度もありました。(有報 2023年3月期〜2025年3月期)

環境規制

気候変動、水質、化学物質、廃棄物などに関する環境規制の強化により、追加的な義務や対応コストが発生する可能性も認識しています。

2022年3月期には、気候変動、化学物質・汚染予防、水資源、資源利用、生物多様性などを対象とした「環境ビジョン2030」を策定中と説明していました。その後、2026年3月期には、これらの領域を含む「環境ビジョン」を策定していると記載しています。

環境規制への対応は、法令遵守に加え、中長期的な環境負荷低減の取組として位置付けられています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

情報セキュリティ

2026年3月期の有価証券報告書では、情報セキュリティに関するリスクが独立した項目として記載されています。

会社は、サイバー攻撃や情報漏えいなどによって、技術的優位性が損なわれたり、製品の生産・出荷が停止したりする可能性を認識しています。また、ビジネスメール詐欺などによる被害や、社会的信用の低下、損害賠償の発生もリスクとして挙げています。

こうしたリスクへの対応として、取締役会に常設の情報セキュリティ委員会を設置し、社内規程の整備や従業員教育、内部監査などを実施しています。(有報 2026年3月期)

経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

需要拡大と収益性改善が重なった2022年3月期

2022年3月期は、5G、自動車、ロジックIC、メモリ、パワー半導体など幅広い用途で半導体需要が拡大しました。顧客の設備投資意欲が旺盛で、ダイシングソーやグラインダの出荷が高水準となったほか、顧客設備の高い稼働率を背景に精密加工ツールの出荷も好調でした。

機械製品の検収も順調に進み、売上高は2,537億81百万円(前期比38.8%増)、営業利益は915億13百万円(同72.3%増)となりました。人件費や研究開発費などの販売管理費が増加する一方、売上高の増加と収益性の改善が大幅増益の要因となったと説明されています。(有報 2022年3月期)

用途別需要の差と為替影響が表れた2023〜2024年3月期

2023年3月期には、スマートフォンやPC向けの量産用途が減少する一方、半導体メーカーの研究開発用途やパワー半導体向け需要が堅調でした。グラインダを中心に装置出荷は高水準を維持しましたが、消耗品の精密加工ツールは下期に需要が低調となりました。

それでも売上高は2,841億35百万円(前期比12.0%増)、営業利益は1,104億13百万円(同20.7%増)となりました。会社は主に為替の影響などによって売上総利益率が大きく上昇したことを増益要因として説明しています。(有報 2023年3月期)

2024年3月期もスマートフォンやPC向け半導体の需要低迷が続きましたが、パワー半導体向けと生成AI関連の需要が下支えしました。精密加工ツールの出荷も顧客の設備稼働率に連動して上昇基調となり、売上高は3,075億54百万円(前期比8.2%増)、営業利益は1,214億90百万円(同10.0%増)となりました。

高付加価値案件の増加や為替影響等によって売上総利益率が上昇し、人件費・研究開発費の増加を吸収したと説明されています。

一方、羽田R&Dセンターの建替えに伴う約75億円の減損損失を特別損失として計上しました。この影響もあり、親会社株主に帰属する当期純利益の増加率は前期比1.6%にとどまりました。営業利益の増加と最終利益の増加率には違いが見られた年度です。(有報 2024年3月期)

高付加価値製品と生成AI関連需要の寄与が拡大した2025〜2026年3月期

2025年3月期には、スマートフォンやPCなどの最終製品需要の本格的な回復が見られない中、EV向けパワー半導体や生成AI関連の高性能半導体など、一部用途で高水準の設備投資が続きました。

精密加工装置は高付加価値製品を中心に堅調で、精密加工ツールも顧客の設備稼働率に連動して高水準となりました。会社は出荷済み装置の検収進捗に伴う増収、高付加価値案件の増加、為替影響などによる売上総利益率の上昇を増益要因として説明しています。

売上高は3,933億13百万円(前期比27.9%増)、営業利益は1,668億34百万円(同37.3%増)となり、営業利益率は42.4%に達しました。(有報 2025年3月期)

2026年3月期は、生成AIの普及を背景にデータセンタ向け投資が拡大し、先端ロジックやHBM(高帯域幅メモリ)などの高性能半導体向け需要が高水準で推移しました。一方、パワー半導体向けはEV需要の鈍化によって低調となり、需要の中心には変化が見られました。

高付加価値製品を中心とした精密加工装置の出荷と、精密加工ツールの高水準な出荷が続き、売上高は4,368億89百万円(前期比11.1%増)、営業利益は1,849億89百万円(同10.9%増)となりました。

この年度は、製品・用途構成の変化による売上総利益率の小幅な低下や、人件費・研究開発費の増加があったと説明されています。それでも売上高の増加と高付加価値製品の収益寄与によって増益を確保しており、前年までの売上総利益率上昇を伴う増益とは要因に違いが見られます。(有報 2026年3月期)

以上の5年間では、半導体需要が一様に拡大したわけではなく、用途別の需要動向や為替、装置の検収、高付加価値製品の構成が年度ごとに変化していました。会社の業績説明からは、これらの要因が入れ替わりながら、増収増益が続いた経過が確認できます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

重要な契約等

「経営上の重要な契約等」または「重要な契約等」については、2022年3月期から2026年3月期までの各有価証券報告書において、いずれも「該当事項はありません」と記載されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

研究開発活動

ディスコは、半導体や電子部品などの微細加工に使用する精密加工装置、消耗品である精密加工ツール、アプリケーション技術を中心に研究開発を行っています。

最終製品の小型化・高性能化に伴う微細加工需要に対応するため、アブレイシブ技術、レーザ技術、ソフトウェア技術などの開発に取り組み、シリコン以外の素材加工についても研究開発を進めています。この基本的な研究開発領域は5年間を通じて維持されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

研究開発費は次のように推移しています。

決算期研究開発費
2022年3月期198億89百万円
2023年3月期224億26百万円
2024年3月期273億1百万円
2025年3月期316億96百万円
2026年3月期341億56百万円

(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

研究開発費は5年間連続で増加し、2022年3月期の198億89百万円から2026年3月期には341億56百万円となりました。

会社は研究開発活動において、高度な精密加工技術を担うエンジニアの採用や、シリコン以外の材料に対応する加工技術の開発を継続して説明しています。

事業の基本的な技術領域を維持しながら、研究開発費の投入額が拡大していることが、この5年間の特徴となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

経理の状況

連結貸借対照表

資産規模の拡大と棚卸資産の増加

ディスコの連結総資産は、2022年3月期末の4,045億40百万円から2026年3月期末には7,434億10百万円へ増加しました。5年間で約1.84倍に拡大しており、流動資産と固定資産の双方が増加しています。

流動資産は、2022年3月期末の2,449億33百万円から2026年3月期末には4,945億72百万円へ増加しました。現金及び預金の増加に加え、棚卸資産も大きく増加しています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

棚卸資産の主要3項目は、次のように推移しています。

項目2022年3月期末2026年3月期末
商品及び製品217億55百万円390億22百万円
仕掛品189億97百万円431億7百万円
原材料及び貯蔵品277億25百万円591億96百万円
合計684億77百万円1,413億25百万円

(有報 2022年3月期、2026年3月期)

棚卸資産は5年間で約2.1倍となっています。特に原材料及び貯蔵品の増加額が大きく、2026年3月期末には591億96百万円と、2022年3月期末の2倍を超える水準となりました。

また、棚卸資産の増加は2025年3月期までの営業キャッシュ・フローにも継続して影響しています。2024年3月期には222億26百万円、2025年3月期には245億96百万円の棚卸資産増加によるキャッシュ・フローの減少が計上されました。

一方、2026年3月期の棚卸資産増加によるキャッシュ・フローの減少額は2億7百万円に縮小しています。2026年3月期末の棚卸資産は前期末と比べて大きく変化しておらず、5年間を通じた在庫の積み上がりと、直近期における増加ペースの鈍化が確認できます。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

生産設備・研究開発拠点への投資

有形固定資産は、2022年3月期末の1,444億27百万円から2026年3月期末には2,232億41百万円へ増加しました。

2022年3月期末には建物及び構築物が948億68百万円、土地が265億54百万円でしたが、2026年3月期末にはそれぞれ1,016億36百万円、654億88百万円となっています。特に土地の増加が目立ちます。

2025年3月期には研究開発用の土地建物などの取得が行われ、有形固定資産の取得による支出は668億61百万円に拡大しました。

2026年3月期末の建設仮勘定は338億85百万円となり、前期末の169億46百万円から増加しています。建設仮勘定は建設中の建物や設備などに関する支出を表すため、2026年3月期末時点でも固定資産への投資が進行していることが確認できます。(有報 2022年3月期、2025年3月期、2026年3月期)

純資産の積み上がりと財務構成

純資産は、2022年3月期末の2,938億12百万円から2026年3月期末には5,881億25百万円となり、約2倍に増加しました。

この間、利益剰余金は2,424億75百万円から5,219億24百万円へ増加しています。継続的な利益計上と配当支払いが利益剰余金の増減に反映されており、純資産拡大の中心となっています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

自己資本比率は、2022年3月期末の72.3%から2023年3月期末74.0%、2024年3月期末72.9%、2025年3月期末75.1%、2026年3月期末78.9%と推移しました。

2026年3月期末には、総資産が前期末から893億23百万円増加した一方、負債合計は1,613億83百万円から1,552億85百万円へ減少しました。その結果、自己資本比率は前期末から3.8ポイント上昇しています。

5年間を通じて資産規模が拡大しながら、純資産の積み上がりによって自己資本比率も上昇しており、2026年3月期末には約8割に達しています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

連結損益計算書

売上高と営業利益の拡大

売上高は、2022年3月期の2,537億81百万円から2026年3月期には4,368億89百万円へ増加しました。営業利益も915億13百万円から1,849億89百万円へ増加し、5年間で約2倍となっています。

営業利益率は2022年3月期の36.1%から2025年3月期には42.4%まで上昇しました。2026年3月期には42.3%と小幅に低下しましたが、40%を超える水準を維持しています。

売上高の増加だけでなく、営業利益率の上昇も営業利益の拡大に寄与しています。ただし、2026年3月期には売上総利益率が前期より小幅に低下しており、5年間を通じて利益率が一貫して改善したわけではありません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2024年3月期の減損損失

2024年3月期には、羽田R&Dセンターの建替えに伴い、75億30百万円の減損損失が特別損失として計上されました。

同年度の営業利益は1,214億90百万円と前期から増加した一方、親会社株主に帰属する当期純利益は842億5百万円となり、前期の828億91百万円からの増加率は1.6%にとどまりました。

この年度は、本業の営業利益が増加した一方、研究開発拠点の建替えに伴う一過性の損失が最終利益を押し下げています。(有報 2024年3月期)

2025〜2026年3月期の利益水準

2025年3月期には、売上高が前期比27.9%増加し、営業利益は同37.3%増加しました。営業利益率は42.4%となり、対象5年間の最高水準に達しています。

翌2026年3月期も増収増益となりましたが、営業利益の増加率は10.9%となり、前年の37.3%から低下しました。

2026年3月期の連結損益計算書では、売上高4,368億89百万円に対し、売上原価は1,304億12百万円、販売費及び一般管理費は1,214億87百万円となっています。売上総利益は3,064億77百万円で、前年の2,775億70百万円から増加したものの、売上総利益率は小幅に低下しました。

また、営業外損益では、2025年3月期に8億11百万円の為替差益が計上されていたのに対し、2026年3月期には12億12百万円の為替差損が計上されました。

2026年3月期の経常利益は1,849億36百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,355億21百万円となり、いずれも対象5年間で最も高い水準となっています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

連結キャッシュ・フロー計算書

営業キャッシュ・フローの推移

営業活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期の836億54百万円から2026年3月期には1,335億43百万円へ増加しました。

営業キャッシュ・フローは、2023年3月期に前期比で小幅に減少した後、2024年3月期から2026年3月期まで3期連続で増加しています。

一方、利益の増加がそのまま営業キャッシュ・フローの増加につながっているわけではありません。2024年3月期と2025年3月期には、棚卸資産の増加がそれぞれ222億26百万円、245億96百万円のキャッシュ・フロー減少要因となりました。

2026年3月期には税金等調整前当期純利益が1,838億11百万円となり、減価償却費148億21百万円などが加算される一方、売上債権の増加110億9百万円、仕入債務の減少106億94百万円、法人税等の支払551億10百万円などがキャッシュ・フローを押し下げています。

こうした運転資金や税金支払いの影響を受けながらも、営業キャッシュ・フローは5年間を通じて高水準のプラスを維持しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

設備投資に伴う投資キャッシュ・フローの変化

投資活動によるキャッシュ・フローは、5年間すべての年度でマイナスとなっています。

2022年3月期には、有形固定資産の取得による支出435億76百万円を中心に、投資キャッシュ・フローは435億91百万円のマイナスとなりました。

2023年3月期には投資キャッシュ・フローのマイナス幅が130億77百万円へ縮小し、2024年3月期も164億3百万円のマイナスとなりました。

2025年3月期には有形固定資産の取得による支出が668億61百万円へ拡大し、投資キャッシュ・フローは680億2百万円のマイナスとなりました。会社は主に研究開発用の土地建物などの取得による支出と説明しています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

2026年3月期には投資キャッシュ・フローのマイナス幅が1,357億69百万円へ拡大しています。ただし、その主な要因は1,000億円の定期預金への預入れです。

有形固定資産の取得による支出は351億43百万円で、前年の668億61百万円から減少しています。

したがって、2026年3月期の投資キャッシュ・フローの大幅なマイナスを、そのまま設備投資の拡大と捉えることはできません。この年度は、定期預金への資金移動が投資キャッシュ・フローの金額を大きく左右しています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

財務キャッシュ・フローと株主還元

財務活動によるキャッシュ・フローは、5年間すべての年度でマイナスとなっています。

主な支出は配当金の支払いであり、その金額は2022年3月期の274億1百万円から2026年3月期には453億9百万円へ増加しました。

2026年3月期の財務キャッシュ・フローは450億35百万円のマイナスとなっています。配当金の支払額453億9百万円が中心であり、株式発行による収入3億49百万円などが含まれています。

5年間を通じて、営業活動から得た資金の一部を株主へ還元する資金の流れが継続しています。配当金の決定方針や1株当たり配当額の変化については、「配当政策」で整理します。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

現金及び現金同等物の変化

現金及び現金同等物の期末残高は、2022年3月期末の1,257億71百万円から2025年3月期末には2,291億67百万円へ増加しました。

一方、2026年3月期末には1,845億75百万円となり、前期末から445億91百万円減少しています。

2026年3月期は、営業キャッシュ・フローが1,335億43百万円のプラスであったものの、投資キャッシュ・フローが1,357億69百万円のマイナス、財務キャッシュ・フローが450億35百万円のマイナスとなりました。

ただし、投資キャッシュ・フローには前述の1,000億円の定期預金への預入れが含まれています。

2026年3月期末の連結貸借対照表では、「現金及び預金」は2,845億75百万円と、前期末の2,291億67百万円から増加しています。一方、連結キャッシュ・フロー計算書上の「現金及び現金同等物」は1,845億75百万円です。

この差額1,000億円は定期預金への預入れに対応しており、2026年3月期における現金同等物の減少は、預金を含めた資金保有額そのものの減少とは異なります。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

連結財務諸表注記

事業セグメント

ディスコグループは、5年間を通じて単一セグメントとして開示しており、事業別の報告セグメント情報は省略されています。

精密加工装置、精密加工ツール、保守・サービスを中心とする事業構成は維持されており、対象期間中に報告セグメントの分割や統合は確認されません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

配当政策

業績連動型の配当と余剰資金の追加還元

ディスコは、株主への利益還元を重視し、業績に連動した配当と、将来の事業投資に必要な資金を確保した上での追加配当を組み合わせる方針を採用しています。この基本方針は、2022年3月期から2026年3月期までの5年間を通じて維持されています。

配当政策は2006年に業績連動型へ変更され、2012年には基本となる配当額を「連結半期純利益の25%」とする方針が決定されました。中間配当と期末配当を年2回実施することを基本とし、利益水準にかかわらず半期10円、年間20円の安定配当を維持する考え方も示されています。ただし、連結純利益が3期連続で赤字となる場合には、安定配当額を見直す可能性があります。

この基本配当に加えて、年度末時点で配当金や法人税等を支払った後の現預金残高が、技術特許の購入やベンチャー企業への出資、設備拡張、有利子負債の返済などに必要な予定資金を上回る場合には、余剰資金の3分の1を目安に追加配当として還元する方針です。追加配当は赤字の場合を除いて実施する仕組みとなっています。

このため、ディスコの配当政策は、一定の配当性向だけで年間配当額を決めるものではありません。半期ごとの利益に基づく基本配当を確保しながら、年度末に将来の投資資金と手元資金を確認し、余剰資金があれば追加還元する構造となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

配当額の推移と株式分割の影響

1株当たり年間配当額は、2022年3月期の808円から2023年3月期には916円へ増加しました。その後、2024年3月期は307円、2025年3月期は413円、2026年3月期は505円となっています。

ただし、2023年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割が行われています。有価証券報告書に記載された2022年3月期と2023年3月期の配当額は分割前の金額であるため、そのまま2024年3月期以降と比較することはできません。

決算期年間配当額(有報記載)株式分割調整後の年間配当額(参考・計算値)配当性向
2022年3月期808円約269円47.6%
2023年3月期916円約305円40.4%
2024年3月期307円307円38.2%
2025年3月期413円413円38.6%
2026年3月期505円※505円※41.6%※

※2026年3月期の年間配当額505円は、中間配当129円と、有価証券報告書提出日時点で株主総会決議予定だった期末配当376円の合計です。配当性向41.6%も同報告書記載の数値です。

※2022年3月期と2023年3月期の株式分割調整後の年間配当額は、有報記載の年間配当額を3で除し、円未満を四捨五入した参考値です。

株式分割を考慮すると、年間配当額は2022年3月期の約269円から2023年3月期の約305円へ増加し、2024年3月期には307円とほぼ横ばいとなった後、2025年3月期には413円、2026年3月期には505円へ増加したことになります。

配当性向は2022年3月期の47.6%から2024年3月期には38.2%へ低下しましたが、その後は2025年3月期38.6%、2026年3月期41.6%となっています。基本配当の目安である25%を上回る配当性向が5年間を通じて続いており、基本配当と余剰資金の追加還元を組み合わせる方針が実際の配当にも表れています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

事業投資を優先しながら配当を増加

ディスコは、半導体精密加工装置や精密加工ツールの技術開発、生産能力の拡張などを継続して進めています。こうした事業投資に必要な資金を確保した上で余剰資金を配当へ振り向ける方針は、利益成長と株主還元を両立させるための仕組みとなっています。

対象期間中には、生産設備や研究開発拠点への投資が進み、2025年3月期には研究開発用の土地建物などの取得に伴って有形固定資産の取得による支出が拡大しました。一方、株主還元では、2024年3月期以降の1株当たり年間配当額が307円、413円、505円と増加しています。

また、2022年6月の定時株主総会では、剰余金の配当等を取締役会決議によって決定できるよう定款を変更しました。ただし、期末配当については引き続き株主総会での決定を原則とし、災害等の不測の事態によって株主総会の開催が困難な場合に限り、取締役会で決定する方針を維持しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間を通じて、株主還元の基本的な考え方そのものに大きな変更はありません。連結半期純利益の25%を基本とし、将来の投資に必要な資金を確保した後の余剰資金を追加配当する仕組みを維持しながら、利益の拡大とともに1株当たり配当額も増加しています。株式分割を考慮した年間配当額は、2022年3月期から2026年3月期にかけて約1.9倍となっています。

主要な経営指標等の推移

ディスコの主要な連結経営指標の5年間の推移は、次のとおりです。

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
売上高2,537億81百万円2,841億35百万円3,075億54百万円3,933億13百万円4,368億89百万円
営業利益915億13百万円1,104億13百万円1,214億90百万円1,668億34百万円1,849億89百万円
営業利益率36.1%38.9%39.5%42.4%42.3%
経常利益924億49百万円1,123億38百万円1,223億93百万円1,689億43百万円1,849億36百万円
当期純利益※1662億6百万円828億91百万円842億5百万円1,238億91百万円1,355億21百万円
EPS※2611.67円765.47円777.29円1,143.26円1,249.84円
1株当たり純資産額2,702.98円3,202.14円3,740.04円4,530.86円5,408.11円
総資産額4,045億40百万円4,687億97百万円5,560億58百万円6,540億87百万円7,434億10百万円
純資産額2,938億12百万円3,480億41百万円4,065億60百万円4,927億3百万円5,881億25百万円
自己資本比率72.3%74.0%72.9%75.1%78.9%
ROE※324.3%25.9%22.4%27.6%25.1%
営業CF※4836億54百万円817億83百万円975億24百万円1,203億64百万円1,335億43百万円
投資CF※4△435億91百万円△130億77百万円△164億3百万円△680億2百万円△1,357億69百万円
財務CF※4△271億93百万円△320億90百万円△309億38百万円△381億50百万円△450億35百万円
現金等期末残高※51,257億71百万円1,630億53百万円2,154億86百万円2,291億67百万円1,845億75百万円

※1 当期純利益:親会社株主に帰属する当期純利益

※2 EPS:1株当たり当期純利益。2023年4月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しており、2022年3月期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定されています

※3 ROE:自己資本利益率

※4 営業CF、投資CF、財務CF:それぞれ営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュ・フロー

※5 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高

(有報 2022年3月期〜2026年3月期。連結経営指標は2026年3月期有報の5期比較に基づき、営業利益・営業利益率は各年度の有報から補足)

売上規模の拡大と収益性の変化

5年間の特徴は、売上高の拡大と営業利益率の上昇が同時に進んだことです。売上高は約1.7倍となった一方、営業利益は約2倍に増加しました。

ただし、成長ペースは一定ではありません。2023年3月期から2024年3月期にかけては売上高と営業利益の増加が比較的緩やかだったのに対し、2025年3月期には双方が大きく増加しています。2026年3月期も増収増益を維持しましたが、営業利益率は前期をわずかに下回りました。

最終利益にも年度ごとの違いが見られます。2024年3月期には営業利益が増加した一方、減損損失の影響などによって当期純利益は小幅な増加にとどまりました。その後は2025年3月期、2026年3月期と当期純利益が増加し、EPSも同じ方向に推移しています。

利益の蓄積と資本効率

総資産と純資産は5期連続で増加しました。特に純資産の増加が大きく、自己資本比率は2026年3月期末に78.9%となっています。

一方、ROEは利益の増加と同じ動きにはなっていません。2025年3月期には27.6%まで上昇しましたが、2026年3月期には当期純利益が過去5年間で最高となったにもかかわらず、25.1%へ低下しています。

これは、利益が増加する一方で、利益の蓄積に伴って自己資本も拡大していることを反映しています。5年間では、収益規模の拡大と財務基盤の強化が進む一方、資本効率には年度ごとの変動が見られます。

キャッシュ・フローと資金保有額

営業キャッシュ・フローは5期ともプラスを維持し、2024年3月期から2026年3月期まで3期連続で増加しました。一方、投資キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローは、いずれも5期連続でマイナスとなっています。

2026年3月期には、1,000億円を定期預金へ振り向けたことなどにより、現金及び現金同等物は前期末から445億91百万円減少しました。一方、連結貸借対照表上の現金及び預金は、前期末の2,291億67百万円から2,845億75百万円へ増加しています。

5年間の主要指標には、売上・利益の拡大、自己資本の積み上がり、営業活動による継続的な資金創出という変化が表れています。

5年間を通して

ディスコは、2022年3月期から2026年3月期まで、精密加工装置、精密加工ツール、保守・サービスを中心とする事業構成を維持しました。「切る・削る・磨く」の技術を事業の中核に据える方針も一貫しており、装置、ツール、アプリケーション技術を組み合わせて顧客の加工課題に対応する事業の基本的な方向性に大きな変更はありませんでした。

一方、事業を取り巻く半導体市場では、需要を支える用途が変化しています。2022年3月期には5G、自動車、ロジックIC、メモリなど幅広い分野で需要が拡大しましたが、2023年3月期から2024年3月期にはスマートフォンやPC向けが低迷し、研究開発用途やパワー半導体向けなどが下支えとなりました。その後は生成AI関連の高性能半導体向け需要が存在感を増し、2026年3月期には先端ロジックやHBM向けが高水準となる一方、パワー半導体向けは低調となっています。事業の基本構成を変えることなく、需要の中心が移り変わる市場に対応してきた5年間でした。

経営方針では、Will会計やPIM活動を通じた組織能力の向上を継続し、2025年3月期以降は、自社に製造機能を保有する意義を「Fab Important戦略」としてより明確に説明するようになりました。技術開発と製造現場の連携、多品種少量生産への対応、製造ノウハウの蓄積などを重視する姿勢が示されています。また、研究開発費は5期連続で増加し、生産設備や研究開発拠点への投資も進みました。既存の技術領域を維持しながら、技術開発と製造基盤への資金投入が拡大しています。

財務面では、売上高が5期連続で増加し、営業利益は2022年3月期から2026年3月期にかけて約2倍となりました。営業利益率も36.1%から42.3%へ上昇しています。ただし、増益要因は年度によって異なり、為替影響や高付加価値製品の構成、装置の検収状況などが業績に反映されました。また、2024年3月期には羽田R&Dセンターの建替えに伴う減損損失が最終利益に影響しています。5年間を通じて増収増益が続いた一方、その過程には半導体市場の用途別需要や一過性損失による違いが見られました。

利益の蓄積に伴って純資産は約2倍となり、自己資本比率は2026年3月期末に78.9%まで上昇しました。営業キャッシュ・フローも5期を通じてプラスを維持しています。一方、ROEは2025年3月期の27.6%から2026年3月期には25.1%へ低下しており、利益の拡大とともに自己資本も積み上がったことが資本効率の数値に表れています。

株主還元では、連結半期純利益の25%を基本とし、将来の投資に必要な資金を確保した後の余剰資金を追加配当する方針が維持されました。株式分割を考慮した1株当たり年間配当額は、2022年3月期の約269円から2026年3月期には505円へ増加しています。研究開発や設備投資を進めながら、配当額も増加した5年間となりました。

全体を通じて、ディスコは事業の柱や経営理念を大きく変えることなく、半導体市場の需要構造の変化に対応し、技術開発・製造基盤への投資と収益規模の拡大を進めてきました。その結果として、営業利益率の上昇、自己資本の積み上がり、株主還元の増加が財務数値に表れています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

出典:株式会社ディスコ 有価証券報告書 2022年3月期〜2026年3月期

免責事項

本ページに掲載している財務情報・指標は、有価証券報告書等の公開情報をもとに作成していますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。

本ページの情報は投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任で行ってください。