企業別レビュー
有価証券報告書・5年間レビュー
対象期間:2022年3月期〜2026年3月期
事業の内容
2つの事業を軸とする構成
2022年3月期時点のMARUWAグループは、MARUWA、子会社17社及びその他の関係会社1社で構成され、セラミック部品事業と照明機器事業を展開していました。
セラミック部品事業では、高熱伝導基板、高強度基板、特殊セラミック基板、半導体装置用部品、車載用マグネット製品、医療用製品、水栓用製品、情報通信用製品、アンテナ用製品、ノイズ対策製品などを扱っていました。国内ではMARUWAのほか株式会社MARUWA QUARTZ、株式会社MARUWA CERAMICが製造を担い、海外ではマレーシアの製造・販売会社と、台湾、英国、米国、韓国、中国、インドの販売会社を配置していました。
照明機器事業では、株式会社MARUWA SHOMEIが製造・販売を行い、株式会社YAMAGIWAが株式会社MARUWA SHOMEI及び外部から仕入れた商品の販売を行っていました。主な品目は、LED高輝度照明、LED光源モジュール、施設照明、住環境照明、デザイン照明、調光制御システム、照明空間デザイン・照明設計などです。(有報 2022年3月期)
このセラミック部品事業と照明機器事業の2事業を軸とする構成は、2026年3月期まで維持されています。2025年3月期以降は、グループの事業内容を「半導体・車載・情報通信等セラミック部品及び照明機器等の製造販売」と表現するようになり、セラミック部品の主要な用途分野が冒頭から具体的に示されています。(有報 2025年3月期〜2026年3月期)
セラミック部品事業の国内生産体制を再編
対象期間中の事業構成上の大きな変化は、国内のセラミック部品事業にあります。2022年3月期時点では、株式会社MARUWA CERAMICと株式会社MARUWA QUARTZがセラミック部品の製造会社としてグループ内に存在していましたが、2022年4月1日付で両社はMARUWAに吸収合併されました。
合併後は、MARUWAがMaruwa(Malaysia)Sdn. Bhd.、MARUWA MELAKA SDN.BHD.とともにセラミック部品の製造・販売を担う体制となりました。2023年5月には愛知県瀬戸市に瀬戸工場を新設しています。(有報 2022年3月期〜2024年3月期)
一方、報告セグメントはこの再編後も変更されておらず、セラミック部品事業と照明機器事業という基本構成は継続しています。
セラミック部品事業の製品分野と海外体制
セラミック部品事業では、高熱伝導基板、高強度基板、特殊セラミック基板、半導体装置用部品、情報通信用製品、アンテナ用製品、ノイズ対策製品などが5年間を通じた主要品目となっています。車載関連では、2022年3月期と2023年3月期の「車載用マグネット製品」から、2024年3月期以降はより広い「車載用セラミック製品」へ表現が変わっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
海外では、マレーシアに生産拠点を持つほか、台湾、英国、米国、韓国、中国、インドなどに販売会社を展開してきました。2021年にはドイツ・デュッセルドルフに販売子会社Maruwa Electronics GmbHを設立しており、2026年3月期には同社とMaruwa Electronics Israel Ltd.もセラミック部品の販売会社となっています。
なお、2025年3月期まで製造・販売会社として示されていたMARUWA MELAKA SDN.BHD.は、2026年3月期の「事業の内容」では製造・販売会社の一覧から外れていますが、同年度も連結子会社です。このため、同社の撤退や事業廃止を示すものとは整理していません。
5年間を通じてみると、MARUWAの事業の柱そのものはセラミック部品と照明機器の2事業で変わっていません。その中で、セラミック部品事業では国内製造子会社の吸収合併による体制再編が行われ、海外の販売体制にも広がりが見られます。また、有報上の製品表現も、車載分野では「車載用マグネット製品」から、より広い「車載用セラミック製品」へ変化しています。
事業の状況
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
MARUWAグループは5年間を通じて、「会社の発展、社員の幸福、株主の満足感、社会の豊盛は四位一体である」とする企業理念のもと、技術革新と品質強化を進め、ESG・SDGsを通じた社会貢献によって企業価値の向上を図る方針を維持しています。
中長期的な成長戦略でも、セラミックの材料技術や特性を生かし、成長が期待される市場へ経営資源を集中するとともに、先行的な研究開発・設備投資、高付加価値な差別化製品の開発・生産を進める方向性は一貫しています。
2022年3月期には、脱炭素社会の進展を背景に、EV、光通信、半導体関連市場を成長分野と位置付けていました。セラミック部品事業では、EVの高温・高電圧環境に対応する高強度基板や、次世代高速通信に伴う電子部品の高性能化・小型化への対応を重視していました。優先課題としては、差別化製品の開発、選択と集中による事業拡大、グローバルな組織強化、危機管理体制の強化の4点を掲げています。(有報 2022年3月期)
MARUWAは、この合併について、市場が大きく変化する中で意思統一を迅速に進めるため、素材による分類から市場に適応したカンパニー制へ変更し、最先端技術を融合して市場での競争力を高めることを目的としていたと説明しています。(有報 2022年3月期〜2023年3月期)
この基本的な方向性はその後も維持されました。2024年3月期以降、車載市場については「EV」から「新エネルギー車」という表現へ広がり、成長市場として新エネルギー車、光通信、半導体関連市場への経営資源集中を継続しています。危機管理面では、2022年3月期と2023年3月期に挙げていた新型コロナウイルスへの言及が後に外れ、ウクライナ情勢、さらに中東情勢や自然災害などへ重点が移っています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
2026年3月期には、中長期戦略の冒頭に「生成AIの技術革新」が加わりました。情報通信市場では次世代高速通信に加えて消費電力効率化への需要、半導体市場では半導体製造装置市場の中長期的な拡大を取り上げており、従来の脱炭素を軸とした成長市場に生成AIや半導体・通信分野の技術変化が重なる形となっています。また、重要指標として5年間を通じて売上高営業利益率を掲げていますが、2026年3月期には、その向上策として高付加価値製品の開発、生産性向上、工程改善に加えて「AIを取り入れ」ることが明示されています。(有報 2026年3月期)
サステナビリティに関する考え方及び取組
MARUWAは2022年3月期の段階から、経営方針や事業戦略の中でESG・SDGsや脱炭素社会への対応を掲げていました。2023年3月期から「サステナビリティに関する考え方及び取組」が独立項目となり、気候変動、人的資本、リスク管理などについて、管理体制や指標を含む説明が行われるようになりました。
2023年3月期には、気候変動対策を含むサステナビリティ重要課題を経営の重要な要素とし、取締役会と経営陣・関係部署が連携して分析・協議する体制を示しました。人的資本では、自ら考えて行動できる「プロ人材」の育成と、安全・健康に働ける職場環境の整備を掲げています。2030年度の目標として、有給取得率100%、入社者に占める女性割合50%、外国人材割合50%を設定し、2022年度実績はそれぞれ80%、42%、40%でした。(有報 2023年3月期)
2024年3月期も基本的な枠組みを維持し、有給取得率は91.8%まで上昇しました。一方、入社者に占める女性割合は29.3%、外国人材割合は18.0%となっています。また、社内環境整備では残業ゼロへの取り組みも具体的に示されました。(有報 2024年3月期)
2025年3月期には開示内容が大きく具体化しています。サステナビリティ委員会とリスク管理委員会、それぞれから取締役会への報告・監督の流れが明示され、サステナビリティの実行部門である各工場管理部門とリスク管理担当部署が連携する体制が示されました。
気候変動については、脱炭素社会への移行を、自然災害やエネルギーコスト上昇などのリスクだけでなく、xEV、情報通信、半導体関連製品の事業機会としても捉えています。新たに、GHG排出量(Scope1、2)原単位を2030年度までに2023年度比30%削減、2050年度にカーボンニュートラル、再生可能エネルギー発電量を2030年度までに2023年度比3倍とする目標が示されました。(有報 2025年3月期)
人的資本についても、OJT、社外研修、大学派遣、外国人材の育成などが具体化され、有報上の主要指標は有給取得率と男性育児休業取得率へ変更されています。両指標とも2030年度100%を目標とし、2024年度実績は有給取得率88.1%、男性育児休業取得率25.0%でした。また、自社だけでなくサプライチェーンを含む人権対応も明示されています。(有報 2025年3月期)
2026年3月期には、GHG排出量原単位が0.59tCO2/百万円となり、2023年度比13.2%減少しました。再生可能エネルギー発電量は1,733,434kWhで2023年度の2.13倍となっています。人的資本では、有給取得率が93.8%、男性育児休業取得率が75.0%となり、いずれも前年度から上昇しています。(有報 2026年3月期)
この5年間では、脱炭素や人的資本を重視する基本的な方向性が新たに生じたというより、従来から示されていた考え方について、管理体制、リスクと機会、数値目標、実績へと開示が具体化してきたことが確認できます。
※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。
事業等のリスク
主要なリスクの構成は5年間を通じて大きく変わっていません。MARUWAは、国際情勢や経済状況、個別事業、技術革新、法的リスク、為替、自然災害・感染症を、経営成績や財政状態に影響し得る主要リスクとして挙げています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
グローバルに製造・販売を行うため、各国の経済情勢、市場環境、政策・規制の変更による影響を受ける可能性があります。また、日本とマレーシアで生産し、世界各地で販売していることから、米ドルなど外貨建て取引に伴う為替変動も継続的なリスクとなっています。
セラミック部品事業では、脱炭素、新エネルギー車、電子部品の多機能化・小型化、AI、IoTなどによる市場拡大を想定する一方、景気減速や消費低迷による影響をリスクとして認識しています。技術革新についても、市場変化のスピードが速まる中、他社に対して開発が遅れた場合の影響を挙げ、その対応として数年先を見据えた新製品開発と設備投資を進める方針を継続しています。
照明機器事業では、公共照明や高輝度照明を主要製品とする事業特性から、自然災害や感染症などによる工期遅延をリスクとしています。このほか、新製品開発に伴う知的財産権などの法的リスク、国内外の生産・販売拠点に対する地震、洪水、台風などの自然災害や感染症による操業中断・物流混乱も継続して挙げています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
一方、リスク管理体制の説明はサステナビリティ開示とともに具体化しました。2023年3月期には、リスク管理担当部署がリスクマネジメントを統括し、各拠点の顕在・潜在リスクを取締役会へ毎月報告する仕組みを示していました。2025年3月期以降は、リスク管理委員会とサステナビリティ委員会から取締役会への報告、監督・指示、実務部門へのフィードバックという体制が明確にされています。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
5年間の経営者による業績説明では、セラミック部品事業を取り巻く需要の中心が、EV・新エネルギー車、情報通信、半導体へと移りながら、それぞれの市場の強弱が業績を左右した過程が示されています。
2022年3月期は、新型コロナ禍からの経済活動回復の一方で、サプライチェーンの混乱、ウクライナ情勢、原材料・燃料費の高騰などが生じました。その中で、EV、5G、半導体製造装置への需要が拡大し、セラミック部品事業ではEV向け製品や5G関連の差別化製品が好調に推移しました。売上高は543億44百万円、営業利益は182億15百万円となり、ともに過去最高を更新し、売上高営業利益率は33.5%となりました。(有報 2022年3月期)
2023年3月期は、高インフレや各国の金融引き締め、中国のゼロコロナ政策、急激な為替変動などが事業環境として挙げられています。一部の中国市場向けで受注減速が見られた一方、EVと半導体製造装置向けの需要は堅調でした。購入品や電気料金の上昇に対して、高付加価値品の増加、工程改善、生産性向上を進め、売上高588億4百万円、営業利益201億42百万円と再び過去最高を更新し、売上高営業利益率は34.3%となりました。(有報 2023年3月期)
2024年3月期には、中国経済の回復遅れや米中対立、金融引き締めが続く一方、生成AIをはじめとする新技術の活用が広がる環境認識が加わりました。新エネルギー車向けや半導体製造装置向け、新規市場向けは堅調だった一方、中国通信向け高付加価値製品の本格回復が遅れ、期末には中国関連の滞留債権について引当金を計上しています。売上高は615億64百万円と増加しましたが、営業利益は198億1百万円と前期比1.7%減となりました。(有報 2024年3月期)
2025年3月期は、半導体関連のうち汎用メモリ向けで需要の弱含みが見られた一方、次世代高速通信向けが拡大し、新エネルギー車向けも堅調に推移しました。セラミック部品事業に加えて照明機器事業も増収増益となり、連結売上高718億49百万円、営業利益269億14百万円と過去最高を更新しました。(有報 2025年3月期)
2026年3月期は、生成AI関連の技術進化と投資活発化が続く一方、車載関連では市況が弱含み、半導体関連では下期に見込んでいた汎用メモリ向け需要の回復に期ずれが生じました。一方、次世代高速通信関連は高水準で推移し、第4四半期から次期モデル立ち上げに伴う増産も始まっています。売上高は744億76百万円と前期比3.7%増加しましたが、営業利益は249億76百万円と7.2%減少しました。照明機器事業では、LED需要やオフィス改修、高級新築マンション向け照明などが好調で、売上高・利益とも増加しています。(有報 2026年3月期)
この推移からは、成長市場をEV・新エネルギー車、通信、半導体とする基本戦略を維持しながらも、実際の業績要因は、5Gから次世代高速通信、中国通信市場、半導体製造装置・メモリ、生成AI関連など、年度ごとに変化していたことが確認できます。
資金面では、MARUWAは成長分野への設備投資、研究開発投資、配当、運転資金を主な資金需要とし、主として自己資金で調達する方針を示しています。数年先を見据えた設備投資と研究開発投資を継続する考え方は変わっていません。(有報 2023年3月期〜2026年3月期)
重要な契約等
「経営上の重要な契約等」または「重要な契約等」は、2022年3月期から2026年3月期までの5期すべてで「該当事項はありません」とされています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
研究開発活動
研究開発では、長年培ったセラミックスの材料技術と要素技術を基礎に、脱炭素に適合し、数年先の市場を見据えた製品を開発する方針が5年間を通じて維持されています。
セラミック部品事業では、車載、情報通信、半導体、産業機器の各分野を対象に、放熱性、強度、品質、信頼性に優れた新材料・新製品を開発しています。高熱伝導基板、高強度基板、特殊セラミック基板のほか、GPS・NFCアンテナ、サージ対策部品、ノイズ対策部品などが継続的な開発対象となっています。照明機器事業では、省エネルギー政策に対応した道路照明や、高輝度・高効率のLED施設照明、光を制御するシステムなどの差別化製品を開発しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
研究開発費は、2022年3月期の14億47百万円から、2023年3月期14億29百万円、2024年3月期14億9百万円とほぼ同水準で推移した後、2025年3月期に16億73百万円、2026年3月期には21億4百万円へ増加しています。研究開発の対象分野そのものには大きな変更は見られず、車載・情報通信・半導体などの成長市場を対象とする材料・製品開発を継続しながら、直近2期では研究開発費が増加しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
経理の状況
資産規模の拡大と純資産の積み上がり
2022年3月期末の総資産は958億99百万円、負債は162億18百万円、純資産は796億81百万円で、自己資本比率は83.1%でした。2026年3月期末には、総資産が1,626億91百万円、負債が154億28百万円、純資産が1,472億62百万円となり、自己資本比率は90.5%まで上昇しています。(有報 2022年3月期、2026年3月期)
5年間の資産増加では、現預金の蓄積と設備投資の双方が表れています。現金及び預金は2022年3月期末の446億21百万円から2025年3月期末には717億93百万円まで増加し、2026年3月期末は671億85百万円となりました。
有形固定資産は2022年3月期末の235億24百万円から、2023年3月期末310億46百万円、2024年3月期末367億33百万円、2025年3月期末393億56百万円、2026年3月期末572億77百万円へ増加しています。特に2026年3月期は建設仮勘定が前期末の54億74百万円から163億51百万円へ増加し、固定資産全体も419億95百万円から595億15百万円へ大きく増えました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
一方、負債総額は2022年3月期末の162億18百万円から2026年3月期末の154億28百万円へ大きくは増えていません。2022年3月期末に16億99百万円あった短期・長期の借入金は、その後返済が進み、2024年3月期末には長期借入金がなくなっています。利益剰余金は2022年3月期末の592億74百万円から2026年3月期末には1,226億60百万円まで積み上がっており、資産規模が拡大する一方で純資産の比重も高まっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
売上高の拡大と利益の変動
2022年3月期の連結売上高は543億44百万円、営業利益は182億15百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は133億50百万円でした。2023年3月期は売上高588億4百万円、営業利益201億42百万円、当期純利益150億20百万円へ増加しました。(有報 2022年3月期〜2023年3月期)
2024年3月期は売上高が615億64百万円へ増加した一方、営業利益は198億1百万円と前期を下回りました。この期には販売費及び一般管理費に貸倒引当金繰入額1億23百万円が計上され、期末の貸倒引当金も前期末の9百万円から1億33百万円へ増加しています。「事業の状況」では、中国関連の滞留債権について引当金を計上したことが説明されています。(有報 2024年3月期)
2025年3月期は売上高718億49百万円、営業利益269億14百万円、親会社株主に帰属する当期純利益192億42百万円となり、いずれも前期から大きく増加しました。特別損益では、補助金収入25億92百万円を特別利益に計上する一方、固定資産圧縮損23億60百万円を特別損失に計上しています。
この補助金収入は、主として経済産業省から交付された「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」で、固定資産圧縮損は、この補助金に対応して有形固定資産の取得価額を直接減額したものです。したがって、補助金収入25億92百万円だけを一過性の利益として捉えるのではなく、対応する固定資産圧縮損23億60百万円と合わせて見る必要があります。(有報 2025年3月期)
2026年3月期は売上高が744億76百万円へ増加した一方、営業利益は249億76百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は181億63百万円へ減少しました。売上総利益は前期の394億72百万円から391億58百万円へ減少し、販売費及び一般管理費は125億58百万円から141億82百万円へ増加しており、その結果として営業利益が前期を下回っています。(有報 2025年3月期〜2026年3月期)
5年間を通じてみると、売上高は543億44百万円から744億76百万円へ拡大しています。利益については2022年3月期から2023年3月期に増加し、2024年3月期に営業利益がいったん減少した後、2025年3月期に大きく増加し、2026年3月期は再び減少しています。売上高が継続的に拡大する一方、利益は年度によって増減する推移となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
営業キャッシュ・フローを設備投資へ振り向ける構造
営業活動によるキャッシュ・フローは5年間を通じてプラスを維持しています。2022年3月期は147億57百万円、2023年3月期は156億47百万円、2024年3月期は172億22百万円、2025年3月期は253億51百万円、2026年3月期は169億33百万円の収入でした。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期の35億22百万円の支出から、2023年3月期87億55百万円、2024年3月期108億14百万円へ支出額が拡大しました。2025年3月期は76億82百万円の支出に縮小しましたが、有形固定資産の取得には99億12百万円を支出しており、補助金26億92百万円の受取が投資キャッシュ・フローの支出を抑える要因となっています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)
2026年3月期には、有形固定資産の取得による支出が224億74百万円へ増加し、投資活動によるキャッシュ・フローは217億57百万円の支出となりました。これは5年間で最も大きな投資キャッシュ・アウトとなっています。同時に営業キャッシュ・フローは169億33百万円だったため、投資キャッシュ・フローの支出が営業キャッシュ・フローを上回りました。
財務活動によるキャッシュ・フローは5年間を通じて支出が続き、2022年3月期11億32百万円、2023年3月期18億82百万円、2024年3月期13億63百万円、2025年3月期15億12百万円、2026年3月期12億16百万円の支出となっています。主な内容は借入金の返済と配当金の支払いであり、大規模な外部資金調達は見られません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
現金及び現金同等物の期末残高は、2022年3月期の443億85百万円から、2023年3月期495億85百万円、2024年3月期550億13百万円、2025年3月期715億68百万円まで増加しました。2026年3月期は大規模な設備投資により45億81百万円減少し、669億86百万円となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
この5年間では、営業活動から継続的にキャッシュを生み出しながら設備投資を拡大し、それでも2025年3月期までは現金残高を積み上げていました。2026年3月期には設備投資の規模が一段と大きくなり、投資キャッシュ・フローの支出が営業キャッシュ・フローを上回ったことで、現金残高が減少する形となっています。
財務諸表注記で確認できる主な事項
2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」等を適用しています。これに伴い、照明機器事業の一部取引について、出荷時に収益を認識する方法から、契約上の履行義務が充足された時点で収益を認識する方法へ変更しています。ただし、MARUWAはこの変更による当期損益及び期首利益剰余金への影響は軽微としています。(有報 2022年3月期)
2024年3月期には、前述のとおり貸倒引当金繰入額1億23百万円が計上されています。2025年3月期には、この貸倒引当金繰入額は67百万円となり、2026年3月期末の貸倒引当金残高は8百万円まで減少しています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)
また、固定資産取得に関連する補助金収入と固定資産圧縮損は複数年度で計上されていますが、2025年3月期には補助金収入25億92百万円、固定資産圧縮損23億60百万円と金額が大きくなっています。2026年3月期はそれぞれ42百万円となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
なお、2025年3月期から「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等を適用していますが、MARUWAは当該変更による連結財務諸表への影響はないとしています。(有報 2025年3月期)
配当政策
安定配当と成長投資を並行する基本方針
MARUWAは5年間を通じて、株主への安定的な配当の継続を重視するとともに、新たな成長分野への機動的な設備投資、研究開発の維持・強化、ESG・SDGsへの取組みを充実させることを利益配分の基本方針としています。配当は中間配当と期末配当の年2回を基本としており、この方針は2022年3月期から2026年3月期まで変更されていません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
配当性向やDOEなどの数値目標は基本方針には設けられていません。株主還元だけを独立して優先するのではなく、安定配当と成長分野への設備投資・研究開発を並行して進める考え方となっています。
5年間で毎期8円ずつ増配
1株当たり年間配当額は、2022年3月期の70円から、2023年3月期78円、2024年3月期86円、2025年3月期94円、2026年3月期102円へ増加しました。対象期間の5期はいずれも前期から8円の増配となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
| 決算期 | 中間配当 | 期末配当 | 年間配当 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 34円 | 36円 | 70円 |
| 2023年3月期 | 38円 | 40円 | 78円 |
| 2024年3月期 | 43円 | 43円 | 86円 |
| 2025年3月期 | 47円 | 47円 | 94円 |
| 2026年3月期 | 51円 | 51円 | 102円 |
2026年3月期の有報では、年間配当102円について、上場以来、記念配当を除いて30期の累進配当、2014年3月期から13期連続の増配になったと説明しています。(有報 2026年3月期)
また、2025年3月期の有報では、翌2026年3月期に102円への増配を予定するとともに、「今後も継続的な増配を続けてまいります」とする考え方が示されました。2026年3月期の有報でも、2027年3月期は110円を予定し、上場以来31期の累進配当、14期連続増配を見込むとして、継続的な増配方針を改めて示しています。(有報 2025年3月期〜2026年3月期)
このため、5年間を通じた正式な利益配分の基本方針は「安定的な配当継続」のままですが、直近では、それまで積み重ねてきた増配実績に加えて、今後も継続的に増配する方針がより明確に示されるようになっています。
自己株式取得
株主総会決議または取締役会決議に基づく自己株式取得は、2022年3月期から2026年3月期まで「該当事項はありません」とされています。各期に自己株式の取得はありますが、いずれも会社法第155条第7号に基づく単元未満株式の買取りによるものです。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
したがって、この5年間の株主還元では、自己株式取得ではなく、継続的な現金配当が中心となっています。
主要な経営指標等の推移
5年間の主要指標
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 543億44百万円 | 588億4百万円 | 615億64百万円 | 718億49百万円 | 744億76百万円 |
| 営業利益 | 182億15百万円 | 201億42百万円 | 198億1百万円 | 269億14百万円 | 249億76百万円 |
| 当期利益※1 | 133億50百万円 | 150億20百万円 | 152億16百万円 | 192億42百万円 | 181億63百万円 |
| EPS※2 | 1,082.11円 | 1,217.45円 | 1,233.30円 | 1,559.45円 | 1,472.03円 |
| 純資産額 | 796億81百万円 | 942億15百万円 | 1,092億3百万円 | 1,278億54百万円 | 1,472億62百万円 |
| 総資産額 | 958億99百万円 | 1,080億31百万円 | 1,225億15百万円 | 1,422億85百万円 | 1,626億91百万円 |
| 自己資本比率 | 83.1% | 87.2% | 89.1% | 89.9% | 90.5% |
| ROE※3 | 18.3% | 17.3% | 15.0% | 16.2% | 13.2% |
| 営業CF※4 | 147億57百万円 | 156億47百万円 | 172億22百万円 | 253億51百万円 | 169億33百万円 |
| 投資CF※4 | △35億22百万円 | △87億55百万円 | △108億14百万円 | △76億82百万円 | △217億57百万円 |
| 財務CF※4 | △11億32百万円 | △18億82百万円 | △13億63百万円 | △15億12百万円 | △12億16百万円 |
| 現金等期末残高※5 | 443億85百万円 | 495億85百万円 | 550億13百万円 | 715億68百万円 | 669億86百万円 |
※1 当期利益:親会社株主に帰属する当期純利益
※2 EPS:1株当たり当期純利益
※3 ROE:自己資本利益率
※4 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー
※5 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高
(有報 2026年3月期)
売上高は5年間を通じて拡大し、営業利益も高い水準を維持しましたが、利益は一直線に増加したわけではありません。2024年3月期と2026年3月期には営業利益が前期を下回っており、売上規模の拡大と利益成長が常に同じ動きをしていたわけではないことが分かります。
一方、財務面では純資産の積み上がりが続き、自己資本比率は5年間を通じて上昇しました。借入への依存を高めずに資産規模を拡大しており、財務基盤はより厚くなっています。その反面、ROEは低下傾向にあり、純資産の増加に対して利益成長が追いつかない局面も見られます。
キャッシュ・フローでは、営業活動から毎期安定して資金を生み出す一方、その資金を設備投資へ継続的に振り向けてきました。特に2026年3月期は投資CFの支出が営業CFを上回り、5年間で積み上げてきた現金残高を一部取り崩す形となっています。成長投資を自己資金中心で進めてきたMARUWAの財務運営が、直近ではより強く表れています。
5年間を通して
MARUWAの5年間では、セラミック部品事業と照明機器事業という2つの事業の柱そのものは変わっていません。その一方で、セラミック部品事業では国内製造子会社の吸収合併による体制再編や海外販売体制の拡充が進み、既存の事業基盤を組み替えながら成長市場への対応を強めてきました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
経営戦略では、セラミックの材料技術を軸に、EV・新エネルギー車、情報通信、半導体など成長が期待される市場へ経営資源を集中し、先行的な研究開発と設備投資を行う方向性が一貫しています。実際の業績を左右する市場は5G、中国通信、半導体製造装置、メモリ、次世代高速通信など年度ごとに変化してきましたが、成長市場を見据えて差別化製品を開発する基本的な考え方は維持されています。直近では生成AIの技術革新も事業環境の重要な変化として位置付けられるようになりました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
財務面では、売上規模が拡大する一方で利益は年度によって増減しましたが、営業活動から継続的にキャッシュを生み出し、純資産を積み上げながら設備投資を進めています。特に2026年3月期は投資規模が大きく拡大し、投資キャッシュ・フローの支出が営業キャッシュ・フローを上回りました。借入への依存を高めず、自己資金を中心に成長投資を進めてきた財務運営が、直近ではより明確に表れています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
また、脱炭素や人的資本に対する考え方は、5年間の途中で新たに生じたというより、従来からの方針について管理体制や数値目標、実績の開示が具体化してきました。株主還元では、安定的な配当と成長投資を並行する基本方針を維持し、2026年3月期で上場以来、記念配当を除き30期の累進配当、2014年3月期から13期連続の増配となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)
出典:株式会社MARUWA 有価証券報告書 2022年3月期〜2026年3月期