企業別レビュー
有価証券報告書・5年間レビュー
対象期間:2021年12月期〜2025年12月期
事業の内容
4事業から、たばこ・加工食品の2事業へ
2021年12月期のJTは、「国内たばこ事業」「海外たばこ事業」「医薬事業」「加工食品事業」の4つを報告セグメントとしていました。
2021年の事業構成を見ると、国内たばこ事業はJT本体が製造・販売、TSネットワークなどが流通を担い、海外たばこ事業はJT International S.A.を中核に世界各国へ展開。医薬事業はJTが主に研究開発、鳥居薬品が製造・販売・プロモーションを受け持ち、加工食品事業ではテーブルマークなどが冷凍・常温食品、調味料、パンなどを手掛ける構成でした。(有報 2021年12月期)
この4事業のうち、国内たばこ事業と海外たばこ事業は2022年から「たばこ事業」に統合されました。2021年12月期の有報では、事業環境の変化への対応を強化し、持続的成長を目指す観点から、翌年度より両事業を一本化する方針が示されています。(有報 2021年12月期)
これにより、2022年から2024年までは、
たばこ事業、医薬事業、加工食品事業
の3事業体制となりました。
統合後のたばこ事業は、JT International S.A.を中核とするグローバルな事業へ再編され、従来の国内・海外という区分をまたぐ形になりました。(有報 2022年12月期)
2024年には米国たばこ事業を拡大
2024年には、米国でたばこ事業を展開するVector Group Ltd.(VGR)を買収し、10月に完全子会社化。VGRは米国の低価格帯市場でMontegoやEagleなどを展開しています。(有報 2024年12月期)
報告セグメントは3事業のままでしたが、たばこ事業の中では米国での事業基盤が大きく広がりました。
2025年には医薬事業を譲渡
2025年には医薬事業の譲渡があり、事業構成もさらに変わりました。
JTは5月に塩野義製薬と医薬事業の承継および鳥居薬品株式の譲渡について合意し、9月に鳥居薬品の全株式を譲渡、12月には医薬事業の譲渡を完了しました。(有報 2025年12月期)
これにより、2025年12月期の報告セグメントは、
たばこ事業、加工食品事業
の2区分に整理されました。(有報 2025年12月期)
5年間を並べると、
国内たばこ・海外たばこ・医薬・加工食品 → たばこ・医薬・加工食品 → たばこ・加工食品
と事業構成が変化しました。
たばこ事業では国内・海外の統合に続いてVGR買収による米国事業の拡大が進み、医薬事業はグループ外へ移りました。こうした事業ポートフォリオの変化は、その後の経営方針や財務数値にもつながっています。
事業の状況
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
5年間を通じて経営の土台となっているのは「4Sモデル」です。お客様を中心に、株主、従業員、社会の4者に対する責任をバランスよく果たす考え方で、中長期の持続的な利益成長につながる事業投資を優先してきました。2021年時点でも、たばこ事業は利益成長の中核・牽引役という位置付けです。(有報 2021年12月期)
2022年には、グループ共通のPurposeとして「心の豊かさを、もっと。」を掲げる「JT Group Purpose」が加わりました。あわせて、たばこ、医薬、加工食品の各事業にもそれぞれPurposeを設定しています。(有報 2022年12月期)
こうした基本方針を維持しながら、成長投資の重点は次第にRRP(Reduced-Risk Products、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品)へ具体化していきます。2022年には加熱式たばこを将来の成長分野とし、Ploom Xのグローバル展開を加速する方針を示しました。2023年にはHTS(Heated tobacco sticks、高温加熱型の加熱式たばこ)への大規模な戦略投資を明示し、2025年にはPloomブランドをグローバルに確立してカテゴリー内シェアを拡大する方針へと踏み込んでいます。(有報 2022年12月期、2023年12月期、2025年12月期)
外部環境についても、重点となる論点は変わりました。2021年には新型コロナウイルス、国際的な政治情勢、為替変動などが大きな不確実性として挙げられていましたが、その後は地政学リスク、ハイパーインフレーション、為替、インフレ、金利、一部地域における事業継続リスクなどが前面に出ています。(有報 2021年12月期、2023年12月期、2025年12月期)
4Sモデルを軸とする基本姿勢は変わらない一方で、成長投資は加熱式たばこへより明確に向かい、経営環境の認識もコロナ禍から地政学・インフレ・為替などへ移っていきました。
サステナビリティに関する考え方及び取組
2023年12月期では、4SモデルとJT Group Purposeを基礎にマテリアリティを特定し、JT Group Sustainability Targetsを設定。重要事項を取締役会で扱い、Chief Sustainability Officerを中心に検討する体制も示しました。(有報 2023年12月期)
気候変動については、2050年までのバリューチェーン全体でのネットゼロ、2030年までの自社事業におけるカーボンニュートラルなどを掲げています。(有報 2023年12月期)
2024年も同様の枠組みを維持し、2025年になると、目標の更新や実績を取締役会へ報告する仕組み、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)やSSBJ基準(国内のサステナビリティ開示基準)への対応、非財務データ管理などへ開示が広がりました。(有報 2025年12月期)
※「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、2023年1月の開示制度改正により有価証券報告書に記載欄が新設されました。
事業等のリスク
JTの「事業等のリスク」では、5年間を通じて、たばこ事業を中心とした収益構造、各国の規制や税制、為替、訴訟、事業拡大、自然災害やサプライチェーンなど、グローバル企業ならではの幅広いリスクが挙げられています。
その中でも継続して重要な位置を占めているのが、主要市場への依存とたばこ事業固有のリスクです。
2021年時点でも、日本、ロシア、英国などの主要市場におけるたばこ売上収益がグループ業績に大きく寄与していることから、たばこ需要の減少、増税、規制、政治・経済・社会・法制度の変化、暴動・テロ・戦争などによって主要市場が影響を受けることをリスクとして挙げていました。(有報 2021年12月期)
この基本的な認識はその後も変わりません。2024年有報でも、日本、ロシア、英国などの主要市場への依存に加え、現地の政治・経済・社会・法制度の変化や、暴動・テロ・戦争などによるカントリーリスクを明示しています。
たばこ事業では、需要減少・規制に加えてRRPの不確実性も重要に
紙巻きたばこなどのCombustibles(燃焼性のたばこ製品)では、需要減少、増税、規制強化、価格競争などが継続的なリスクです。
RRPも成長分野である一方、規制・税制、製品開発、お客様の嗜好、市場の成長速度などに左右される事業として位置付けられています。
2025年有報では、E-VaporやModern Oralなど、たばこ葉を使用しない製品にも規制強化の動きが広がっているとしています。RRP市場の成長についても、製品イノベーション、顧客嗜好、規制・税制などの影響を受けるとの認識です。(有報 2025年12月期)
JTにとってRRPは成長投資の対象であると同時に、将来の市場規模や競争環境、規制の方向性に不確実性を伴う分野でもあります。
グローバル展開に伴う地政学・為替・事業継続リスク
海外事業の比重が大きいJTでは、為替や金利の変動も継続的なリスクです。
海外子会社の業績や資産・負債は円換算されるため、為替変動が連結財務諸表に影響します。また、金利変動は金融費用や金融資産・負債、年金関連項目などにも影響します。(有報 2024年12月期)
加えて、この5年間では地政学リスクの存在感が強まっています。
2021年有報の提出時点では、ロシア・ウクライナ情勢を受けて、JTはロシア市場での新規投資やマーケティング活動を一時停止し、事業環境が改善しなければ製造を一時停止する可能性にも言及していました。(有報 2021年12月期)
その後の有報でも、戦争や政情不安を含むカントリーリスク、サプライチェーンや流通網の寸断は継続的なリスクとして残っています。
訴訟リスクは実際の巨額損失につながった
JTでは、たばこ製品に関連する訴訟も長年にわたる重要なリスクです。
2021年時点でも、カナダを含む複数地域で、喫煙やたばこ製品に関連する訴訟が継続していました。(有報 2021年12月期)
2023年有報でも、喫煙、たばこ・電子たばこ製品のマーケティング、たばこの煙への曝露などによる損害を主張する訴訟を取り上げています。
このリスクは2024年に現実の財務影響として表面化し、カナダ現地子会社の訴訟に関する和解費用として3,756億円の損失を計上しました。訴訟リスクが将来可能性の開示にとどまらず、実際の利益を大きく動かす事象となった年です。
買収・事業拡大にもリスクがある
企業買収や事業拡大も、JTが挙げる重要なリスクの一つです。
買収先が想定した成果を上げられない場合や、買収後に予期しない問題が判明した場合には、収益への悪影響や、のれん・無形資産の減損につながる可能性があります。
2024年のVGR買収は米国事業を広げる成長機会である一方、買収価格、統合、将来収益、減損といったリスクも伴います。
サプライチェーン・自然災害・情報管理などの非財務リスク
たばこや食品を世界各地で製造・販売するJTでは、事業継続に関するリスクも幅広く記載されています。
自然災害、感染症、インフラ停止、政情不安、火災・爆発などにより、製造拠点や流通網、サプライチェーンが影響を受ける可能性があります。(有報 2024年12月期)
また、サプライチェーン上の環境・人権問題や法令違反が、社会的信用や業績に影響する可能性も挙げられています。(有報 2023年12月期)
こうしたリスクは、従来の財務・市場リスクだけではなく、グローバル企業としての事業継続や社会的責任に関わる領域まで対象が広がっていることを示しています。
リスク管理体制はERMとしてより明示的に
リスク管理については、2021年時点ですでに統合的な仕組みがありました。
2024年になると、ERM(Enterprise Risk Management、全社的リスク管理)として、リスクの特定、影響度・発生可能性の評価、重要リスクの選定、対応計画、モニタリングまでの流れがより明確に示されます。
5年間を通して中心にあるのは、たばこ市場そのものの縮小・規制、主要市場への依存、地政学・為替、訴訟、買収、事業継続といったリスクです。そこへ、RRPの成長に伴う規制・市場面の不確実性や、サプライチェーン、人権などの論点が加わっています。
管理面では、以前から行われていた統合的なリスク管理が、ERMとしてより明確な形で示されるようになりました。
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
JTは、IFRSで定義される財務指標に加え、調整後営業利益や為替一定ベースの指標といった非GAAP指標も継続して使用しています。為替や一時的・特殊な要因を除き、事業そのもののパフォーマンスを捉えるという考え方は、5年間を通じて一貫しています。(有報 2021年12月期〜2025年12月期)
経営者の説明でも、報告ベースの利益だけでなく、為替影響を除いた利益の動きが繰り返し示されます。為替一定ベースの調整後営業利益は2021年に22.9%増、2022年に9.0%増、2023年に5.2%増。ただし為替の効き方は年によって異なり、2021年と2022年はプラス、2023年は一部通貨の影響がマイナスでした。その結果、2023年の為替影響を含む調整後営業利益は前年とほぼ同水準です。(有報 2021年12月期〜2023年12月期)
2024年も、為替一定ベースの調整後営業利益は7.5%増、為替影響を含む調整後営業利益は3.3%増と、事業ベースでは増益でした。ところが、カナダ現地子会社の喫煙と健康に関する訴訟の和解費用を計上したことで、営業利益は51.9%減、親会社の所有者に帰属する当期利益は62.8%減となりました。(有報 2024年12月期)
2025年には、たばこ事業と加工食品事業の増収により売上収益が3兆4,677億円となり、為替一定ベースの調整後営業利益は24.9%増となりました。為替影響を含む調整後営業利益も21.5%増の9,022億円でしたが、為替自体は引き続きマイナスに作用しています。営業利益が175.9%増となった背景には、調整後営業利益の増加に加え、前年に計上したカナダ訴訟の訴訟損失引当金の影響がなくなったことがあります。(有報 2025年12月期)
このように、経営者の説明では、事業別の増減、為替、訴訟などの一過性要因を分けて業績を捉えています。なお、2025年12月期には医薬事業が非継続事業に分類されたため、2025年有報では2024年の経営成績も継続事業ベースに組み替えて表示されています。(有報 2025年12月期)
重要な契約等
2021年から2023年までの「経営上の重要な契約等」は、いずれも「該当事項はありません」でした。(有報 2021年12月期〜2023年12月期)
動きが出るのは2024年で、米国市場でのプレゼンス拡大を目的としたVGR買収を記載しています。翌2025年には、医薬事業の塩野義製薬への承継と鳥居薬品株式の譲渡が加わりました。(有報 2024年12月期、2025年12月期)
2024年の米国たばこ事業の拡大と2025年の医薬事業譲渡は、JTの事業ポートフォリオが短期間に大きく動いたことを示しています。
研究開発活動
グループ全体の研究開発費は、
650億円 → 708億円 → 751億円 → 786億円
と、2021年から2024年まで増加しました。(有報 2021年12月期〜2024年12月期)
2024年の内訳は、たばこ事業304億円、医薬事業339億円、加工食品事業9億円。このほかD-LABなどの研究開発費135億円を含みます。
2025年は「継続事業からの研究開発費」として524億円を記載しており、内訳はたばこ事業340億円、加工食品事業8億円などです。(有報 2025年12月期)
2024年の786億円から2025年の524億円への減少には、医薬事業が非継続事業となった影響があります。そのため、単純な研究開発投資の縮小としては比較できません。
経理の状況
財務面は、グループ全体の動きを示す連結財務諸表を中心に見ていきます。単体財務諸表は、配当など提出会社単体で確認する意味のある項目に限って補足します。
連結財政状態計算書
資産合計は、2021年12月期の5兆7,742億円から2025年12月期には8兆4,192億円まで増加しました。中でも大きく動いたのが2024年で、前年の7兆2,821億円から8兆3,707億円へ拡大しています。(有報 2025年12月期)
同年にはVGRを買収しており、買収による連結範囲の拡大が財政状態にも表れました。資本合計も、2021年の2兆8,861億円から2025年には4兆1,154億円へ増加しています。
親会社所有者帰属持分比率は、2022年の54.07%から2024年には45.00%まで低下し、2025年には48.54%へ戻りました。(有報 2025年12月期)
2025年の負債合計は前年末から2,182億円減少。JTは、カナダ訴訟の和解金の頭金支払いによる引当金減少などを要因に挙げています。資本は、当期利益による利益剰余金の増加や在外営業活動体の換算差額などを背景に増えました。(有報 2025年12月期)
連結損益計算書
売上規模は5年間で拡大していますが、利益は同じような動きにはなっていません。
特に2024年には、たばこ事業のカナダ現地子会社を巡る訴訟の和解に伴い、カナダ訴訟関連損失3,756億円が計上されました。(有報 2024年12月期)
その結果、調整後営業利益が増えていたにもかかわらず、営業利益と当期利益は大幅に減少しました。
翌2025年は、前年の訴訟関連損失の反動もあって営業利益と当期利益が大きく回復します。
2024年から2025年にかけての大きな利益変動には、通常の事業活動だけでなく、この一過性の巨額損失が強く影響しています。
また2025年には医薬事業が非継続事業に分類されました。
2025年有報の「主要な経営指標等の推移」では、2024年と2025年の売上収益・税引前利益を継続事業ベースに組み替えています。(有報 2025年12月期)
そのため、2024年有報に記載された2024年の売上収益3兆1,498億円と、2025年有報の比較情報として掲載された2024年の売上収益3兆567億円は、対象範囲が異なります。
連結キャッシュ・フロー計算書
営業活動によるキャッシュ・フローは、5年間すべてプラスです。
5,989億円 → 4,838億円 → 5,663億円 → 6,300億円 → 5,141億円
と推移しました。(有報 2025年12月期)
2024年には当期利益が大幅に減少した一方、営業キャッシュ・フローは5年間で最大の6,300億円でした。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、
△975億円 → △1,018億円 → △1,254億円 → △4,398億円 → △2,650億円
となっています。(有報 2025年12月期)
2024年の大幅な支出増にはVGR買収が表れており、企業結合による支出は2,657億円です。(有報 2024年12月期、2025年12月期)
2025年には、医薬事業譲渡による428億円の収入もありました。(有報 2025年12月期)
事業ポートフォリオの変化は、2024年には買収に伴う資金支出、2025年には事業譲渡に伴う資金流入という形でキャッシュ・フローにも現れています。
財務活動と現金残高
財務活動によるキャッシュ・フローは、
△3,531億円 → △3,062億円 → △2,705億円 → △949億円 → △4,755億円
と推移しています。(有報 2025年12月期)
2025年は、長期借入金の返済や配当金の支払いがあった一方、社債発行などによる資金調達も行っています。(有報 2025年12月期)
現金及び現金同等物の期末残高は、
7,217億円 → 8,669億円 → 1兆402億円 → 1兆846億円 → 8,311億円
となっています。(有報 2025年12月期)
2021年から2024年まで増え続けた後、2025年に減少へ転じました。
財務諸表注記に表れた大きな変化
この5年間では、財務諸表本表の大きな変化と、その背景を示す注記が密接につながっています。2024年にはVGR買収に伴う企業結合とカナダ訴訟関連損失、2025年には医薬事業の譲渡と非継続事業への分類が記載されました。
こうした出来事は、資産、利益、キャッシュ・フローの変動にも直接表れています。
配当政策
JTの株主還元方針は、この5年間を通じて大きく変わっていません。
2021年12月期には、4Sモデルに基づく経営資源配分方針として、中長期の持続的な利益成長につながる事業投資を最優先しながら、事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視する考え方を示しています。
そのうえで、強固な財務基盤を維持しながら中長期の利益成長によって株主還元の向上を目指し、配当については配当性向75%を目安とし、±5%程度の範囲で判断するとしています。自己株式の取得については、その年度の財務状況や中期的な資金需要を踏まえて実施の是非を検討する方針です。(有報 2021年12月期)
2022年以降は、この株主還元方針の基礎として4Sモデルに加えてJT Group Purposeが記載されるようになりましたが、事業投資を優先しながら株主還元とのバランスを取る考え方や、配当性向75%を目安とする方針に大きな変更はありません。
2024年12月期でも、強固な財務基盤を維持し、中長期の利益成長を通じて株主還元の向上を目指すこと、配当性向75%を目安とすること、自己株式取得は財務状況や資金需要を踏まえて判断することを掲げています。(有報 2024年12月期)
2025年12月期も基本方針は同じで、年間2回の中間配当と期末配当を基本とする点にも変化はありません。(有報 2025年12月期)
1株当たり配当額は140円から234円へ
実際の1株当たり年間配当額は、次のように推移しています。
| 決算期 | 1株当たり年間配当額 | うち中間配当 |
|---|---|---|
| 2021年12月期 | 140円 | 65円 |
| 2022年12月期 | 188円 | 75円 |
| 2023年12月期 | 194円 | 94円 |
| 2024年12月期 | 194円 | 97円 |
| 2025年12月期 | 234円 | 104円 |
2021年の140円から2022年には188円へ増え、2023年は194円。2024年は同額で据え置かれましたが、2025年には234円まで引き上げられています。(有報 2025年12月期)
2025年12月期は、中間配当104円に期末配当130円を加え、年間234円を予定しています。(有報 2025年12月期)
株主還元方針を維持しながら、配当額は増加
JTは、配当性向75%を目安としつつ、中長期の利益成長につながる事業投資を最優先する方針を維持してきました。2024年のVGR買収やRRPへの投資など、大規模な事業投資を進める中でも、事業投資と株主還元のバランスを取るという考え方は変わっていません。
そのもとで、2021年から2025年までの年間配当額は、
140円 → 188円 → 194円 → 194円 → 234円
と推移しました。基本方針を大きく変えることなく、1株当たり配当額は5年間で増えています。
主要な経営指標等の推移
2025年12月期の有価証券報告書には、2021年から2025年までの5期分の連結経営指標がまとめて掲載されています。
| 指標 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆3,248億円 | 2兆6,578億円 | 2兆8,411億円 | 3兆567億円※ | 3兆4,677億円※ |
| 税引前利益 | 4,724億円 | 5,935億円 | 6,216億円 | 2,243億円※ | 7,398億円※ |
| 当期利益※1 | 3,385億円 | 4,427億円 | 4,823億円 | 1,792億円 | 5,102億円 |
| 資産合計 | 5兆7,742億円 | 6兆5,481億円 | 7兆2,821億円 | 8兆3,707億円 | 8兆4,192億円 |
| 資本合計 | 2兆8,861億円 | 3兆6,168億円 | 3兆9,125億円 | 3兆8,487億円 | 4兆1,154億円 |
| 親会社持分比率※2 | 48.65% | 54.07% | 52.60% | 45.00% | 48.54% |
| EPS※3 | 190.76円 | 249.45円 | 271.69円 | 100.95円 | 287.36円 |
| 営業CF※4 | 5,989億円 | 4,838億円 | 5,663億円 | 6,300億円 | 5,141億円 |
| 投資CF※4 | △975億円 | △1,018億円 | △1,254億円 | △4,398億円 | △2,650億円 |
| 財務CF※4 | △3,531億円 | △3,062億円 | △2,705億円 | △949億円 | △4,755億円 |
| 現金等期末残高※5 | 7,217億円 | 8,669億円 | 1兆402億円 | 1兆846億円 | 8,311億円 |
※1 当期利益:親会社の所有者に帰属する当期利益
※2 親会社持分比率:親会社所有者帰属持分比率
※3 EPS:基本的1株当たり当期利益
※4 営業CF・投資CF・財務CF:それぞれ営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー
※5 現金等期末残高:現金及び現金同等物の期末残高
※ 2025年12月期から医薬事業を非継続事業に分類したため、2024年12月期と2025年12月期の売上収益・税引前利益は継続事業の金額。(有報 2025年12月期)
売上規模と資産規模は拡大
売上収益は2021年の2兆3,248億円から2025年には3兆4,677億円まで拡大しました。
ただし、2024年以降は医薬事業を非継続事業とした組み替えの影響があるため、5年間を完全に同じ条件で比較できる数値ではありません。
資産合計も5兆7,742億円から8兆4,192億円へ増加。とりわけ2024年の伸びが大きく、同年のVGR買収が資産規模の変化に影響しています。
利益は2024年に大きく変動
親会社所有者帰属当期利益は、
3,385億円 → 4,427億円 → 4,823億円 → 1,792億円 → 5,102億円
となりました。
2024年の落ち込みと2025年の回復には、カナダ訴訟関連損失の計上とその反動が大きく影響しました。
基本的1株当たり当期利益(EPS)も、
190.76円 → 249.45円 → 271.69円 → 100.95円 → 287.36円
と、ほぼ同じ動きです。
営業CFは5年間を通じてプラス
営業キャッシュ・フローは5期すべてプラスを維持しました。
2024年は当期利益が大幅に減少した一方で、営業CFは6,300億円と5年間で最大になっています。
利益が大きく落ち込んだ年でも、営業活動からの資金流入は高い水準を維持していました。
2024年には投資支出が大幅に増加
投資CFは2021年から2023年まで1,000億円前後の支出でしたが、2024年には4,398億円の支出へ拡大しました。
この増加には、同年のVGR買収が大きく影響しました。
2025年は支出額が2,650億円まで縮小し、医薬事業譲渡による資金流入も発生しています。
5年間を通して
2021年から2025年までを通して見ると、JTは4Sモデルを軸とする基本的な経営方針を維持しながら、事業ポートフォリオを大きく動かしてきました。
2022年には国内・海外に分かれていたたばこ事業を統合し、RRP、とりわけ加熱式たばこへの投資を拡大。さらに2024年にはVGRを買収して米国での事業基盤を広げ、2025年には医薬事業を譲渡しました。
財務面では、売上収益と資産規模が拡大しました。一方、利益は一方向には伸びず、2024年にカナダ訴訟関連損失で大きく落ち込んだ後、2025年にはその影響がなくなったことで大幅に回復。医薬事業の譲渡に伴い、2025年有報では比較数値の範囲も変わりました。
この5年間で目立つのは、国内・海外たばこ事業の統合、米国を含むたばこ事業の拡大、医薬事業の譲渡です。基本方針を大きく変えずに、事業の組み合わせと経営資源の配分を動かしてきたことが、事業構成と財務数値の両方に表れています。
出典:日本たばこ産業株式会社 有価証券報告書 2021年12月期〜2025年12月期