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SUMCO

SUMCO CORPORATION

業種
金属製品
所属
プライム
会計基準
日本基準
連結・非連結
連結

企業別レビュー

有価証券報告書・5年間レビュー

対象期間:2021年12月期〜2025年12月期

事業の内容

シリコンウェーハを中心とする事業構成

SUMCOグループは、5年間を通じて、半導体メーカー向けシリコンウェーハの製造・販売を主体とする「高純度シリコン事業」の単一セグメントで事業を展開しています。主力製品である半導体用シリコンウェーハは、メモリーやロジックなどの各種半導体を製造する際の基板材料として使用されます。国内外の製造拠点では、各口径のポリッシュトウェーハや、その表面に特殊加工を施したエピタキシャルウェーハなどを製造しており、この基本的な事業構成は対象期間を通じて変わっていません。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

シリコンウェーハの製造は、多結晶シリコンを高純度石英ルツボ内で溶融し、単結晶シリコンのインゴットを製造する「単結晶引上工程」と、そのインゴットを薄くスライスしたうえで研削、研磨、洗浄などを行う「ウェーハ加工工程」に大きく分かれます。300mmウェーハの製造拠点は佐賀県伊万里市、佐賀県杵島郡江北町、山形県米沢市、長崎県大村市、台湾に置かれ、200mm以下のウェーハについてはこれらに加えて北海道千歳市、宮崎県宮崎市、米国、インドネシアにも製造拠点を展開しています。この製造拠点の構成も5年間を通じて大きな変更はありません。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

2023年に半導体用多結晶シリコン事業を取り込み

事業構成上の大きな変化は2023年にありました。SUMCOは、三菱マテリアルが新設した高純度シリコン株式会社に、同社の半導体用多結晶シリコン事業と、Mitsubishi Polycrystalline Silicon America Corporationおよび日本アエロジル株式会社の株式を承継させたうえで、2023年3月に高純度シリコン株式会社の株式を取得しました。これにより、高純度シリコン株式会社とHigh-Purity Silicon America Corporationが連結子会社となり、日本アエロジル株式会社が持分法適用関連会社となっています。(有報 2023年12月期)

この取得後も報告セグメントは「高純度シリコン事業」の単一セグメントのままですが、従来からのシリコンウェーハ製造に加えて、その原材料となる半導体用多結晶シリコンの製造がグループ内に加わりました。2024年12月期以降の有価証券報告書では、半導体用多結晶シリコンの製造拠点として三重県四日市市と米国が明記されています。(有報 2024年12月期〜2025年12月期)

グローバルな生産・販売体制は維持

販売面では、対象期間を通じて、日本国内の東京、大阪、福岡に営業拠点を置き、北米では米国、アジアでは台湾とシンガポール、欧州とその近隣地域では英国の販売子会社を通じて、世界の半導体メーカーに対応する体制が維持されています。台湾と韓国には技術サポートを行う子会社も置かれています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

5年間を通じて見ると、SUMCOの中心事業は一貫して半導体用シリコンウェーハであり、報告セグメントの再編や事業の大幅な入れ替えはありません。一方、2023年の高純度シリコン株式会社の取得によって、シリコンウェーハの原材料である半導体用多結晶シリコンまでグループの事業範囲が広がったことが、この期間における事業構成上の主な変化です。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

事業の状況

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

基本方針は維持しながら、増産から事業構造改革へ重点が変化

SUMCOグループは、「常に世界一のシリコンウェーハメーカーを目指す」という経営理念のもと、高品質のシリコンウェーハを安定供給し、顧客の高度な品質・コスト要求に対応する技術力を強化する方針を5年間を通じて維持しています。「SUMCOビジョン」では、技術力、景気下降局面での収益力、従業員、海外市場を重視する4つの方向性を掲げています。なお、2021年12月期には「景気下降局面でも赤字にならない会社」としていた項目が、2022年12月期には「景気下降局面でも安定して収益をあげる会社」に変更され、その後も維持されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

2021年12月期は、5Gの普及、データ通信量の増加、EV・自動運転の進展、DXなどによって半導体市場が拡大し、300mmシリコンウェーハでは需要に供給が追い付かない状況が続いていました。200mm以下のウェーハについても車載・民生・産業向け需要が回復しており、会社は顧客への供給責任を果たすための生産能力拡大を重点課題としていました。この時点では、先端品の高精度化と差別化を進めながら、経済合理性を踏まえた規律ある設備投資を実施する方針でした。(有報 2021年12月期)

2022年12月期には、市場環境が変化し始めました。300mmウェーハでは第3四半期までロジック半導体向け、メモリー半導体向けのいずれも旺盛な需要が継続しましたが、第4四半期にはパソコンやスマートフォンの需要軟化によって需給が均衡し始めました。2023年12月期には、パソコン、スマートフォン、データセンターなどの最終需要が低迷し、顧客の生産調整が年間を通じて続きました。会社は中長期的な市場成長の見通しを維持する一方、収益確保、AIを活用した生産性改善、市場変動に機敏に対応できる生産体制の構築を重視するようになりました。(有報 2022年12月期、2023年12月期)

2024年12月期には、生成AI関連の需要拡大によって、300mmウェーハの先端品(最先端の半導体製造に対応する高精度・高品質な製品)と、それ以外の製品との需要格差が明確になりました。AI用データセンター向けの先端品が好調に推移する一方、非先端品では在庫調整が続き、200mm以下のウェーハも低調な需要が継続しました。これを受け、会社は300mm先端品向けの既存設備の近代化と供給力強化を進める一方、200mm以下の生産体制を再構築する方針を示しました。また、150mm以下の小口径ウェーハについては、将来的な需要縮小を見込むようになっています。(有報 2024年12月期)

2025年12月期には、こうした製品別の需要格差が続き、会社は事業構造改革を進めています。300mmウェーハではAI用データセンター向けの先端ロジックとDRAM(データを一時的に保持する半導体メモリー)に強い需要があり、NAND型フラッシュメモリー(電源を切ってもデータを保持できる半導体メモリー)についてもサーバーSSD(サーバー向けの半導体記憶装置)の拡大による需要増加を見込む一方、非先端ロジックでは顧客の購入量調整を想定しています。200mm以下については、AI用データセンター関連の需要増加も見られるものの、全体として現在の需要規模が続くとの見方を示しています。経営上の重点は、300mm先端品の新工場の戦力化・既存設備の高度化と、200mm以下の生産体制再編による効率化・収益改善に置かれています。(有報 2025年12月期)

大規模な能力増強投資と生産体制の見直し

2021年9月、SUMCOは300mm最先端シリコンウェーハの段階的な増産に向けて、新たな建屋、ユーティリティ設備、製造設備に係る2,287億円の設備投資を決定しました。既存建屋内の増産スペースが尽き、製造設備の供給能力が需要に追い付かないことが背景にありました。また、台湾の合弁会社FORMOSA SUMCO TECHNOLOGY CORPORATIONでも300mmウェーハのグリーンフィールド投資(新たに工場を建設し、生産設備を整備する投資)を決定しています。増産に際しては、経済合理性のある価格と、従来より長期間の販売契約に応じる顧客への供給を優先する方針を示しました。(有報 2021年12月期)

2022年12月期には、2021年に決定した2,287億円の設備投資を2024年12月の完了に向けて進める方針を示しました。また、2023年には中長期的な300mmウェーハ需要の伸びに対応する新工場建設の候補地として、佐賀県神埼郡吉野ヶ里町内の約22万㎡の土地について、佐賀県との売買契約を締結しました。需要が調整局面に入るなかでも、将来の市場拡大を見据えた生産基盤の整備を進めていました。(有報 2022年12月期、2023年12月期)

一方、2024年12月期には、需要の低迷が続く200mm以下のウェーハについて、宮崎工場のウェーハ生産を2026年末までに終了することを決定しました。2025年12月期にも小口径品の生産体制再編を進める方針が継続されています。5年間を通じて、供給不足に対応する能力増強から、先端品の成長需要への対応と、需要の弱い製品の生産体制見直しを並行して進める方向へと変化しています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

原材料調達と開発・製造の一貫体制

2021年12月期には、主要原材料である多結晶シリコンについて、過去の長期購入契約締結時の需要予測と実際の消費見通しに乖離が生じたことから、余剰在庫を保有していました。ただし、その在庫残高は2016年度末をピークに減少しており、会社は2021年時点で、今後5年程度で適正水準に回復すると見込んでいました。(有報 2021年12月期)

2022年10月には、三菱マテリアルの半導体用多結晶シリコン事業の取得を決定しました。会社は、シリコンウェーハの製造に不可欠な多結晶シリコンおよびトリクロロシランの安定調達と、原材料から最終製品までの一貫した開発・製造の推進を取得の目的として説明しています。2023年3月31日に取得を実行し、同年の有価証券報告書では、原材料の安定調達が可能になったことと、一貫した開発・製造による高品質化を進める方針が示されています。(有報 2022年12月期、2023年12月期)

サステナビリティに関する考え方及び取組

環境目標の設定から対象範囲の拡大へ

SUMCOは2021年以前から、CO2排出量、エネルギー使用量、化学物質使用量、産業廃棄物排出量、用水使用量などについて削減目標を設けて取り組んでいました。2021年9月には、国内グループのScope1・2(自社の直接排出と、購入した電力などの使用に伴う間接排出)を対象としたカーボンニュートラル目標を新たに設定し、2030年に2014年比33%削減、2050年に100%削減する方針を掲げました。女性活躍推進についても中長期的な目標を設定しています。(有報 2021年12月期、2023年12月期)

2023年12月期の有価証券報告書では、サステナビリティの推進体制として、サステナビリティ推進役員を任命し、常務以上の役員が出席するサステナビリティ推進会議を年2回開催していること、会議の概要を取締役会へ定期的に報告していることが説明されています。環境面では温室効果ガスやエネルギー、用水、廃棄物などの管理、人材面では人材育成や女性活躍推進を重要課題として位置付けています。(有報 2023年12月期)

環境目標はその後、段階的に引き上げられました。2024年2月には、Scope1・2の削減目標をSBT(パリ協定の目標に整合する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標)の2℃シナリオ(世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃以内に抑えるための削減経路)から、より厳しい1.5℃シナリオに整合させるため、2030年の目標を2022年比29%削減へ変更しました。さらに2025年2月には対象を海外拠点まで拡大し、Scope3(原材料調達や輸送など、Scope1・2以外のサプライチェーンに関わる間接排出)についても新たな削減目標を設定しました。2025年6月には短期目標についてSBT認定を取得しています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

2025年12月期に示された目標は、Scope1・2について2030年に2023年比42%削減、2050年に100%削減、Scope3について2030年に2023年比25%削減というものです。2025年のScope1・2排出量については、2023年比12%削減の実績となり、同年の目標を達成する見込みと説明しています。ただし、当該実績は第三者検証前の暫定値です。Scope3の2025年実績については、2026年6月以降の開示予定とされています。(有報 2025年12月期)

5年間を通じて、SUMCOの環境対応は、従来の省エネルギーや環境負荷の低減に加え、国際的な基準に沿った温室効果ガス削減目標の設定と、その進捗を管理する取組へと発展しています。特に、2025年には削減目標の対象範囲が広がり、第三者検証を前提とした実績管理も進められています。

人的資本と管理体制

人的資本については、2021年12月期の時点で女性活躍推進に関する中長期的な目標を設定しており、その後の有価証券報告書では人材育成や人材の維持・確保を含む取組が説明されています。2025年12月期には、SUMCOビジョンの実現に向けて、多様な人材の獲得、育成、維持・確保を重要な課題として位置付けています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

サステナビリティ推進の管理面では、2024年12月期以降、経営直轄の専任組織であるサステナビリティ推進部の設置が明記されています。サステナビリティ推進会議によるリスク・機会の共有と分析、取締役会への報告、各事業拠点での環境管理などを組み合わせた体制が説明されており、目標の設定に加えて、その管理・推進体制も具体化されています。(有報 2023年12月期〜2025年12月期)

※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。

事業等のリスク

半導体市場の需要変動と製品別の需給格差

SUMCOの主要なリスクは、半導体市場の需要変動に強く影響される事業構造にあります。シリコンウェーハの需要は、スマートフォン、パソコン、自動車、データセンター、産業機器などの最終製品市場や、半導体メーカーの生産・在庫調整に左右されます。技術革新、製品世代の変化、顧客の設備投資計画などによって需要が変動し、設備稼働率や販売数量、製品価格が経営成績に影響する可能性があることを、会社は対象期間を通じてリスクとして認識しています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

このリスクは実際に2022年後半から顕在化しました。2021年には供給不足が続いていたものの、2022年第4四半期から需給が変化し、2023年には顧客の生産調整によって300mmウェーハの需要が年間を通じて減少しました。2024〜2025年にはAI関連の先端品需要が拡大する一方、非先端品や200mm以下の需要は低迷し、製品ごとの市場環境に大きな差が生じています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

会社は、製品の高精度化・差別化、コスト競争力の強化、生産体制の柔軟化によって市場変動への対応を図っています。2024年以降は、300mm先端品の供給能力を高める一方、需要が低迷する200mm以下については、宮崎工場での生産を終了して他工場へ移管するなど、生産体制の集約・効率化を進める方針が具体化しました。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

技術競争、製品品質および主要顧客への依存

シリコンウェーハには、半導体の微細化や高性能化に伴って、結晶品質、平坦度、欠陥管理などの高度な技術が求められます。新しい顧客要求に適応できない場合、技術開発や量産化が遅れる場合、製品品質に問題が生じる場合には、競争力の低下や顧客との取引関係への影響につながる可能性があります。特に300mmの最先端ウェーハでは、開発や量産の難易度が高く、開発費用の増加や生産性改善の遅れが収益へ影響することがリスクとして説明されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

また、半導体用シリコンウェーハ市場には複数の有力メーカーが存在し、品質・技術・価格・安定供給の面で競争しています。主要顧客の生産方針や調達方針の変更、需要の減少、取引条件の変化は、SUMCOの販売数量や収益に影響する可能性があります。顧客の信用状態が悪化した場合には売掛債権の回収に影響するリスクもあります。これらは対象期間を通じて継続的に開示されているリスクです。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

原材料調達、サプライチェーンおよび設備投資

主要原材料である多結晶シリコンの調達については、価格や供給状況の変化、長期購入契約に基づく購入義務などがリスクとなります。過去の需要予測と実際の需要が乖離した場合には、長期購入契約に基づく調達量と生産に必要な量との差が生じる可能性があります。2021年12月期には、過去の長期購入契約に由来する多結晶シリコンの余剰在庫が実際の経営課題として説明されていました。(有報 2021年12月期)

2023年の半導体用多結晶シリコン事業の取得によって原材料の安定調達を進める体制となりましたが、サプライチェーンに関するリスクがなくなったわけではありません。原材料、製造設備、部品などの供給制約、物流の混乱、調達先の操業停止といったリスクは引き続き認識されています。(有報 2023年12月期〜2025年12月期)

設備投資については、半導体製造設備の建設・増強に多額の資金と時間を要する一方、需要予測に不確実性があることが特徴です。増産投資の完了後に市場環境が悪化した場合、設備稼働率の低下、減価償却費の負担増加、資産価値の低下などが経営成績に影響する可能性があります。2025年12月期には、先端300mmウェーハ向けの能力増強投資に伴う減価償却費負担の増加が、実際の業績要因として説明されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

海外事業、地政学、為替および法規制

SUMCOは日本に加えて台湾、米国、インドネシアなどに製造拠点を持ち、世界各地域の半導体メーカーへ製品を供給しています。このため、各国の政治・経済情勢、貿易政策、輸出入規制、税制、法令改正、地政学的な緊張などが事業運営に影響する可能性があります。また、為替相場の変動についても、外貨建取引や海外子会社の業績・財政状態の円換算を通じて、経営成績などに影響するリスクとして、会社は5年間を通じて認識しています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

2021年には新型コロナウイルス感染症や米中貿易摩擦への懸念が経営環境の説明に含まれていました。2022〜2023年には地政学的リスクや各国の金融政策・政策動向への言及が強まり、2025年には半導体を搭載する最終製品の需要への影響を特に注視するとしています。リスクの基本的な性質は変わらないものの、会社が注視する外部環境は期間中に変化しています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

環境規制、災害、情報管理および事業継続

半導体用シリコンウェーハの製造には電力、用水、化学物質などが必要であり、環境規制の強化、エネルギー価格の変動、環境対策費用の増加などが経営成績に影響する可能性があります。自然災害や大規模事故、停電、設備故障などによる製造拠点の操業停止も重要なリスクです。製造拠点に加えて取引先や物流網が被害を受けた場合にも、生産・供給活動に影響する可能性があります。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

情報管理については、顧客情報や技術情報などの漏えい、情報システムの障害、サイバー攻撃などをリスクとして認識しています。また、知的財産権の侵害・紛争、各種法規制への違反、製品に関する訴訟、人材確保の問題、内部統制の不備なども継続的に開示されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

感染症に関するリスクは、2021〜2022年には「新型コロナウイルス感染症について」として記載されていましたが、2023年以降は「感染症について」という名称に変更されています。感染拡大による従業員の欠勤や製造工程の操業停止に対して、勤務シフトの調整や人員再配置などによって影響を抑える対応が説明されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

リスク管理体制

SUMCOは「リスク管理基本規定」に基づき、事業継続に影響し得るリスクについて、発生の未然防止と影響の最小化を図るリスクマネジメント活動を実施しています。また、サステナビリティに関するリスクと機会については、サステナビリティ推進会議で各部門の活動状況や社会課題、ステークホルダーからの要請を共有・分析し、その審議内容を今後の活動方針に反映する仕組みが説明されています。(有報 2023年12月期〜2025年12月期)

5年間を通じて、半導体市場の需要変動、技術・品質、原材料・設備調達、海外事業、為替、環境規制、災害などが主要リスクとして継続しています。そのうち、需要変動と設備投資に伴う負担は2022年後半以降の市場調整を経て実際の業績にも表れており、会社は先端品への対応と生産体制再編によって対処を進めています。

経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

2021〜2022年:需要拡大と供給能力の制約

2021年12月期について、会社は、5G化やテレワークの浸透に伴うデータ通信量の増加、データセンター投資の活発化、EV・自動運転の普及、民生・産業向け需要の回復などを、シリコンウェーハ需要拡大の背景として説明しています。300mmと200mm以下のいずれも需要が供給能力を上回り、増産投資を決定しました。業績面では売上高3,356億74百万円、営業利益515億43百万円となり、前年度から増収増益となりました。(有報 2021年12月期)

2022年12月期には、300mmウェーハで第3四半期まで旺盛な需要が継続しましたが、第4四半期からパソコン・スマートフォン向けの需要が軟化し、需給が均衡し始めました。200mmでは車載・産業向けの需要が堅調だった一方、150mm以下では年度後半から民生向けを中心に調整が始まりました。こうした年度後半の変化があったものの、通期では売上高4,410億83百万円、営業利益1,096億83百万円となり、5年間で最も高い営業利益を計上しました。(有報 2022年12月期)

2023年:顧客の生産調整による需要減少

2023年12月期には、パソコン、スマートフォン、データセンターなどの最終需要が低迷し、ロジック・メモリー向け半導体の生産調整が継続しました。300mmウェーハでは顧客の生産調整によって年間を通じて需要が減少し、200mm以下でもEV向けを除く民生・産業向け需要の落ち込みが続いたと説明しています。(有報 2023年12月期)

会社は先端品の高シェア維持、AIを活用した生産性改善、コスト競争力の強化に取り組みましたが、営業利益は730億80百万円となり、前年度比33.4%減少しました。一方、中長期的な市場成長の見通しは維持しており、短期的な需要調整への対応と将来の成長需要を見据えた取組を並行して進めています。(有報 2023年12月期)

2024〜2025年:需要の二極化と設備投資負担

2024年12月期について、会社は、AI用データセンター向け需要が大きく伸びる一方、民生・産業・自動車向けの需要回復が弱く、市場の二極化が続いたと説明しています。300mmウェーハでは先端ロジック・メモリー向けの需要が増加したものの、先端品以外の回復は鈍く、全体では緩やかな回復にとどまりました。200mm以下は年間を通じて低調な出荷が継続しました。(有報 2024年12月期)

同年度には、宮崎工場のウェーハ生産を2026年末までに終了する方針を決定し、関連する特別損失58億14百万円を計上しています。営業利益は369億24百万円となり、前年度比49.5%減少しました。先端品の需要増加が見られる一方、需要の弱い製品への対応と生産体制の見直しが必要となった年度でした。(有報 2024年12月期)

2025年12月期も、AI用データセンター向けの需要拡大と、民生・産業・自動車向け需要の伸び悩みが続きました。300mm先端品は強い需要を維持しましたが、非先端品は顧客の在庫調整の影響を受け、200mm以下も低調な出荷が継続しました。会社は先端品の高シェア維持と生産性向上に取り組む一方、過去に実施した先端300mmウェーハの能力増強投資に伴って減価償却費負担が増加したことを説明しています。(有報 2025年12月期)

その結果、2025年12月期の売上高は4,096億70百万円と前年度比3.3%増加したものの、営業利益は13億42百万円と同96.4%減少し、経常損失38億86百万円、親会社株主に帰属する当期純損失117億51百万円となりました。売上高の回復に対して利益の回復が伴わず、需要の製品別格差と設備投資負担の増加が業績に表れています。(有報 2025年12月期)

重要な契約等

SUMCOは、主要原材料である多結晶シリコンの調達に関して、主要メーカーとの間で一定期間に一定数量を購入する長期購入契約を締結しています。また、台湾のFORMOSA SUMCO TECHNOLOGY CORPORATIONについては、SUMCOの製造子会社であるSUMCO TECHXIV株式会社が現地パートナーと締結した合弁事業契約が継続しています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

対象期間中の重要な契約として、2022年10月28日に三菱マテリアルの半導体用多結晶シリコン事業の取得に関する契約を締結し、2023年3月31日に取得を実行しました。この取得により、半導体用多結晶シリコンの製造事業がSUMCOグループに加わり、主要原材料の安定調達と、原材料からシリコンウェーハまでの一貫した開発・製造体制の強化につながるものと位置付けられています。(有報 2022年12月期、2023年12月期)

また、2023年6月には300mmウェーハの将来の需要拡大に備え、佐賀県吉野ヶ里町の新工場建設候補地に関する土地売買契約を締結しています。これらの契約は、原材料調達体制の整備と、中長期的な生産能力の確保に関係するものです。(有報 2023年12月期)

SUMCOグループは、金融機関との間で、財務制限条項(一定の財務状態を維持することなどを求める契約条件)が付された金銭消費貸借契約を締結しています。これらの契約では、連結および個別貸借対照表の純資産を一定水準以上に維持することが求められています。

こうした財務制限条項が付された長期借入金の残高は、2025年12月末時点で1,073億45百万円となり、前年末の1,210億円から減少しています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

また、運転資金の機動的な調達に備え、金融機関との間で500億円のコミットメントライン契約(あらかじめ定めた限度額の範囲内で借入れができる契約)を締結しています。この契約にも、純資産および連結営業キャッシュ・フローの一定水準の維持を求める財務制限条項が付されています。2025年12月末時点で借入実行残高はなく、500億円全額が未使用枠となっています。

これらの財務制限条項に抵触した場合には、借入金の返還請求などを受け、資金調達に影響する可能性があります。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

研究開発活動

先端ウェーハの高精度化と生産性改善を継続

SUMCOは、顧客への積極的な技術提案、先端製品の差別化、量産品の品質改善、生産性向上、コスト合理化を研究開発の基本方針として掲げています。2021年12月期には、将来技術の開発、ビッグデータ・AIの活用、高感度評価技術の開発、海外顧客・拠点との技術交流などを推進していました。(有報 2021年12月期)

2022年以降も先端品の競争力強化という基本方針は維持されていますが、国内外の大学との共同研究、産官学連携、オープンイノベーションを通じた技術課題の探索などが説明されています。2023年以降は、AIを活用した生産性改善と研究開発力の高度化、新製品の立ち上げスピードの向上が重視されるようになりました。(有報 2022年12月期〜2024年12月期)

2025年12月期には、AI製品の急速な成長や、半導体デバイスの微細化の限界を背景とした3D化などにより、シリコンウェーハにも従来の技術の延長では対応できない変革が求められていると説明しています。こうした技術的な変化に対応するため、顧客との共同開発や評価技術の高精度化に加え、先端製品の比率増加に対応する既存工場の製造設備の高度化も推進しています。最先端半導体の技術革新に対応する製品開発と、量産設備・工程の改善を組み合わせた取組が進められています。(有報 2025年12月期)

研究開発費は5年間で増加

研究開発費の総額は、2021年12月期の55億84百万円から2025年12月期の111億51百万円へ増加しています。売上高に対する比率も1.7%から2.7%へ上昇しており、2022年以降の市場調整期にも研究開発費は増加を続けました。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

決算期研究開発費売上高比率
2021年12月期55億84百万円1.7%
2022年12月期65億55百万円1.5%
2023年12月期81億80百万円1.9%
2024年12月期85億32百万円2.2%
2025年12月期111億51百万円2.7%

5年間では、研究開発費の増加とともに、研究開発の重点が先端製品の高精度化に加えて、AI活用、評価技術の高度化、製品立ち上げの迅速化、既存設備の高度化へと具体化しています。需要環境が大きく変動するなかでも、先端半導体に対応する技術開発を継続していることが確認できます。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

経理の状況

連結財務諸表から見た5年間の変化

SUMCOグループの財務数値は、2021〜2022年の利益拡大、2023〜2024年の大規模設備投資、2025年の利益急減という推移を示しています。特に、2022年12月期に営業利益が1,096億83百万円まで増加した後、2025年12月期には13億42百万円まで減少しました。一方、総資産は2021年12月末の7,648億21百万円から2025年12月末の1兆1,279億66百万円へ拡大しており、利益と資産規模の推移には大きな違いがあります。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

以下では、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書の順に、主要な変化とその背景を確認します。主要な経営指標の5年間一覧は「主要な経営指標等の推移」にまとめ、ここでは変化の要因を確認するための勘定科目や比較数値を中心に取り上げます。

連結貸借対照表

資産規模の拡大と有形固定資産の増加

2021年12月末の総資産は7,648億21百万円でした。2021年には設備投資の拡大に備えて公募増資を実施しており、現金及び預金が2020年末の829億68百万円から2021年末には2,181億73百万円へ増加しました。純資産も2020年末の3,550億3百万円から2021年末の5,228億42百万円に増加しており、増産に向けた資金調達が財務基盤の拡充として表れています。(有報 2021年12月期)

2022年以降は有形固定資産が大きく増加しました。2022年12月末には3,003億71百万円、2023年末には5,519億94百万円、2024年末には6,923億50百万円となっています。特に建設仮勘定は、2021年末の373億99百万円から2024年末には3,780億7百万円へ増加しました。建設仮勘定は、建設中の工場や据付中の設備など、まだ完成・使用開始に至っていない固定資産を計上する科目です。この急増は、300mmシリコンウェーハ向けの大規模な設備投資が進行していたことを財務諸表上でも示しています。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)

決算期有形固定資産合計建設仮勘定
2021年12月期226,50237,399
2022年12月期300,371110,264
2023年12月期551,994284,061
2024年12月期692,350378,007
2025年12月期663,425123,432

単位:百万円。建設仮勘定は有形固定資産の内数。

2025年12月末には、建設仮勘定が1,234億32百万円へ減少する一方、機械装置及び運搬具の純額は前年末の1,405億61百万円から3,102億40百万円へ、建物及び構築物の純額も1,456億23百万円から1,980億44百万円へ増加しています。建設仮勘定から稼働可能な固定資産への振替が進んだことを示す構成変化です。有形固定資産合計は前年末から289億25百万円減少しましたが、2021年末との比較では依然として大幅に高い水準にあります。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

項目2024年12月末2025年12月末増減
建物及び構築物(純額)145,623198,044+52,421
機械装置及び運搬具(純額)140,561310,240+169,679
建設仮勘定378,007123,432△254,575
有形固定資産合計692,350663,425△28,925

単位:百万円。増減は各期末の表示額から計算。

建設仮勘定の大幅な減少と建物・機械装置の増加は、設備投資が建設・据付の段階から、使用可能な固定資産として計上される段階へ移ったことを示しています。ただし、各勘定の増減には減価償却、除却、為替換算なども含まれるため、建設仮勘定の減少額をそのまま他の固定資産への振替額とみなすことはできません。

原材料在庫の増加

決算期原材料及び貯蔵品
2021年12月期134,987
2022年12月期135,461
2023年12月期166,387
2024年12月期178,559
2025年12月期192,466

単位:百万円。

原材料及び貯蔵品は、2021年末の1,349億87百万円から2025年末には1,924億66百万円に増加しています。2022年末までは概ね横ばいでしたが、2023年以降に残高が増えています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

「事業の状況」で取り上げた多結晶シリコンの長期購入契約と余剰在庫は、この科目を理解するうえで重要です。ただし、原材料及び貯蔵品には多結晶シリコン以外も含まれるため、科目全体の増加を余剰の多結晶シリコンの増加と同一視することはできません。また、2023年の半導体用多結晶シリコン事業の取得による連結範囲の変化も踏まえる必要があります。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

借入金の増加と財務構成の変化

決算期短期借入金長期借入金借入金合計
2021年12月期32,534108,349140,883
2022年12月期30,432110,617141,049
2023年12月期34,107190,140224,247
2024年12月期41,628312,043353,671
2025年12月期41,253312,200353,453

単位:百万円。借入金合計は短期借入金と長期借入金の合計。

2021〜2022年末には、短期借入金と長期借入金の合計がおよそ1,400億円でしたが、2023年末には2,242億47百万円、2024年末には3,536億71百万円へ増加しました。長期借入金の増加が中心であり、大規模設備投資が進んだ期間に、借入による資金調達も拡大したことが分かります。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)

2025年末には長期借入金が3,122億円と前年末からほぼ横ばいで、短期借入金も412億53百万円となっています。一方、負債合計は2024年末の5,154億47百万円から2025年末の4,801億81百万円へ減少しました。純資産も6,572億36百万円から6,477億85百万円へ減少しており、2025年は負債・純資産がともに減少するなかで総資産が縮小しています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

連結純資産を総資産で除した比率は、2021年末の約68.4%から2024年末には約56.0%、2025年末には約57.4%となっています。なお、この比率は非支配株主持分を含む純資産合計を用いた参考値であり、親会社株主に帰属する自己資本を用いる一般的な自己資本比率とは異なります。

借入金の推移では、2023〜2024年に長期借入金が増加したことが重要です。一方、2025年末の借入金残高が前年度からほぼ変化していないことだけで、財務負担が変わっていないとは判断できません。利益が大きく減少したことで、借入金に対する利益の水準は低下しています。後述の「財務制限条項が付された借入契約」も、財務上の留意事項となっています。

連結損益計算書

2022年の利益拡大から2025年の大幅減益へ

2021年12月期の売上高は3,356億74百万円、営業利益は515億43百万円でした。翌2022年12月期には売上高が4,410億83百万円、営業利益が1,096億83百万円へ増加しました。営業利益率も2021年の約15.4%から2022年には約24.9%へ上昇しており、需要拡大期に売上高の増加を上回る利益成長が実現しています。(有報 2021年12月期、2022年12月期)

2023年12月期には、半導体メーカーの在庫調整や生産調整が長期化し、シリコンウェーハの販売数量が減少しました。売上高の減少は前年度比約3.4%にとどまった一方、営業利益は約33.4%減少しています。製造業では、販売数量が減少しても工場設備の減価償却費などの固定費は販売数量に比例して減少しないため、工場の稼働率が低下すると利益が圧迫されやすくなります。SUMCOでも、需要減少に伴う生産・販売数量の減少が収益力の低下につながったと考えられます。

2024年12月期には、AI関連の先端品需要が拡大したものの、非先端品や200mm以下のウェーハでは需要の低迷が続きました。先端品の需要増加だけでは他の製品の落ち込みを補えず、営業利益は369億24百万円、営業利益率は約9.3%まで低下しました。製品別の需要格差が、全社の収益回復を妨げる状況となっています。(有報 2023年12月期、2024年12月期)

2025年12月期には、AI関連の先端品需要に支えられて売上高が前年度から増加しました。しかし、売上高の増加額130億51百万円に対して、売上原価は312億75百万円増加し、売上総利益は182億24百万円減少しました。さらに、販売費及び一般管理費も173億59百万円増加したため、営業利益は前年度の369億24百万円から13億42百万円へ大幅に減少しました。先端300mmウェーハ向けの能力増強投資に伴う減価償却費の増加も、費用負担を押し上げています。売上高は回復に転じたものの、増加した費用を吸収できず、利益の回復には至りませんでした。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

売上総利益の減少と販管費の増加

項目2024年12月期2025年12月期増減
売上高396,619409,670+13,051
売上原価323,893355,168+31,275
売上総利益72,72654,502△18,224
売上総利益率18.3%13.3%△5.0ポイント
販売費及び一般管理費35,80153,160+17,359
営業利益36,9241,342△35,582

単位:百万円(比率を除く)。比率は表示金額から計算した小数第1位の概数。増減は表示額に基づく。

2025年は、売上高が130億51百万円増加した一方、売上原価は312億75百万円増加しています。その結果、売上総利益は182億24百万円減少し、売上総利益率も前年度の約18.3%から約13.3%へ低下しました。売上高が増加しても、売上原価の増加がそれを上回ったことで、売上総利益が減少しています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

さらに販売費及び一般管理費は173億59百万円増加しました。有価証券報告書の注記では、販管費に含まれる減価償却費が2024年の12億25百万円から2025年には159億24百万円へ増加しています。研究開発費も85億32百万円から111億51百万円へ増加しました。販管費の増加には、これらの費用の増加が含まれています。(有報 2025年12月期)

売上総利益の減少182億24百万円と販管費の増加173億59百万円が、営業利益の減少355億82百万円にほぼ対応しています。したがって、2025年の営業利益急減は、売上総利益率の低下と販管費の増加が同時に生じた結果として整理できます。

ただし、売上原価や販管費の増加について、製品構成、販売数量、設備稼働率、減価償却などの影響額がすべて個別に示されているわけではありません。上記の表から直接確認できる損益構造と、会社が説明する業績要因は区別して理解する必要があります。

減価償却費の増加と収益への影響

決算期減価償却費
2021年12月期51,325
2022年12月期59,532
2023年12月期71,425
2024年12月期78,986
2025年12月期115,692

単位:百万円。連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローにおける減価償却費。

減価償却費は2021年12月期の513億25百万円から2025年12月期には1,156億92百万円へ増加しています。特に2025年は前年度の789億86百万円から367億6百万円増加しました。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

2025年の営業利益は前年度から355億82百万円減少しました。一方、連結キャッシュ・フロー計算書における減価償却費は367億6百万円増加しており、大規模な設備投資による償却負担の拡大が確認できます。ただし、減価償却費には棚卸資産への原価配分や営業外費用への計上など、営業利益に直接反映されない部分もあるため、その増加額を営業利益の減少額と単純に対応させることはできません。設備投資に伴う償却負担の増加は、2025年の収益性の変化を理解するうえで重要な要素です。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

また、2025年には販管費に含まれる減価償却費が大幅に増加したことが注記で確認できます。先に示した販管費の増加額には、この償却費の増加が含まれています。したがって、営業利益の減少要因を分析する際に、販管費の増加と減価償却費の増加を、それぞれ独立した費用として重複計上することはできません。

一過性損失と当期純利益の変化

2024年12月期には、宮崎工場のウェーハ生産を2026年末までに終了する方針に関連して、事業構造改善費用58億14百万円を特別損失として計上しました。このうち46億24百万円は固定資産の減損損失です。減損損失は、固定資産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合などに、帳簿価額を減額する会計処理です。

2024年の親会社株主に帰属する当期純利益は198億77百万円となり、前年の638億84百万円から大幅に減少しました。この減益には、半導体市場の需要低迷による営業利益の減少に加え、宮崎工場の生産終了に伴う特別損失が影響しています。したがって、2024年の利益減少は、一時的な事業構造改善費用だけによるものではなく、本業の収益力の低下も大きく影響していたと理解できます。(有報 2023年12月期、2024年12月期)

2025年12月期には、営業利益13億42百万円に対し、営業外収益45億95百万円、営業外費用98億24百万円が計上され、経常損失38億86百万円となりました。営業外費用には支払利息27億9百万円、減価償却費45億92百万円、為替差損17億45百万円などが含まれています。法人税等合計61億81百万円を計上した結果、当期純損失は100億67百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は117億51百万円となりました。(有報 2025年12月期)

営業外費用の減価償却費は2024年の18億23百万円から2025年には45億92百万円へ増加しており、経常損益にも影響しています。一方、2024年の事業構造改善費用58億14百万円に相当する特別損失は2025年には計上されていません。それにもかかわらず2025年の最終損益は赤字となっており、特別損失の有無だけでは説明できない収益力の低下が確認できます。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

5年間の損益推移を見ると、2022年までの利益拡大から2023〜2024年の減益を経て、2025年には売上高が増加しても利益がほとんど残らない状況へ変化しています。需要変動による収益への影響に加え、増産投資後の固定費負担が大きくなった点が特徴です。

連結キャッシュ・フロー計算書

営業キャッシュ・フローは黒字を維持

営業活動によるキャッシュ・フローは5年間を通じてプラスを維持しました。2022年12月期には1,794億62百万円まで増加しましたが、2023年は963億42百万円、2024年は696億27百万円へ減少しています。これは損益計算書で確認した利益の減少と概ね同じ方向の動きです。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)

2025年12月期には、税金等調整前当期純損失38億86百万円を計上した一方、営業キャッシュ・フローは1,000億40百万円となり、前年度から304億12百万円増加しました。主な調整項目として減価償却費1,156億92百万円が加算されています。一方、棚卸資産の増加は169億7百万円の資金減少要因となっています。(有報 2025年12月期)

営業CFの主な調整項目2024年12月期2025年12月期
税金等調整前当期純利益・損失31,642△3,886
減価償却費78,986115,692
売上債権の増減額△7,2672,742
棚卸資産の増減額△13,219△16,907
仕入債務の増減額△4,466229
法人税等の支払額△19,891△7,234

単位:百万円。表示した項目は営業CFの構成要素の一部であり、各行の合計が営業CFの総額になるものではありません。

2025年は、会計上の利益が大きく減少した一方で、営業活動からの現金収入は増加しています。減価償却費は費用として利益を減らしますが、計上時点で現金支出を伴わないため、営業キャッシュ・フローの計算では加算されます。この違いが、2025年の損益とキャッシュ・フローの差を理解するうえで重要です。

また、2025年には前年より法人税等の支払額が減少したことも、営業キャッシュ・フローの増加に寄与しています。一方、棚卸資産の増加による資金負担は続いており、利益と現金創出の差をすべて減価償却費だけで説明することはできません。

2023〜2024年に投資支出が拡大

決算期有形及び無形固定資産の取得による支出
2021年12月期△67,786
2022年12月期△125,453
2023年12月期△256,910
2024年12月期△247,248
2025年12月期△111,033

単位:百万円。△は支出。

有形及び無形固定資産の取得による支出は、2021年の677億86百万円から2022年には1,254億53百万円、2023年には2,569億10百万円へ増加しました。2024年も2,472億48百万円と高水準が続いています。2023年と2024年の2年間だけで固定資産取得に5,041億58百万円を支出しており、この期間の大規模な設備投資がキャッシュ・フローに明確に表れています。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)

2023年には、三菱マテリアルからの半導体用多結晶シリコン事業取得に伴う連結範囲の変更がありました。連結キャッシュ・フロー計算書では、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入99億20百万円が計上されています。買収という出来事であっても、取得した子会社の現金及び現金同等物と取得対価の差によって、連結キャッシュ・フロー計算書上は資金の流入として表示されている点に注意が必要です。(有報 2023年12月期)

2025年には固定資産取得支出が1,110億33百万円へ減少し、投資キャッシュ・フローのマイナス幅も前年度の2,478億76百万円から1,114億47百万円へ縮小しました。ただし、依然として営業キャッシュ・フローの1,000億40百万円を上回る投資支出が続いています。(有報 2024年12月期、2025年12月期)

2023〜2024年には、営業活動で得た資金を大きく上回る固定資産取得支出が続きました。2025年はその差が縮小したものの、営業キャッシュ・フローだけで固定資産取得支出を賄い切る状態には戻っていません。

資金調達と現金残高の変化

2021年12月期の財務キャッシュ・フローは990億99百万円のプラスとなりました。株式の発行による収入1,198億16百万円が主な要因であり、将来の設備投資に備えた資本調達が資金流入として表れています。その結果、現金及び現金同等物の期末残高は前年末の818億64百万円から2,246億73百万円へ増加しました。(有報 2021年12月期)

2022年12月期は財務キャッシュ・フローが231億53百万円のマイナスとなりましたが、営業キャッシュ・フローが設備投資支出を上回り、現金及び現金同等物の期末残高は2,593億5百万円へ増加しました。これは対象期間中で最も高い期末残高です。(有報 2022年12月期)

2023年12月期には長期借入れによる収入1,123億65百万円、2024年12月期には1,529億40百万円を計上しました。両年度とも多額の設備投資支出が続いており、財務キャッシュ・フローは2023年に434億56百万円、2024年に1,122億94百万円のプラスとなっています。それでも投資支出が大きく、現金及び現金同等物の期末残高は2023年末に1,563億53百万円、2024年末には956億71百万円へ減少しました。(有報 2023年12月期、2024年12月期)

決算期長期借入れによる収入長期借入金の返済による支出株式の発行による収入
2021年12月期29,500△37,180119,816
2022年12月期32,700△32,534―
2023年12月期112,365△30,432―
2024年12月期152,940△36,567―
2025年12月期56,050△49,789―

単位:百万円。△は支出。「―」は当該収入の計上がないことを示す。

この表では、2021年に株式発行による資金調達が行われたこと、2023〜2024年に長期借入れによる調達が大きく増加したこと、2025年には長期借入れによる収入が減少する一方で返済支出が増加したことを確認できます。財務キャッシュ・フローの総額には短期借入金の増減や配当金の支払いなども含まれるため、これらの金額だけで財務キャッシュ・フロー全体を説明することはできません。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

2025年12月期には、長期借入れによる収入560億50百万円に対して長期借入金の返済による支出が497億89百万円となりました。財務キャッシュ・フローは87億29百万円のマイナスであり、投資キャッシュ・フローも引き続きマイナスとなったため、現金及び現金同等物の期末残高は752億96百万円へ減少しました。2022年末との比較では1,840億9百万円の減少です。(有報 2022年12月期、2025年12月期)

この5年間では、2021年に株式発行によって資金を確保し、2023〜2024年には借入による資金調達を拡大しながら大規模設備投資を進め、2025年には投資支出を縮小する一方で現金残高の減少が続くという変化が確認できます。

財務諸表注記から確認できる重要事項

半導体用多結晶シリコン事業の取得

2023年3月31日の半導体用多結晶シリコン事業の取得では、高純度シリコン株式会社とHigh-Purity Silicon America Corporationが連結子会社となり、日本アエロジル株式会社が持分法適用関連会社となりました。事業範囲の拡大だけでなく、連結貸借対照表に含まれる資産・負債の範囲も変化しています。(有報 2023年12月期)

このため、2022年末と2023年末の資産や原材料在庫を比較する際には、既存事業における設備投資・在庫変動と、連結範囲の変更に伴う影響を区別する必要があります。特に2023年は有形固定資産が大きく増加している年度ですが、その増加額全体を新規の設備投資だけに帰属させることはできません。

宮崎工場の生産終了に伴う損失

2024年12月期には、宮崎工場のウェーハ生産を2026年末までに終了する方針に関連して、事業構造改善費用58億14百万円を計上しました。このうち46億24百万円は固定資産の減損損失です。(有報 2024年12月期)

この損失は、2024年の通常の営業利益の減少とは区別される特別損失です。また、生産体制の集約・効率化に向けた経営判断が、固定資産の減損などの会計処理に反映された事例でもあります。

財務制限条項が付された借入契約

2025年12月期の注記には、財務制限条項が付された長期借入金の残高が1,073億45百万円であることが記載されています。また、500億円のコミットメントラインについても、純資産や営業キャッシュ・フローの一定水準の維持に関する条件が設けられています。(有報 2025年12月期)

これらの契約の内容と条件は「事業の状況」の「重要な契約等」で説明しているため、ここでは財務上の位置付けを確認するにとどめます。2025年末の長期借入金残高3,122億円のうち、一部に財務制限条項が付されていることは、今後の資金調達や財務健全性を評価する際に留意すべき事項です。

5年間の財務状況の整理

SUMCOの2021〜2025年の財務推移で特徴的なのは、利益の増減と設備投資の進捗に時間差があることです。

2021〜2022年には旺盛な需要を背景に利益が拡大し、2021年の株式発行によって資金を確保しました。その後、半導体市場の需要調整によって利益が減少する一方、2023〜2024年には大規模な設備投資が継続し、借入金が増加しました。

2025年には、建設仮勘定が減少し、建物・機械装置の純額が増加するとともに、減価償却費が大幅に増えました。売上高は前年を上回ったものの、売上原価や販管費の増加によって営業利益は大きく減少し、最終損益は赤字となりました。一方、営業キャッシュ・フローは1,000億40百万円のプラスを維持しました。これは、利益を減少させた減価償却費が、その計上時点では現金支出を伴わないことなどによるものです。ただし、固定資産取得支出は営業キャッシュ・フローを上回っており、現金及び現金同等物の期末残高は減少しています。

5年間を通じて見ると、増産投資によって資産規模と借入金が拡大した一方、2025年時点ではその設備投資に伴う償却負担が大きくなり、収益力が低下しています。今後の財務状況を評価するうえでは、先端品の需要拡大が既存設備の稼働率や利益の回復にどの程度つながるか、営業キャッシュ・フローが投資支出を安定的に上回る状態へ戻るかが重要な論点となります。

配当政策

株主還元の基本方針と5年間の変化

SUMCOは、株主に対する適正な利益還元を経営の重要課題と位置付けています。2021年12月期から2024年12月期までの有価証券報告書では、各事業年度の利益水準、次期以降の業績見通し、設備投資等の資金需要、内部留保の状況などを総合的に勘案し、柔軟かつ積極的な株主還元を実施する方針を継続して示していました。株主還元の手段としては、配当に加えて自己株式の取得も挙げています。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)

この方針は、利益の一定割合を機械的に配当するものではなく、業績と将来の資金需要の双方を考慮して配当額を決定する考え方です。対象期間の有価証券報告書の「配当政策」には、配当性向の固定的な目標値や、最低配当額、DOE(株主資本配当率)による数値目標は示されていません。

2025年12月期には、株主還元を経営の重要課題とする基本姿勢は維持しながら、配当判断で考慮する項目の表現が変更されました。従来の利益水準、次期以降の見通し、設備投資に係る資金需要に加えて、フリー・キャッシュ・フロー、EBITDA、配当原資の状況を明示しています。(有報 2025年12月期)

フリー・キャッシュ・フローは、一般に営業活動で得た資金から設備投資などに使用した資金を差し引いたものです。また、EBITDAは、税金・支払利息・減価償却費などの影響を除いて事業の収益力を捉えるための指標です。大規模な設備投資に伴って減価償却費が増加し、会計上の利益が大きく減少するなか、2025年には配当を判断する際の考慮事項として、利益だけでなく現金創出力や配当原資をより具体的に示したことが特徴です。

ただし、2025年の記載変更は、配当性向に代わる新たな数値目標の導入を意味するものではありません。利益水準や設備投資の資金需要などを総合的に判断する基本的な枠組みは維持されています。

配当実績の推移

2022年の増配から2024年の減配へ

決算期中間配当期末配当年間配当配当性向
2021年12月期17円24円41円30.7%
2022年12月期36円45円81円47.3%
2023年12月期42円13円55円40.8%
2024年12月期15円6円21円37.0%
2025年12月期10円10円20円―

配当額は1株当たりの金額。配当性向は各期の有価証券報告書に記載された提出会社の指標。「―」は1株当たり当期純損失のため記載がないことを示す。

2021年12月期の年間配当は41円でしたが、半導体需要の拡大によって業績が大きく伸びた2022年12月期には81円へ増加しました。2022年は中間配当36円、期末配当45円と、いずれも前年を上回っています。会社は利益水準だけでなく将来の業績見通しや設備投資の資金需要も勘案する方針を掲げており、増配はその方針のもとで実施されました。(有報 2021年12月期、2022年12月期)

2023年12月期には、年間配当が55円へ減少しました。特に、中間配当42円に対して期末配当は13円となっており、年度後半の配当額が大きく減少しています。同年は半導体メーカーの生産調整が長期化し、SUMCOの営業利益も前年から減少しました。年間配当が減少しただけでなく、中間配当と期末配当の差が大きくなった点に、市場環境の変化に応じて配当額を見直す方針が表れています。(有報 2023年12月期)

2024年12月期には、年間配当が21円まで減少しました。中間配当15円、期末配当6円と、ともに前年を下回っています。AI関連の先端品需要が増加する一方、非先端品や200mm以下のウェーハの需要は低迷し、営業利益も大幅に減少しました。また、設備投資に伴う資金需要が続くなかで、営業キャッシュ・フローを上回る投資支出が発生していました。こうした利益と資金需要の状況は、配当実績を理解するうえで重要です。(有報 2024年12月期)

5年間の配当額の推移は、2022年の年間81円をピークに、2023年55円、2024年21円と減少しています。SUMCOの配当は、一定額を維持することよりも、各年度の利益や資金需要などを踏まえて調整する性格が強いことが、実績からも確認できます。

2025年は最終赤字でも年間20円を配当

2025年12月期の年間配当は20円で、中間配当10円、期末配当10円でした。前年の21円からは1円の減配ですが、2023年から2024年にかけての減少と比べると、配当額の変化は小さくなっています。(有報 2025年12月期)

一方、同年度の業績は、営業利益が13億42百万円まで減少し、親会社株主に帰属する当期純損失は117億51百万円となりました。提出会社の1株当たり当期純利益も赤字であるため、有価証券報告書の主要な経営指標等の推移では、2025年12月期の配当性向は記載されていません。

このように、2025年は最終赤字となったにもかかわらず、年間20円の配当を実施しています。配当額を決める際に当期利益だけを基準としていないことが、実績からも確認できます。

同年度の有価証券報告書では、配当判断の考慮事項としてフリー・キャッシュ・フロー、EBITDA、配当原資の状況が新たに明示されています。2025年は減価償却費が大きく増加し、会計上の利益が急減した一方、営業キャッシュ・フローはプラスを維持しました。ただし、設備投資による支出は営業キャッシュ・フローを上回っており、現金及び現金同等物の期末残高は減少しています。

したがって、2025年の配当継続は、当期利益が赤字でも株主還元を実施したという点で特徴的ですが、会社がどの指標をどの程度重視して年間20円と判断したのか、その定量的な内訳までは有価証券報告書の「配当政策」から確認できません。

自己株式の取得と配当の決定方法

SUMCOは、株主還元の手段として自己株式の取得も配当と並べて掲げています。

対象期間中では、2021年2月19日の取締役会決議に基づき、普通株式1,006,100株を約25億円で取得しました。一方、2022年12月期以降の「自己株式の取得等の状況」には、同様の大規模な取締役会決議に基づく市場取得は記載されていません。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

なお、2023年には業績連動型株式報酬制度に係る信託口による自己株式の取得があり、連結キャッシュ・フロー計算書には約9億44百万円の取得支出が計上されています。これは役員等への株式報酬制度に関係するものであり、一般株主への利益還元を目的とした自己株式取得とは区別して捉える必要があります。(有報 2023年12月期)

配当の決定については、会社法第459条第1項に基づき、取締役会決議によって剰余金の配当や自己株式の取得を決定できる旨を定款で定めています。中間配当は毎年6月30日、期末配当は毎事業年度末日を基準日とする仕組みです。この基本的な決定方法は5年間を通じて維持されています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)

5年間を通じた株主還元の特徴

5年間の株主還元実績には、利益水準や資金需要などを総合的に勘案して配当額を決定するSUMCOの基本方針が表れています。業績拡大期には増配する一方、市場環境の悪化と利益の減少に伴って配当額を引き下げ、2025年の最終赤字局面でも配当を継続しました。

特に2025年は、設備投資後の減価償却費負担が拡大し、会計上の利益と営業キャッシュ・フローの動きに違いが生じた年度でした。こうした状況のもと、配当判断においてフリー・キャッシュ・フローやEBITDAなどを考慮することが明示された点は、株主還元方針の変化を捉えるうえで重要です。

SUMCOは固定的な配当額や配当性向を維持する方針を掲げていないため、今後の株主還元は利益の回復だけでなく、設備投資に伴う資金支出、営業キャッシュ・フロー、配当原資の状況との関係で捉える必要があります。

主要な経営指標等の推移

SUMCOグループの2021年12月期から2025年12月期までの主要な連結経営指標を、次のとおり示します。数値は2025年12月期の有価証券報告書に掲載された5期比較を基準とし、売上総利益と営業利益は各年度の連結損益計算書から補っています。業績・財政状態・資本効率とキャッシュ・フローに分けて整理しています。

業績・財政状態・資本効率

指標2021年12月期2022年12月期2023年12月期2024年12月期2025年12月期
売上高335,674441,083425,941396,619409,670
売上総利益80,119143,354108,25172,72654,502
営業利益51,543109,68373,08036,9241,342
経常利益51,107111,33972,62737,457△3,886
当期純利益※141,12070,20563,88419,877△11,751
営業利益率15.4%24.9%17.2%9.3%0.3%
総資産764,821892,5551,073,0871,172,6831,127,966
純資産522,842591,484635,527657,236647,785
BPS※21,359.77円1,523.71円1,636.19円1,693.17円1,653.87円
EPS※3135.86円200.49円182.59円56.84円△33.60円
自己資本比率62.3%59.8%53.3%50.5%51.3%
ROE※410.4%13.9%11.6%3.4%△2.0%

単位:百万円(比率・1株当たり金額を除く)。△は損失またはマイナス。

※1 当期純利益:親会社株主に帰属する当期純利益
※2 BPS:1株当たり純資産額
※3 EPS:1株当たり当期純利益
※4 ROE:自己資本利益率

営業利益率は、営業利益を売上高で除して算出(小数第1位)。

2022年12月期をピークに利益が減少し、2025年12月期には経常損益と最終損益が赤字となりました。売上高の減少幅に比べて営業利益の落ち込みが大きく、利益率やROEも大幅に低下しています。5年間の業績推移では、事業規模の変化以上に収益性の変化が際立っています。

財政状態では、大規模設備投資に伴って資産規模が拡大した一方、自己資本比率は2021年末から2024年末にかけて低下しました。2025年末には総資産と純資産がともに減少し、自己資本比率は小幅に上昇しています。資産規模が拡大する過程で財務構成も変化したことが確認できます。

なお、自己資本比率は非支配株主持分を含まない自己資本を基準としており、純資産合計を総資産で除した割合とは異なります。

キャッシュ・フロー

指標2021年12月期2022年12月期2023年12月期2024年12月期2025年12月期
営業CF※5104,708179,46296,34269,627100,040
投資CF※5△67,337△126,351△247,677△247,876△111,447
財務CF※599,099△23,15343,456112,294△8,729
現金等期末残高※6224,673259,305156,35395,67175,296

単位:百万円。△は資金の流出超過。

※5 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー
※6 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高

営業キャッシュ・フローは5年間を通じてプラスを維持しました。一方、2023〜2024年には大規模な設備投資によって投資キャッシュ・フローのマイナス幅が大きく拡大しました。営業活動で得た資金に借入などによる資金調達を加えても投資支出を賄い切れず、現金及び現金同等物の期末残高は減少しました。

2025年には投資キャッシュ・フローのマイナス幅が縮小し、営業キャッシュ・フローも前年から増加しましたが、現金及び現金同等物の期末残高は引き続き減少しています。5年間のキャッシュ・フローでは、営業活動による資金創出が継続する一方、大規模設備投資による資金支出が現金残高に大きく影響したことが特徴です。

比較にあたっての注記

2025年12月期から「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等が適用されています。2025年12月期の有価証券報告書では、2024年12月期の主要な経営指標等について、当該会計基準等を遡及適用した後の数値が掲載されています。なお、会社はこの会計方針の変更による前連結会計年度の連結財務諸表への影響はないと説明しています。

5年間を通して

SUMCOの2021年12月期から2025年12月期までの5年間は、半導体市場の旺盛な需要に対応するための能力増強から、市場の需要調整と製品別の需給格差を受けた生産体制の再編へと、経営上の重点が変化した期間でした。一方、半導体用シリコンウェーハを中心とする事業構成や、最先端製品の技術力と安定供給を重視する基本方針は維持されています。

事業構成では、2023年に三菱マテリアルの半導体用多結晶シリコン事業を取得したことが大きな変化でした。報告セグメントは引き続き単一セグメントですが、主要原材料の製造事業がグループ内に加わり、原材料の安定調達と一貫した開発・製造体制の強化が進められました。また、300mmウェーハでは先端品への対応を継続する一方、需要が低迷する200mm以下では宮崎工場の生産終了と他工場への移管を決定するなど、製品別の需要環境に応じた生産体制の見直しが具体化しています。

財務面では、需要拡大期に決定した大規模な設備投資が、その後の市場調整期にも進められたことが特徴です。2022年をピークに利益が減少する一方、2023〜2024年には固定資産取得支出が拡大し、借入による資金調達も増加しました。2025年には、大規模な設備投資によって建設・据付を進めていた設備が使用可能な段階へ移り、建設仮勘定が減少する一方、建物・機械装置の帳簿価額が増加しました。こうした設備の完成・稼働に伴い、減価償却費の負担も大きくなっています。売上高は前年を上回ったものの、売上原価と販管費の増加によって営業利益が急減し、最終損益は赤字となりました。営業キャッシュ・フローは5年間を通じてプラスを維持しましたが、大規模な投資支出によって現金残高は2022年末をピークに減少しています。

株主還元については、利益水準や将来の見通し、設備投資に伴う資金需要などを総合的に考慮する基本方針が維持されました。年間配当額は2022年の81円をピークに減少しましたが、2025年には最終赤字のもとでも20円の配当を継続しています。同年には、配当判断の考慮事項としてフリー・キャッシュ・フロー、EBITDA、配当原資の状況が明示されており、会計上の利益だけでなく、資金創出力や資金需要を踏まえる姿勢がより具体的に示されています。

5年間を通じて浮かび上がるのは、半導体市場の中長期的な成長を見据えた設備投資と、短期的な需要変動との間に生じた時間差です。2024〜2025年にはAI関連の先端品需要が拡大したものの、その効果は非先端品や200mm以下の需要低迷、設備投資後の償却負担を補うには至っていません。SUMCOは先端品の技術開発と供給能力の強化を継続しながら、生産体制の集約・効率化も進めています。2025年末時点では、こうした取組が収益性やキャッシュ・フローの改善にどのようにつながるかが、今後の経営・財務状況を捉えるうえでの主要な論点となっています。

出典:株式会社SUMCO 有価証券報告書 2021年12月期〜2025年12月期

免責事項

本ページに掲載している財務情報・指標は、有価証券報告書等の公開情報をもとに作成していますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。

本ページの情報は投資判断の参考情報として提供するものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任で行ってください。