4568

第一三共

DAIICHI SANKYO COMPANY,LIMITED

業種
医薬品
所属
プライム
会計基準
IFRS
連結・非連結
連結

企業別レビュー

有価証券報告書・5年間レビュー

対象期間:2022年3月期〜2026年3月期

事業の内容

事業構成は5年間を通じて医薬品を中心に維持

第一三共グループは、2022年3月期から2026年3月期まで一貫して、医薬品等の製造販売を主な事業としています。報告セグメントも5年間を通じて単一であり、複数の報告セグメントに区分する事業構成にはなっていません。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

国内では、第一三共本体が医薬品の研究開発・製造・販売を担い、グループ会社が医薬品製造、一般用医薬品、ワクチン、研究開発支援などを担う体制が続いてきました。海外では、米国の第一三共Inc.やアメリカン・リージェントInc.、欧州の第一三共ヨーロッパGmbHとそのグループ会社、中国・ブラジルなどの現地法人を通じて、研究開発・製造・販売を行う構成が維持されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

国内グループでは再編が進行

5年間の中で目立つ変化は、国内グループ会社の再編です。2022年3月期には、第一三共エスファ、第一三共プロファーマ、第一三共ケミカルファーマ、第一三共バイオテック、第一三共RDノバーレなどが連結子会社として、それぞれ医薬品の研究開発、製造、販売などを担っていました。(有報 2022年3月期)

2024年4月には第一三共エスファの株式の一部をクオールホールディングスへ譲渡し、同社は持分法適用関連会社となりました。2025年3月期の「事業の内容」では、第一三共エスファが連結子会社としての記載から外れています。(有報 2025年3月期)

さらに2025年4月には、医薬品製造を担っていた第一三共プロファーマと第一三共ケミカルファーマを第一三共本体が吸収合併しました。この結果、2026年3月期には両社はグループ会社としての記載から外れ、第一三共本体が医薬品の研究開発・製造・販売を担う体制となっています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

こうした再編に伴い、グループを構成する会社数は、2022年3月期の52社から2026年3月期には45社へ減少しました。国内の会社数も13社から7社へ減少しています。一方で、医薬品を中心とする事業そのものが縮小したというより、第一三共エスファの持分変更や製造子会社の吸収合併などにより、グループ内の法人構成が整理されたことが確認できます。(有報 2022年3月期、2026年3月期)

海外では研究開発・製造・販売の体制を継続

海外事業の基本的な構造には大きな変更は見られません。米国では第一三共Inc.が研究開発・販売を、アメリカン・リージェントInc.が研究開発・製造・販売を担い、欧州では第一三共ヨーロッパGmbHを中心に各国で研究開発・製造・販売を行っています。中国やブラジルなどでも現地法人を通じた事業を継続しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

海外の会社数は2022年3月期の39社から、2025年3月期には41社となった後、2026年3月期には38社となっていますが、米国・欧州・アジアなどに事業拠点を置くグローバルな医薬品事業の基本構造は維持されています。(有報 2022年3月期、2025年3月期、2026年3月期)

2026年3月期時点では、さらに国内事業の構成変更が予定

2026年3月期の有価証券報告書では、第一三共ヘルスケアの全株式をサントリーホールディングスへ譲渡することを決議し、2026年4月に株式譲渡契約を締結したことが記載されています。株式譲渡は段階的に実施され、2029年度中に完了する予定とされています。また、第一三共ビジネスアソシエについても、2027年10月を効力発生日として第一三共が吸収合併する基本方針が決議されています。いずれも2026年3月期末時点の事業構成そのものを変更したものではありませんが、国内グループ会社の再編が今後も続く計画となっています。(有報 2026年3月期)

5年間を通してみると、第一三共グループの中心が医薬品事業である点や、米国・欧州・アジアなどに研究開発・製造・販売拠点を置く基本構造は維持されています。その一方、国内では持分変更や子会社の吸収合併が進み、法人単位ではより集約された構成へ変化しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

事業の状況

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

第5期中期経営計画ではDXd ADCを成長の中心に位置付け

2022年3月期から2025年3月期にかけて、第一三共グループは第5期中期経営計画(2021年度〜2025年度)のもと、ESG経営を実践しながら、2025年度目標である「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」の実現を目指していました。その先には、「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」という2030年ビジョンを置いています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

この期間の戦略の中心となったのが、第一三共独自のDXd技術を用いたADCです。ADC(Antibody Drug Conjugate、抗体薬物複合体)は、標的となる細胞に結合する抗体と薬物を組み合わせ、薬物を標的細胞へ届けることを目的とした医薬品です。第一三共は、エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、T-DXd)、Dato-DXd(ダトポタマブ デルクステカン)、HER3-DXd(パトリツマブ デルクステカン)の3製品を「3ADC」と位置付け、その製品価値最大化を第5期中期経営計画の最重要課題としていました。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

エンハーツとDato-DXdではアストラゼネカとの戦略的提携を通じて開発・市場浸透を進め、HER3-DXdについても上市に向けた開発を進めていました。同時に、「既存事業・製品の利益成長」「更なる成長の柱の見極めと構築」「ステークホルダーとの価値共創」を戦略の柱としていました。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

計画が進むにつれて、エンハーツの市場浸透や適応拡大は当初計画を上回るペースで進みました。2023年3月期以降は、第5期中期経営計画策定時より売上収益やがん領域売上収益の見通しを引き上げる一方、DXd ADCへの研究開発投資や供給体制強化に向けた設備投資の規模も拡大しています。成長投資と株主還元の双方をバランスよく実施するという資金配分の基本方針は維持されました。(有報 2023年3月期〜2025年3月期)

3ADCから5DXd ADCsへ開発対象が拡大

2023年10月には、HER3-DXdに加え、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)とDS-6000の3製品について、米国メルクとグローバルな開発・商業化契約を締結しました。HER3-DXdは従来の3ADCに含まれていたため、開発対象の拡大という点では、I-DXdとDS-6000の2製品が新たに加わった形です。(有報 2024年3月期)

これにより、従来のエンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADCに、I-DXdとDS-6000を加えた5製品が「5DXd ADCs」として位置付けられるようになりました。研究開発戦略も、3ADCを中心とした「3 and Alpha」から、5つのDXd ADCの製品価値最大化と次の成長候補の創出を並行して進める「5DXd ADCs and Next Wave」へと広がっています。(有報 2024年3月期、2025年3月期)

第5期中期経営計画の期間を通じて、がん領域とDXd ADCに経営資源を重点配分する方向性は維持されています。その一方、当初の3ADCを中心とした開発体制から5DXd ADCsへ対象が広がり、既存製品の成長とその先の創薬技術・製品群の創出を並行して進める構成へ変化しました。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

2026年3月期に第6期中期経営計画を策定

2026年3月期には、第5期中期経営計画で掲げていた2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現したとの認識を示し、新たに2035年ビジョンとして「Trusted healthcare innovator transforming the lives of people through our science and technology」を掲げました。従来の2030年ビジョンは、2030年度に向けた具体的な目標として位置付け直されています。(有報 2026年3月期)

第6期中期経営計画(2026年度〜2030年度)では、2030年度の計数目標として売上収益3兆円以上、営業利益6,000億円以上、EPS260円以上を掲げています。戦略面では、DXd ADCの製品価値最大化によって2035年にグローバルトップ5のオンコロジー企業を目指すこと、2030年までにDXd ADCに続く新たなBGTs(Breakthrough Generating Technologies)を特定することなどが示されています。BGTsは、より革新的な医薬品を患者へ迅速に届けるための創薬技術プラットフォームと説明されています。(有報 2026年3月期)

5年間で見ると、がん領域とDXd ADCを成長の中心に置く方向性は一貫しています。その一方、3ADCの開発・上市を中心とした段階から5DXd ADCsへ対象を広げ、さらにDXd ADCに続く新たな創薬技術を探索する段階へと戦略の対象が拡大しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

サステナビリティに関する考え方及び取組

第一三共グループは、2022年3月期の時点で、ESGの要素を経営戦略に反映し、財務的価値と非財務的価値の双方を高める長期的な経営を「ESG経営」と定義していました。中長期的な企業価値への影響と社会からの期待の両面からマテリアリティを特定し、第5期中期経営計画と連動した長期目標やKPIを設定しています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

その後の開示では、気候変動、人権、環境、人的資本、サプライチェーンなどについて、管理体制や目標、実績の説明が具体化しています。気候変動については、Scope1・2の削減目標を1.5℃水準へ引き上げ、Scope3についてもサプライヤーに求めるCO2排出量削減目標を1.5℃水準へ更新し、2023年6月にはSBTイニシアチブから「1.5℃目標」の認証を取得しました。(有報 2024年3月期)

2025年3月期には、サステナビリティコミッティで環境・安全衛生、ネットゼロ移行計画、サステナビリティ情報開示、人権アセスメントなどが議論され、その内容の一部が経営会議へ報告される体制が示されています。2026年3月期には、第6期中期経営計画とサステナビリティ関連の方針を結び付け、重要課題に基づく戦略について指標・目標を設定する考え方が示されています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

サステナビリティは5年間の途中で新たに経営課題となったものではなく、2022年3月期の時点ですでに経営戦略の一部として位置付けられていました。その後、気候変動、人権、情報開示など個別テーマに関する管理体制や目標の開示が具体化したと整理できます。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。

事業等のリスク

研究開発と戦略的提携が事業上の主要リスク

医薬品事業では、新薬候補品の研究開発に多額の費用と長い期間を要する一方、期待した有効性・安全性が得られないこと、承認が得られないこと、上市や販売計画が遅れることなどが継続して主要なリスクとして挙げられています。また、第三者との共同開発・販売提携について、契約条件の変更や終了などが業績に影響する可能性も認識されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

このリスクは、DXd ADCへの経営資源集中に伴って具体化しています。2022年3月期には3ADCの開発が中心でしたが、2024年3月期にはアストラゼネカとの提携に加え、米国メルクとの3つのDXd ADCに関する提携もリスク説明に組み込まれました。会社は、共同委員会を通じて提携先との戦略、投資判断、損益、主要マイルストーン、上市準備などを管理するとしています。(有報 2022年3月期、2024年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期には、ADC市場における競合品の上市、既存薬の適応拡大、次世代技術の台頭、各国の薬価抑制策や治療ガイドラインの変更など、外部環境の変化もより具体的に示されています。また、ADC製品の安定供給のため複数の製造委託先と長期契約を締結しており、生産計画と実際の需要の変動なども事業上のリスクとして認識されています。(有報 2026年3月期)

グローバル展開に伴うリスク

海外で研究開発・製造・販売を展開していることから、政治・経済情勢、地政学的要因、各国の法規制や行政対応、労使関係なども継続的なリスクとして挙げられています。為替変動についても、海外での生産・販売・輸出入を行う中で、業績や財政状態に影響し得る要因として認識されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

品質・安定供給と情報セキュリティ

医薬品の品質や安全性、製造・供給の継続も継続して主要なリスクです。品質面ではGMPやGDPに基づく管理、グループ会社やビジネスパートナーへの監査、安全性情報の収集・評価などを通じて対応しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

ITシステムの停止、サイバー攻撃、機密情報や個人情報の漏洩についても継続してリスクとして認識されています。5年間を通じて、情報管理に関する規程の整備、従業員教育、防御・検知・対処機能の強化などが行われています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

リスク管理体制

リスク管理では、各組織がリスクの抽出、評価、対応策の策定・実行を行い、グループ全体でリスクを管理する体制が継続しています。BCPやクライシスマネジメントも組み合わせ、リスクが顕在化した場合の事業継続や早期復旧までを対象としています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間で見ると、研究開発、品質・安全性、海外事業、為替、情報セキュリティなど医薬品企業としての基本的なリスクは継続しています。その一方、DXd ADCへの経営資源集中や外部企業との大型提携が進んだことで、特定製品群の開発・承認・上市、提携先との協業、ADCの供給体制や競争環境といったリスクの記載がより具体化しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

経営者による業績説明では、5年間を通じてエンハーツの成長が売上収益拡大の主要因として繰り返し挙げられています。2022年3月期にはリクシアナやエンハーツなどの伸長が増収要因となり、その後はエンハーツの市場浸透、上市地域の拡大、適応拡大による売上増加がより大きな影響を持つようになりました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

同時に、エンハーツに関するアストラゼネカとのプロフィット・シェアに伴う販売費及び一般管理費や、DXd ADCへの研究開発費も増加しています。経営者の説明では、売上拡大だけでなく、将来の成長に向けた研究開発・販売活動への支出も拡大していることが示されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

為替については、円安が売上収益を押し上げた年度があり、各年度の業績説明で為替影響が区分して示されています。このため、売上収益の増加は製品の成長だけによるものではなく、為替の影響も含むものとして説明されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期は、売上収益や一過性要因を除いたコア営業利益が増加する一方、製造委託先への損失補償等を一過性費用として計上したことから、IFRS上の営業利益は前期比で減少しました。会社は、経常的な収益性を示す指標として、一過性の収益・費用を除いたコア営業利益も開示しています。(有報 2026年3月期)

5年間の経営者による説明を通じて、エンハーツを中心とするDXd ADCの売上拡大と、それに対応した研究開発・販売・供給への投資拡大が並行して進んだことが確認できます。個々の財務数値と一過性損益については「経理の状況」で改めて整理します。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

重要な契約等

5年間で事業戦略上の大きな変化につながった契約として、DXd ADCをめぐる外部企業との提携があります。エンハーツについては2019年から、Dato-DXdについては2020年からアストラゼネカと全世界で共同開発・販売を行う体制が続いています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2023年10月には、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000について、米国メルクとグローバルな開発・商業化契約を締結しました。両社が日本を除く全世界で共同開発・商業化を進め、第一三共が3製品の製造・供給を担う契約です。この提携により、第一三共のDXd ADCの共同開発体制は、アストラゼネカとのエンハーツ、Dato-DXdに加え、米国メルクとの3製品を含む5DXd ADCsへ広がりました。(有報 2024年3月期)

さらに2024年8月には、米国メルクが開発していたMK-6070についても、両社の共同開発・商業化の枠組みに追加しています。(有報 2025年3月期)

これらの契約は、DXd ADCの開発・商業化を外部企業との提携を通じて加速するという第一三共の戦略に位置付けられています。契約に伴う財務上の影響については「経理の状況」で扱います。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

研究開発活動

研究開発では、2022年3月期にエンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADCへリソースを集中しながら、その先の成長候補を創出する「3 and Alpha」戦略を進めていました。研究開発費は2022年3月期の2,602億円から、2023年3月期3,416億円、2024年3月期3,652億円、2025年3月期4,360億円、2026年3月期4,660億円へ拡大しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2024年3月期には、従来の3ADCにI-DXdとDS-6000が加わり、研究開発の重点は5DXd ADCsへ拡大しました。これに伴い、研究開発戦略も「5DXd ADCs and Next Wave」となっています。エンハーツとDato-DXdはアストラゼネカと、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000は米国メルクと共同で開発する体制となりました。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

一方、研究開発の対象をDXd ADCだけに限定しているわけではありません。5年間を通じて、がん以外の疾患も含め、ADC、核酸医薬、遺伝子治療など複数のモダリティを活用した次の成長候補の創出を目指す方針が示されています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期に策定された第6期中期経営計画では、DXd ADCの製品価値最大化を続ける一方、2030年までにDXd ADCに続く新たなBGTsを特定することを戦略目標としました。第5期中期経営計画でDXd ADCの開発対象を3製品から5製品へ広げてきた段階から、既存のDXd ADC群を成長させながら、次世代の創薬技術を探索・育成する段階へ研究開発の重点が広がっています。(有報 2026年3月期)

経理の状況

連結財政状態計算書

総資産が拡大し、2024年3月期には契約負債が大きく増加

第一三共グループの総資産は、2022年3月期の2兆2,214億円から、2023年3月期には2兆5,089億円、2024年3月期には3兆4,611億円へ拡大しました。2025年3月期は3兆4,561億円とほぼ横ばいでしたが、2026年3月期には3兆9,963億円となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

特に大きな変化が生じたのが2024年3月期です。2023年10月に米国メルクとHER3-DXd、I-DXd、DS-6000の3つのDXd ADCについてグローバルな開発・商業化契約を締結し、返還義務のない契約一時金30億米ドルを受領しました。この契約一時金は受領時に全額を収益とするのではなく、製造・供給などの履行義務の充足に応じて一定期間にわたり収益として認識されます。そのため、未だ収益として認識していない部分が契約負債として計上されています。(有報 2024年3月期)

連結上の契約負債は、2023年3月期末の3,211億円から2024年3月期末には7,376億円へ増加しました。2024年3月期末の契約負債のうち、流動負債が574億円、非流動負債が6,802億円であり、米国メルクとの契約一時金がその主な要因とされています。その後、製造・供給などの履行義務の充足に伴って契約負債の一部を売上収益へ振り替える一方、新たな契約一時金等の受領も続いたため、契約負債の期末残高は2025年3月期末に8,190億円、2026年3月期末には8,812億円へ増加しました。2026年3月期には、期首の契約負債のうち682億円が売上収益として認識されており、既存の契約について収益認識が進む一方、新たな対価の受領によって契約負債全体は増加していることが確認できます。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

一方、親会社の所有者に帰属する持分は2022年3月期の1兆3,509億円から2024年3月期には1兆6,882億円まで増加しましたが、2025年3月期は1兆6,234億円へ減少しました。この年度には自己株式の取得による2,461億円の資本減少があり、利益の積み上げと並行して株主還元による資本の減少も生じています。2026年3月期には当期利益の計上などにより1兆6,840億円へ増加した一方、自己株式の取得1,505億円も実施されています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期にはADC製造委託に関する引当金が大きく増加

2026年3月期には、引当金が2025年3月期末の188億円から2,144億円へ大きく増加しました。このうち1,695億円は、ADC製品の製造委託に関する損失補償引当金です。(有報 2026年3月期)

第一三共はADC製品の一部を複数の製造委託先(CMO)へ委託しており、契約には年別の最低購入義務が設定されています。2026年3月期に臨床試験結果などを踏まえて供給計画を見直した結果、発注見込数量と最低購入義務との間に差異が生じ、将来支払う可能性が高い損失補償額として1,695億円を計上しました。実際の補償額は、今後の発注数量や製造キャパシティの第三者への再配分、CMOとの協議結果などによって変動する可能性があるとされています。(有報 2026年3月期)

これは「事業の状況」の事業等のリスクで確認した、ADCの需要変動や製造委託契約に伴う供給面のリスクが、実際に財務諸表上の引当金として表れた事例です。(有報 2026年3月期)

連結損益計算書

売上収益は5年間で約2倍に拡大

売上収益は、2022年3月期の1兆449億円から2023年3月期1兆2,785億円、2024年3月期1兆6,017億円、2025年3月期1兆8,863億円、2026年3月期2兆1,230億円へ増加しました。5年間でおよそ2倍の規模となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

この間、エンハーツを中心とする製品売上が拡大するとともに、アストラゼネカや米国メルクとの共同開発・商業化契約に基づく技術料収入も売上収益に含まれています。2026年3月期の売上収益2兆1,230億円のうち、医療用医薬品やヘルスケア品などの販売による収益が1兆8,540億円、技術料収入が1,902億円となっています。(有報 2026年3月期)

利益面では、2022年3月期の営業利益730億円から、2023年3月期1,206億円、2024年3月期2,116億円、2025年3月期3,319億円へ拡大しました。親会社の所有者に帰属する当期利益も、2022年3月期670億円から2025年3月期2,958億円へ増加しています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

研究開発費と販売費も事業拡大に伴って増加

売上収益の拡大と並行して、研究開発費や販売費及び一般管理費も増加しています。連結損益計算書上の研究開発費は2022年3月期2,602億円から、2023年3月期3,416億円、2024年3月期3,652億円、2025年3月期4,360億円、2026年3月期4,660億円となりました。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

DXd ADCの開発対象が3ADCから5DXd ADCsへ広がったことや、グローバルでの臨床開発を進めていることが研究開発活動として説明されており、売上規模の拡大とともに研究開発への投入額も大きくなっています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

2026年3月期は売上増加の一方で営業利益が減少

2026年3月期は、売上収益が前期比12.6%増の2兆1,230億円となった一方、営業利益は22.3%減の2,580億円、税引前利益は17.8%減の2,924億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5.4%減の2,797億円となりました。(有報 2026年3月期)

会社が経常的な収益性を示す指標としているコア営業利益は、前期の3,128億円から3,889億円へ24.3%増加しています。一方、一過性の費用は前期の31億円から1,530億円へ増加しており、会社は製造委託先への損失補償等を一過性費用として計上したことが営業利益減少の要因であると説明しています。(有報 2026年3月期)

このため、2026年3月期は、通常の事業活動を示すコア営業利益が増加する一方、一過性費用の大幅な増加によってIFRS上の営業利益は減少するという動きになりました。

連結キャッシュ・フロー計算書

米国メルクとの契約が2024年3月期の営業CFを大きく押し上げ

営業活動によるキャッシュ・フローは、2022年3月期1,392億円、2023年3月期1,145億円でしたが、2024年3月期には5,993億円へ大きく増加しました。(有報 2022年3月期〜2024年3月期)

2024年3月期の営業CFでは、契約負債の増加による4,161億円のプラスが生じています。会社も、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000について米国メルクから受領した戦略的提携の契約一時金を営業CF増加の要因として説明しています。(有報 2024年3月期)

ここでは、米国メルクとの契約による財務への影響が、損益とキャッシュ・フローで異なる形で表れています。契約一時金は現金として先に受領したため営業CFを大きく押し上げましたが、損益上は全額をその年度の売上収益とせず、未認識部分を契約負債として計上し、履行義務の充足に伴って収益へ振り替えています。(有報 2024年3月期)

2025年3月期の営業CFは538億円へ減少しました。税引前利益は増加していたものの、営業債権や棚卸資産など運転資金の増加がキャッシュ・フローを押し下げています。契約負債はさらに814億円増加しましたが、前年の米国メルクとの契約締結時のような大幅な増加ではありませんでした。(有報 2025年3月期)

2026年3月期の営業CFは777億円となりました。損失補償引当金などの増加により引当金は1,957億円増加していますが、引当金の計上は将来の支払いに備えた会計上の認識であり、その全額が当期中の現金支出となったものではありません。一方、棚卸資産は1,727億円増加しており、営業CFを押し下げる方向に作用しています。(有報 2026年3月期)

成長投資と株主還元の双方で資金を使用

投資活動によるキャッシュ・フローでは、DXd ADCの供給体制強化などを背景に、有形固定資産の取得による支出が2024年3月期883億円、2025年3月期1,163億円、2026年3月期1,284億円となっています。無形資産の取得も行われており、研究開発だけでなく製造・供給体制にも資金が投入されています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

一方、財務活動では株主還元による支出が拡大しました。2025年3月期には自己株式取得による支出2,461億円と配当金支払1,143億円などにより、財務活動によるCFは3,778億円の支出となりました。2026年3月期も自己株式取得1,505億円、配当金支払1,284億円がありましたが、社債発行による3,000億円の収入もあり、財務活動によるCFは979億円の支出となっています。(有報 2025年3月期、2026年3月期)

現金及び現金同等物は、2024年3月期末の6,472億円、2025年3月期末の6,398億円から、2026年3月期末には4,498億円となりました。2026年3月期には成長投資、株主還元、運転資金への資金需要が続く中で、社債による資金調達も行われています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

財務諸表注記から見る重要な変化

米国メルクとの契約は「現金受領」と「収益認識」の時期が異なる

「事業の状況」の重要な契約等で確認した米国メルクとの3つのDXd ADCに関する契約は、財務諸表上でも大きな変化をもたらしました。

2024年3月期に受領した返還義務のない契約一時金30億米ドルは、受領した時点ですべて売上収益として認識されるものではありません。第一三共は、ライセンスの供与と製造・供給サービスを各製品について単一の履行義務と判断しており、契約一時金を履行義務の充足期間にわたって技術料収入として認識しています。(有報 2024年3月期)

その結果、2024年3月期には契約によって多額の現金が流入し営業CFが大きく増加する一方、未認識の収益は契約負債としてバランスシートに残りました。契約負債はその後も2025年3月期8,190億円、2026年3月期8,812億円となっており、今後の履行義務の充足に伴って収益へ振り替えられる構造となっています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

ADC供給リスクが損失補償引当金として顕在化

「事業の状況」の事業等のリスクでは、ADC製品の安定供給に向けて複数の製造委託先と長期契約を締結しており、契約上の最低購入義務と実際の需要との差がリスクとなることを確認しました。

このリスクは2026年3月期に財務数値へ表れています。臨床試験結果などを踏まえた供給計画の見直しにより、製造委託先との最低購入義務との差異が生じたため、ADC製品の製造委託に関して1,695億円の損失補償引当金が計上されました。(有報 2026年3月期)

会社は、将来の需要予測、発注見込数量、製造キャパシティを第三者へ再配分できる可能性などを前提として損失補償額を見積もっています。このため、実際の支払額や支払時期は現時点で確定していません。2026年3月期は、事業上のリスクとして認識されていたADCの需要・供給計画と製造委託契約の関係が、引当金と一過性費用という形で財務諸表に具体的に表れた年度となっています。(有報 2026年3月期)

5年間の財務面での変化

2022年3月期から2026年3月期にかけて、売上収益は1兆円強から2兆円を超える規模へ拡大し、DXd ADCを中心とする事業成長に伴って研究開発費や設備投資も増加しました。

その過程で、2024年3月期には米国メルクとの大型提携により、多額の契約一時金が営業CFと契約負債に表れました。現金の受領と売上収益の認識時期が異なるため、この契約についてはキャッシュ・フローと損益を分けて捉えられる構造になっています。

一方、2026年3月期にはADCの供給計画見直しに伴う損失補償引当金が計上され、売上収益とコア営業利益が増加する中でも、IFRS上の営業利益は減少しました。5年間を通じて、DXd ADCの成長に伴う売上・研究開発・設備投資の拡大だけでなく、提携契約による契約負債や製造委託契約に伴う引当金など、事業戦略に関連する契約上の影響も財務諸表に大きく表れるようになっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

配当政策

安定配当を基本としながら利益成長に応じた増配へ

第一三共は、株主への利益還元を経営上重要な施策の一つと位置付け、成長投資、社債の償還準備、株主還元などを総合的に勘案した上で、配当を安定的に維持することを基本方針としてきました。内部留保については、研究開発、事業開発、設備投資、運転資金など、持続的な企業価値向上に向けた成長投資へ充当する方針です。また、中間配当と期末配当の年2回を基本としています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

第5期中期経営計画では、普通配当1株当たり27円を維持した上で、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を行う方針を掲げました。株主還元のKPIとしてDOE(株主資本配当率)を採用し、2025年度に8%以上とする目標を設定しています。DOEは、株主資本に対してどの程度の配当を行っているかを示す指標で、単年度の利益だけではなく株主資本を基準に配当水準を設定する考え方です。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

2022年度には、エンハーツの売上収益が当初計画を上回って拡大したことを受け、増配時期を前倒しして年間配当を27円から30円へ引き上げました。2023年度は50円、2024年度は60円へ増配し、第5期中期経営計画の期間を通じて利益成長に応じた増配が続いています。(有報 2023年3月期〜2025年3月期)

年間配当は27円から78円へ増加

決算期1株当たり年間配当
2022年3月期27円
2023年3月期30円
2024年3月期50円
2025年3月期60円
2026年3月期78円

2022年3月期の年間配当27円に対し、2026年3月期は78円となり、5年間で配当額は大きく増加しました。2026年3月期は中間配当39円、期末配当39円の年間78円を予定しており、有価証券報告書提出時点では期末配当39円は定時株主総会への提案事項となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

第5期中期経営計画では、当初2025年度のDOE目標を8%以上としていましたが、2025年3月期の有価証券報告書では、業績の進捗を踏まえて2025年度の年間配当を78円とし、DOE8.5%以上の達成を見込むとしています。配当額の増加とともに、株主資本に対する配当水準も引き上げる方向へ変化しました。(有報 2025年3月期)

自己株式取得も株主還元に活用

配当に加えて、自己株式取得も株主還元の手段として活用されています。特に2024年度には、株主還元の充実と資本効率の向上を目的として2回の自己株式取得が行われました。2024年4月から2025年1月にかけて約3,871万株、約2,000億円を取得し、2025年3月から4月にかけては約1,397万株、約500億円を取得しています。(有報 2025年3月期)

このため、第5期中期経営計画後半では、配当の増加だけでなく、自己株式取得を組み合わせた株主還元が拡大しました。一方で、成長投資と株主還元をバランスよく行うというキャッシュ・アロケーションの基本方針は維持されています。(有報 2022年3月期〜2025年3月期)

第6期中期経営計画では累進配当を導入

第6期中期経営計画では、株主還元方針がさらに変更されました。従来の「利益成長に応じた増配」から、配当を原則として維持または増配し続ける「累進配当」を導入し、株主還元をより安定的・継続的なものとする方針を明確にしています。(有報 2026年3月期)

あわせて、配当水準を判断する指標も、従来のDOEから「調整後DOE」へ変更されました。調整後DOEは、株主資本から、株価や為替などによって変動する「その他の資本の構成要素」を除いた調整後株主資本を基準として算出するDOEです。第6期中期経営計画では、各年度の調整後DOEを10.0%以上とすることを配当水準の指標としています。(有報 2026年3月期)

自己株式取得についても株主還元の選択肢として維持されていますが、第6期中期経営計画では累進配当を最優先とし、その上で財務状況や市場環境などを総合的に勘案して機動的に実施する方針となっています。(有報 2026年3月期)

5年間で見ると、株主還元の基本にある「成長投資とのバランス」と「安定的な配当」という考え方は維持されています。その一方、実際の年間配当は27円から78円へ増加し、自己株式取得も拡大しました。さらに第6期中期経営計画では、利益成長に応じた増配という方針から、配当を原則として維持または増配する累進配当へ移行し、調整後DOE10.0%以上を目安とする、より明確な配当方針へ変化しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

主要な経営指標等の推移

売上規模と利益の推移

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
売上収益1兆449億円1兆2,785億円1兆6,017億円1兆8,863億円2兆1,230億円
税引前利益735億円1,269億円2,372億円3,556億円2,924億円
当期利益※1670億円1,092億円2,007億円2,958億円2,797億円
EPS※234.94円56.96円104.69円155.96円151.17円
ROE※35.1%7.8%12.8%17.9%16.9%

※1 当期利益:親会社の所有者に帰属する当期利益
※2 EPS:基本的1株当たり当期利益
※3 ROE:親会社所有者帰属持分当期利益率

売上収益は5期連続で増加し、2022年3月期の1兆449億円から2026年3月期には2兆1,230億円となり、5年間で約2倍の規模に拡大しました。親会社の所有者に帰属する当期利益も2022年3月期の670億円から2025年3月期には2,958億円まで増加しています。(有報 2026年3月期)

2026年3月期は売上収益が引き続き増加した一方、税引前利益と親会社の所有者に帰属する当期利益は前期を下回りました。基本的1株当たり当期利益も155.96円から151.17円へ低下し、ROEは17.9%から16.9%となっています。2026年3月期の利益減少には、「経理の状況」で確認したADC製造委託に関する損失補償等の一過性費用が含まれています。(有報 2026年3月期)

資産・資本とキャッシュ・フローの推移

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
総資産額2兆2,214億円2兆5,089億円3兆4,611億円3兆4,561億円3兆9,963億円
親会社持分※41兆3,509億円1兆4,459億円1兆6,882億円1兆6,234億円1兆6,840億円
親会社持分比率※560.8%57.6%48.8%47.0%42.1%
営業CF※61,392億円1,145億円5,993億円538億円777億円
投資CF※62,123億円△2,578億円△2,826億円3,342億円△1,482億円
財務CF※6△862億円△896億円△1,236億円△3,778億円△979億円
現金等期末残高※76,625億円4,419億円6,472億円6,398億円4,498億円

※4 親会社持分:親会社の所有者に帰属する持分
※5 親会社持分比率:親会社所有者帰属持分比率
※6 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー
※7 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高

総資産は2022年3月期の2兆2,214億円から2026年3月期には3兆9,963億円へ拡大しました。特に2024年3月期に大きく増加しており、同年度には米国メルクとの契約に伴う契約一時金の受領と契約負債の増加が生じています。(有報 2026年3月期)

親会社の所有者に帰属する持分は5年間で増加した一方、総資産の増加幅の方が大きく、親会社所有者帰属持分比率は60.8%から42.1%へ低下しました。2024年3月期以降は契約負債の増加、2026年3月期には引当金や社債及び借入金の増加も財政状態に表れています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

キャッシュ・フローは年度による振れが大きく、営業活動によるキャッシュ・フローは2024年3月期に5,993億円へ大きく増加した後、2025年3月期538億円、2026年3月期777億円となりました。2024年3月期の大幅な増加には米国メルクとの戦略的提携による契約一時金の受領が含まれており、通常の製品販売による資金流入だけで生じた増加ではありません。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

財務活動によるキャッシュ・フローは5期とも支出となっており、特に2025年3月期は自己株式取得や配当金の支払いなどにより3,778億円の支出となりました。現金及び現金同等物の期末残高は年度ごとに増減し、2026年3月期末は4,498億円となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間の主要指標を通して見ると、売上収益と利益は2025年3月期まで大きく拡大し、2026年3月期も売上規模は拡大を続けました。一方、2024年3月期以降は大型提携に伴う契約一時金、自己株式取得、ADC製造委託に関する引当金などの影響によって、資産・負債やキャッシュ・フローの動きが大きくなっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間を通して

2022年3月期から2026年3月期までの5年間を通じて、第一三共グループが医薬品を事業の中心とする基本構造に大きな変化はありませんでした。一方、国内では第一三共エスファの持分変更や製造子会社の吸収合併などが進み、グループ内の法人構成はより集約された形へ変化しています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

経営戦略では、DXd ADCを成長の中心に据える方向性が一貫しています。第5期中期経営計画の当初はエンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADCを重点的に開発していましたが、米国メルクとの提携を経て5DXd ADCsへ対象が拡大しました。2026年3月期に策定された第6期中期経営計画では、DXd ADCの製品価値最大化を続けながら、その次の成長を担う新たな創薬技術を探索する段階へ移っています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

この事業拡大は財務数値にも表れており、売上収益は2022年3月期の1兆449億円から2026年3月期には2兆1,230億円へ増加しました。研究開発費も2,602億円から4,660億円へ拡大しており、売上規模の拡大と並行して将来の成長に向けた研究開発への投入も増えています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

一方、DXd ADCを中心とする事業の拡大に伴い、外部企業との提携や製造・供給契約が財務面へ与える影響も大きくなりました。2024年3月期には米国メルクとの大型提携による契約一時金が営業キャッシュ・フローと契約負債に大きく表れ、2026年3月期にはADCの供給計画見直しに伴う損失補償引当金が計上されました。成長分野への経営資源集中が進む一方で、提携先との協業や製造・供給体制に関するリスクも、より具体的に財務数値へ表れるようになっています。(有報 2024年3月期〜2026年3月期)

株主還元では、成長投資とのバランスを取るという基本方針を維持しながら、1株当たり年間配当は2022年3月期の27円から2026年3月期には78円へ増加しました。自己株式取得も実施され、第6期中期経営計画では配当を原則として維持または増配する累進配当を導入し、調整後DOE10.0%以上を配当水準の指標としています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

5年間を通してみると、第一三共はDXd ADCを中心に事業規模を拡大し、研究開発、製造・供給、外部企業との提携への関与を深めてきました。2026年3月期には第6期中期経営計画を策定し、既存のDXd ADC群の成長を続けながら、次の創薬技術の創出にも対象を広げています。同時に、事業規模の拡大に伴って契約負債や製造委託に関する引当金などの影響も大きくなっており、成長戦略の進展とそれに伴う財務・事業上の変化の双方が確認できる5年間となっています。(有報 2022年3月期〜2026年3月期)

出典:第一三共株式会社 有価証券報告書 2022年3月期〜2026年3月期

免責事項

本ページに掲載している財務情報・指標は、有価証券報告書等の公開情報をもとに作成していますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。

本ページの情報は投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任で行ってください。